会派視察でした。会派全員7名の日程を合わせるのがとても難しく5月から決めていた視察日程でしたが、残念ながら2名は参加せず。このメンバーで行きたいと思っていた伊万里市、武雄市の図書館、そして、せっかく行くのだからと学校跡地活用として佐賀市の旧富士小学校(合併前の富士町)に伺いました。
旧富士小学校の活用については、旧町の中心にあり、町民にとって「拠点」でもあった学校の閉鎖に伴い、地元のみなさんとていねいな話し合いを重ね、公民連携での事業推進に挑戦している事例でした。閉校したとは言え、地域にとっては大切な場所…お願いしていないけれど、地域の方が自主的自発的に草刈りをしてくださると…そのくらい地域にとってはなくてはならない場所であって、大事な場所。とても丁寧なプロセスにより、活用方策が決定されていったようです(参考記事)。担当職員さんは多くは語らないまでも、公民連携を学び、住民の皆さんとの対話に立ち合い、信頼関係も育んでこられた様子でしたね。非常に優秀な職員さんだなという印象を受けました。実際に、公民連携で活用されている学校跡地などにも足を運び、勉強されていて、「なかなかこうしたプロジェクトに取組むにも勇気がいるものの、自分たちの頭で考えるよりも、その後の運営をしてくれる事業者の皆さんに『設え』について、使い勝手を考えてお任せをすることが必要だと思っている」と言い切れる・・・これは公民連携を本質的なところで理解していないと語れないセリフ。
中山間地域の過疎化対策としても、何とか交流人口や関係人口を増やしていくための取組み。旧富士小学校のある地域は「古湯温泉」が魅力でありストロングポイントだとおっしゃっていましたが、九州でサンセットブリーズのような施設づくりをしていくようですね!ようやく具現化に向けて走り始めたプロジェクト。もともと旧校舎建物は取り壊し、新しい建物を建設するという発想だった地元検討委員会から市に提出された意見を、建物リノベーションによる活用へと方向転換して、地元皆さんと合意したという・・・ここ、語らずともハードなやりとりや合意形成があったに違いないと思っております。完成まであと2年ほど必要になるようですが、楽しみです。多摩市でも建物リノベーションの発想で、民間の知恵を取り入れるようなことすればいいというか、していきたいものです。
建物リノベーション費用は佐賀市が負担。その後、施設の管理運営は指定管理を考えているとのこと。しかし、「指定管理料ゼロ」でやっていく計画になっているそう。民間事業者の試算ってすごいですよね・・・というか、こうした収支見込などにつき、行政側が信頼を持てるか?が鍵とも言えますね。どうしても慎重になれば、「指定管理料ゼロ」なんてありえない・・となるに違いないですし。公民連携というのは、ていねいなつくりこみ、そこに事業者との信頼関係も築きつつ取組みが進んでいくもの。対応する側の行政の理解があり、そして努力も重ねていかなければ成しえないプロジェクト。事業者から市行政への信頼も問われるんですよね。「本気であるかどうか、少し話せば…すぐにわかる」…うわべだけの公民連携かどうかなど簡単に見破られているようです…。
そして伊万里市の図書館へ。多くの市民が関わって図書館が完成した!という歴史があります。桐朋の先輩である盛泰子議員(残念ながらお目にかかれなかった)が、建設時からもずっと関わっておられて、一度足を運ばねばと思っていた場所でもあります。「図書館を民間に任せることは考えられないし、考えていない」とするポリシーがあり、図書館の貸出しカウンターについても「非常に重要な場所。個人情報を扱うところでもあり、民間事業者もそうですが、市民ボランティアなどに任せるようなことはしません。できません。」・・・「ICタグについても、図書を廃棄するときの作業などを考えれば問題があると認識しています。」とのことで、「図書館どうあるべきか」あるいは「市民のための図書館運営」に対し、脈々と受け継がれてきた伝統、歴史、蓄積を感じさせられました。
市のポリシーがものすごくはっきりしていて、図書館を応援してくれる議員も多いとの話でしたが、市をあげて「ウチドク」にも取り組んでおられます。これは市長からの発案とのことでしたが、どんな街をつくっていくのか、市の財産として「伊万里市民図書館」をまちぐるみで大事にされていることがわかります。
図書館設置条例の第1条には「伊万里市は、すべての市民の知的自由を確保し、文化的かつ民主的な地方自治の発展を促すため、自由で公平な資料と情報を提供する生涯学習の拠点として、伊万里市民図書館(以下「図書館」という。)を設置する。」とあります。
多摩市は同じく設置条例で「多摩市は、市民の教育、学術、文化の向上のために、図書館法(昭和25年法律第118号。以下「法」という。)第10条の規定に基づき、図書館を設置する。」となっています。
ポリシーの違いはこうしたところにも表れるのかもしれませんね。それは、武雄市の場合も同じです。「市民の教育、学術及び文化の振興を図るため、図書、記録、歴史資料その他必要な情報を提供する生涯学習施設として、武雄市図書館・歴史資料館(以下「図書館・歴史資料館」という。)を設置する。」が武雄の設置条例の第1条。
武雄市では「こども図書館」もオープンとなり、その盛況ぶりには目を見張ります。いわゆるスタンダードで堅実に活動を重ね、図書館のレベルとしてはトップレベルで運営されていると評価の高い伊万里市民図書館とは似て非なる図書館とも言えます。もちろん指定管理者による運営など含め、賛否両論さまざま。でも、これだけ市民が集まり、市外からも人を呼びこめるだけの魅力を持っている点は否定できないと思っています。もともと市の部長職だったという館長。今は運営会社の社員になっていて、市教育委員会に出向するというかたちになっているそう。「二足のわらじ」とおっしゃっていました。なるほど、ここに「知恵」があるなと思ったわけです。全部を任せきりにしない、きちんと市教委とのつなぎ役も果たせるような仕組みにしています。また、市教委の方には図書館司書の「親玉」みたいな人がいらっしゃるという話しもありました。そしてまた、運営の工夫をしなければならないため、図書館司書は日常的な清掃もやりますよ!・・・とのことでした。お手洗の清掃も図書館市予算がやっているそうですね…これ、普通だと考えられないことと思うわけですが、そのあたりが「民間的発想」なのかもしれません。飲食店などでも定期的なトイレ清掃は時間を決めて店員さんがやっているのと同じですよね。「武雄市図書館員の一日」をつぶさに見てみたいと思いました。館長さんのポリシーについても「評価は市民がしてくれるもの。アンケート結果をぜひ見比べて欲しい。」とおっしゃり、指定管理者に対する評価は様々だけれど、「これも図書館の一つのかたちになっている」とプライドを持ってお仕事をされている姿が眩しかったです。
でも、やっぱり、コミュニケーションを大事にし「丁寧」に一つ一つの取組みを重ねていることは伝わってきました。財源的にも、人的にも限りある中での工夫をしていくためには知恵を出し合っていく必要性。
ここ、3カ所の視察、いずれの場所でも感じたことでした。プロセスはやっぱり大切だと思います。そして、丁寧なプロセスから生み出された結果が次のステップにつながっていくのかなとも思いました。あとは「本気」かなあと。武雄市では市長のトップダウンで取組んだプロジェクトとも言えますが、市長自身が行政のトップとなり、職員に対し「マインドの変化」を求めてきたことは大きかったという話しもありました。つまり・・・「市民のために『これがいい』と思ったことは取組んでいい。そして、ダメならやめていい。」という感じですかね。とても学びが多く、そしてまた考えさせられることの多い視察となりました。
さて、これをどう多摩市政に活かしていけるかなあ…と考えるのが私の仕事です。