日本で唯一「主権者教育計画」@狛江市

今日は三多摩TOHO議員メンバーで狛江市の「主権者教育」についてヒアリングをしてきました。狛江市に「主権者教育計画」ができたと聞いてから、一度は足を運んでおかねばと思っていたので、ご当地は山田たくじ議員にお願いし、いつものメンバーで押しかけたというわけです。

やはり「現地に足を運んでこそわかることがある!」と確信しました。現場に足を運び、きちんと話を聞いてくることは大切ですね。狛江市だから「主権者教育計画」が制定できたことがよくよくわかりました。

平成25年の公職選挙法の改正以来、狛江市では知的・発達障がい者への投票支援に力を入れて取り組んできました。その積み重ねの上に、今年の3月の「「狛江市総合的な主権者教育計画」の制定へとつながっているのです。選挙権年齢が引き下げられたから…小学校や中学校で「主権者教育」への取組みをしなければならないから・・・というのではなく、言ってみれば、唐突な思いつきやらパフォーマンスというのではなく、もともと’ベース’があったということです。

計画の’はじめに’の冒頭にも書かれていますが、「狛江市においては、平成25年の公職選挙法の改正による成年被後見人の選挙権回復を受けて、実態として投票への道を閉ざしていた知的障がい者等への投票支援にいち早く着手し、障がいがあってもなくても『当たり前』の権利として社会に参画できる選挙権の重要性について、その啓発に取り組んできた。」

ということなのです。「障がい者の社会参加って何か?」を考えるとき、その最たるものが「一票を行使すること」という、よく考えれば当たり前のことですが、しかし、当事者にとって選挙権を行使することへのハードルは高く、また支援する側にも一人ひとりの障がい特性に寄り添ったフォローをすることへのハードルが高いことは事実。そこをどうフォローできるのか、フォローするか?…狛江市では昔の自治省選挙部に派遣された経験のある職員さんの高い問題意識があり、そこから始まったのが障がい者の投票環境向上への取組みだったと言います。おそらく、多摩市の選挙管理委員会だけでなく、他の地域でも狛江市のような取組みを行っているところは数少ないと思います。問題意識があったとしても、「さて、どう取り組んでいくか?」ということで、その先の一歩が踏み出せずにいるのではないか?と感じるわけです。

もう一度、この計画の’はじめに’から引用をしますと「親も含め当事者には、社会参加への意欲やそれを実現するための選挙権という『権利』に対する認識を得る機会や学ぶ機会が少なかったことから、その認識がまだまだ希薄である。」

もともと親も含め当事者の皆さんにとって投票所は「行ってはいけない場所」という認識であるわけで、法律が改正されたからとは言え、すぐに対応できるというものでないことは容易に想像できますね。そこで、狛江市では「親の会」のみなさんにも協力を仰ぎながら、「投票意欲の情勢」→「投票候補の選定」→「実際の投票行為」という3段階のフェーズに分け、それぞれの段階でどのような課題があるのか、それを解決するための方策は・・・と一つ一つの検証を加えながら、必要な支援策を講じてきたようです。特に「模擬投票」の取組みは実際に投票所に行く前に、「経験」をしてみる、「練習」をしてみるという点でも非常に有効で、フォローする側にも課題が捉えられるという意味でも重要な取組み。

例えば…支援カード。これはホームページからダウンロードして活用するようですが、「場面ごとに配慮すべき事項」を予め記入して投票所の受付けに提出することで、フォローを受けることが可能です。こうした支援カードの内容についても、模擬投票の取組みを通じて検証できるんだろうなあと思いました。この支援カードは狛江市の投票所に配置されている「案内係」が2名(狛江市の職員さん)に対し、「自分に必要な支援」の内容を伝えるものですが、具体的に必要な支援内容について書くというのも、実際の体験や経験が必要ですよね。

また、選挙情報のバリアフリー…ということでは一般的には選挙公報がありますが、それとは別に前回の市議選では「わかりやすい選挙広報誌」が発行されています。実際には選挙が始まる前に作成し、配布されているものなのですが、もちろん公職選挙法に抵触するものではありません。候補者の皆さんは任意協力するという位置づけになっています。ちなみに前回は、こちらの広報誌に掲載しなかったのは新人候補2名だけだったそう。

親の会の皆さんが発行したものであり、200部作成し、市内の作業所と市民が利用している市外の作業所を通じて当事者の皆さんに手渡してもらったと言います。

他にも選挙情報のバリアフリーという点からは、わかりやすい演説会を開催したり、「わかりやすい政権動画」ということで、知的障がい者向けの政策動画への取組みを候補者に依頼をしたり・・・いろんな取組みを重ねながら、そのたびごとに、取組み内容を検証しながらバージョンアップさせてきたようです。

今日はその取り組みの中心を担ってきた総務省主権者教育アドバイザーでもある平林さんより、熱いお話を伺うことができました。あっ、主権者教育アドバイザーにはわが多摩市選挙管理委員会の越智さんも名前を連ねておりますが、多摩市選挙管理委員会の「給食大臣になろう!」の取組みもかなり全国的にも有名になっているんですけれどね…。しかし、並行して、知的障がい者や発達障がいのある市民のみなさん、そしてまたこれからは認知症の方々に向けたより良い投票環境をどう作るか、そして投票支援をしていくかには取り組んでいかなければならないでしょうし、取組むべきと強く思ったのでした。

一人ひとりの社会参加の権利としての「投票権」。この重要性は言うまでもなく…狛江市に学び、投票環境を整えていくことの必要性は高く、優先的に取り組んでほしい。実際にはDVDを見るとよくよくわかりますので、私も注文しようかな。

いよいよ東京都の差別解消条例についても10月から施行されていますし、各地域で選挙管理委員会がどのように取り組んでいくかが注目されます。さしあたって、多摩市選挙管理委員会はどんな取組みを考えているのでしょう?…ここはまた改めてヒアリングしなくっちゃ。

議場にて記念撮影。参加者は宮本かずみ調布市議、沖浦あつし小金井市議、須山たかし府中市議、そして狛江市議の山田拓史さん、で私。狛江市はコンパクトでこじんまりしていて、居心地のいいまちだなって思いました。