小金井市前原小学校の研究発表会に足を運んできました。「21世紀を開く新しい『学びの創造』~総合的な学習の時間におけるプログラミング授業を通して」がテーマでした。
昨年、松田孝先生が校長先生を務められていた時にも見学に行き、私はプログラミング教育は「学び合いの実践」という感想を持ち、この取組み実践が愛和小学校で継続できなかったことを本当に残念に思いました。統合新校として開校した愛和小学校で1人1台のタブレット端末の導入、エディブルスクールヤード、民間NPOによる放課後子ども教室の挑戦…数々の新しい取組みを導入し、そのために民間企業などの助成を獲得するために奮闘していた姿を思い出します。「公立小学校長の振舞いとして適切ではない」と何度となく市教委から注意をされながらも、新しい実践に対する財政的な支援はほぼ皆無に等しかったわけですから、それを実行し、実現するために行動していた松田先生の姿には多くの共感が集まっていました。公教育がこのままではいけないという危機感、しかし、その危機感が市教委レベル、あるいはそのもとにある学校現場にはほぼ共有されていない…。私も松田先生が示していた新しい学び、これからの教育ビジョンには学ぶところも多く、気が付かされることも多かったのですね。心ある先生、志を持つ多くの教育者が松田先生の元に集まり、熱く議論が交わされていたんですね。私の持ち合わせている情報をはるかに超えるレベルでの議論についていくのが大変でしたから・・・。
というわけで、松田先生は実はこの3月で退職され、現在は起業され、仕事を始めています。しかし、その一つの肩書が「小金井市教育CIO補佐官」。今日は松田先生とともに研究を重ねてこられた実践を発表する研究会でもあり、参加をしたというわけです。
授業見学では1年生と5年生のクラスを見てきました。5年生にもなるとタイピングがスラスラ。ドローンを動かすためのプログラムを組むのですが…子どもたち、プログラムするための言語は既に暗記。一応、使う言語についても一覧表が配布されていましたが、「暗記した方が早いんだもん。」とのこと。授業見学の後で、見学をしていた大人たちの体験会が行われたわけですが、もちろん大人たちは…。
一覧表を見ながら…一人がスペルを読み上げて、一人が入力をするという感じ。しかし、私よりも若いと思われる先生たちは「サクサク」と楽しみながら、機材と格闘しておりました。
中には授業見学をしながら、「いちいちタブレットを出したり、片付けたりするだけで時間がかかりそう。」などというヒソヒソ声も聞こえ、よくありがちな後ろ向きな感想も聞こえてきまして、「そうは言っても、これからプログラミング教育を避けて通ることはできませんよ。」と…思わず声をかけてしまいそうになりました。
1年生の授業は、先生の授業スキルが高い!と思いました。先生の授業スキルについて、私が評価するのもおこがましいわけですが、子どもたち一人ひとりの様子を捉えながら、授業を進めていることがわかるのは…やっぱり、ふとした時の声かけですね。そして、子どもたちがそれぞれに自分のプログラムを組んでいるのをただ見ているだけで、「いいね~」とか言っているだけで授業を終えるようなことはしない。先生は子どもたちの様子を見ながらも、数名の子どもたちのつくったプログラムをみんなで共有していくために画像を撮影…全員で授業のまとめと振り返りをする準備をしているわけですね。
子どもたちが他のお友達がつくったプログラムにも興味津々なんですよね。ものすごく集中した授業のふりかえりになっていました。子どもたちのまなざしが真剣でした。
しかし、授業見学の後の体験会では大人たち(小金井市の先生たちが多かったと思いますが)が子どもたち以上の真剣さを発揮。どの会場も満員御礼なっていまして…その後ろ姿を見ながら、ある種の感慨を覚えたのでした。授業見学で私が感じたにはやっぱり「学び合いの実践」ということ。1年生のクラスでは「困ったとき、わからなかったときにはどうすればいいのかなあ」という先生の問いかけに、「助けてもらう」というのが子どもの答え…「そうそう、わからないことはお友達に聞くんだったよね」と先生。そして5年生のクラスでは「先生、わからないんだけど」と個別に先生に尋ねた子どもに「お友達に聞いてみた?」と先生が返答。
プログラミングの授業は「まずは、先生に訊け!」ではないんですね。周りの友だちに尋ねることが大事なんです。「助けて!」と周りに援助を求めることのできるスキルって…対人スキルでっも超重要ですよね。とは言え、学校の先生は「子どもに教えて!」って一番言えない仕事かもしれない…ってことは、プログラミングの授業をやるということは染みついた先生プライドから脱皮しなければならないってこと?!
「学び合いの実践」…これは子ども同士だけでなく、子どもと大人と、先生自身もともに学び育っていく…これがプログラミング教育の本質と言ってもいいくらい。
その後、体育館で3年間の研究実践の発表があり、大熊雅士小金井市教育委員会教育長、松田孝小金井教育CIO補佐官を交えた鼎談が行われたのですが、これがまた、ものすごくおもしろく興味深いものでした。
松田先生からの話しで印象的だったのは…「子どもの事実で判断する」という言葉でした。プログラミング教育を受ける(受けるというのも違和感ある表現ですが)子どもたちの姿が全てを証明しているということ。その姿にこそ、プログラミング教育の意義を感じ取ってほしいというメッセージだったと思います。そしてまた、「プログラミング教育のあるべき姿とは?」を投げかけてくださったように思いました。
さらには、大熊教育長先生…「日本の英語教育とプログラミング教育は世界から取り残されている!」とバッサリ。そして、今までの先生スタイルを変えていかないとプログラミング教育はできない、だから、プログラミング教育(も英語教育も)をやることに苦しさを一番感じているのは学ぶ側の子どもではなくて「教える側の先生たちだ!」と。先生たちにとって「苦しい道」という話しをされていましたね。
まさに「マインドセット」という言葉がキーワードになるでしょうか?新しい学びと言うのは「指示命令」ではなく、お互いに学び合うということで「コミュニケーション」であるということが鼎談の端々から伝わってきました。
大熊先生はプログラミング教育の授業は45分間…「超高速PDCAサイクル」っておっしゃっていましたが、そのこともきっと…実際に授業体験、教材に触れて見なければわからないことでしょうね。しかし、子どもたちの姿から「超高層PDCAサイクル」を見て取れたとすれば、その先生たちはきっとスキルがある先生たちなのではないか?とは思った次第です。
「公教育のアップデートをしなければならない」ということで、大熊先生を囲みながらこれからの教育を語る会が行われているようですね。一度、足を運んでみたいと思っています。新しいことをやろうとすると必ず付きまとうのは批判と非難。やりもしないで、見もしないで…後ろ向きな方々から足を引っ張られるというのは世の中の常かもしれませんね。しかし、私、「批判や非難をするばかり」ではなく、松田先生が重ねてきた実践の本質をきちんと捉え、評価してみたら?と言いたいですね。「子どもたちの事実」がそこにあるわけですから。
やりたくないではなく…「できない」…。
新しいことにチャレンジする気持ち失くして、プログラミング教育は実践できないのですね。先生たちにとっても未知な世界かもしれません。ただ、思うことは…先生たちって子どもたちに「チャレンジが大事!」と言ってませんか?ということです。自らチャレンジができない先生が、子どもたちに「チャレンジが大事!」と言っているとすれば・・・(あえてコメント避けます)。
そんなことで、小金井市ではプログラミング教育に本格的に取り組んでいくことになるのでしょう。教育長の意気込みがすごかった。「また、やらされるのか」と思っている教員たちの雰囲気のチョット感じましたけれど。でも、頑張ってほしいです。なぜなら、必ず、子どもたちの未来には必要なスキルだから。私、多摩市教委とともに小金井市教委についても…ウオッチしていきたいと思います。