当事者参加ということ。

今日は戦没者追悼式に出席して、議会代表にて挨拶。その後、鈴鹿市議会議会運営委員会のみなさまがいらっしゃったので視察対応…夕方から、多摩市地域自立支援協議会の権利擁護専門部会のみなさまが呼び掛けで開催された市議会健康福祉常任委員会が取組んでいる「(仮称)手話言語および障がい者のコミュニケーション保障条例」の説明・意見交換会を傍聴させていただきました。

委員会では「手話をはじめとする様々なコミュニケーション手段の利用促進について」をテーマにして、調査活動を進めてきました。他の常任委員会とは異なり、とても熱心に調査活動を重ねられていて精力的でした。「条例を制定する」という目標に向けて、必要な取組みをされていたと思います。多摩市議会では委員会活動がとても活発で、「委員会主義」というような言い方もされますが、常任委員会委員長のリーダーシップ、裁量権はとても大きく、議長としてはその取り組みの行方、推移を見守ってきました。まずは委員会活動ですので、常任委員長の采配に委ねながらも、条例制定ということになれば、議会全体としての取組みにもしていく必要があり、今度は議会運営委員会で進捗状況を確認しながら、議員全員に共有していく「全体化する」という流れになっていきます。

個人的には「条例制定をめざす」という取組みは私たち地方議会が果たすべき役割と機能から考えても重要であると思いますし、多摩市議会でも大いに取り組んでいくべき、挑戦していくべきことだと思っていますが、しかし、条例制定というのはそんなに簡単なものではないとも感じています。以前にも、ここで書いたように、議会全体の取組みとしていかに共有していくか?も大きなポイント。今回の場合は、議会内部でも常任委員会のメンバーとそれ以外のメンバーとの温度差がかなりあったような気がします。そして、その温度さはどこから生じているのかと言えば…「当事者の参加はいかに保障されてきたか?」「どのくらい当事者の皆さん、関係者のみなさんの声を聴いたのか?」という視点ではないかなと感じてきました。議員の中からも疑義の声も上がり、議会全体としては、議会運営委員会で「当事者の声が聴けていないのではないか?」という指摘も出され、それを踏まえ、常任委員会では市内障害者団体等37団体へのアンケート調査も行いました。

しかし、そこで改めて認識できたのは「アンケートが送られてきて、はじめて条例制定の取組みを知った。」という声。そしてまた、「自分たちにとても関わる条例のことにも関らず、参加の機会が全く与えられてこなかった。」という声。当事者に対する配慮不足、当事者への参加が保障されていないなど・・・議会内からも「当事者参加」に対する不足が指摘されていたとおりの声が上がってきたのでした。もちろん、条例制定の取組みに対して、「ぜひ、進めてほしい」という声もありましたし、期待も寄せられていたことは確かです。

そもそも思い起こしますと、常任委員会が条例制定をするきっかけになったのは聴覚障害者協会の皆さんから「手話言語条例を制定してほしい」とするご意見があったこと。ですので、聴覚障害者協会のみなさまとは個別の意見交換や説明会などは重ねてきていた…という経過はあります。

ただ、その後の委員会の取組みや経過の中で、条例制定の方向としては「手話言語条例」に盛り込みたい内容に加えて、障がい者全員のコミュニケーションを保障することへも視点が広がった内容になったようです。言ってみれば、条例が対象とする範囲がとても拡大し、当然ながら、当事者関係者の範囲がものすごく広がったというわけですね。本来はその広がりに応じ、当事者参加のプロセスをていねいにつくっていくことが求められたのだろうと思います。

今日は「当事者の声を聴いてほしい」とする想いのもとで、権利擁護専門部会のみなさまが会合を開いてくださり、とても貴重な時間であり場だったと思います。委員会の進捗状況について、議長という立場からは相変わらず見守っている状況であり、会派でミーティングをした際に受けている報告からは「まだ、これから検討を進める」ということ止まりだったのですが、今日の会合を踏まえれば、「何が何でも条例制定をする」(「何が何でも」…と言わざるを得ないのは、私たちの任期が迫っているため、その任期中にやろうとすれば「何が何でも」になってしまう。)にはならないだろうなとは思いました。改めて、健康福祉常任委員会では今後の取組みについて協議されると考えていますが、「何のために誰のために条例制定をするのか?」という視点に立ち、当事者参加の必要性を再確認してほしいと考えています。

「『当事者参加』という視点でどのようにプロセスをつくっていくか?」という視点、あるいは、私としては常任委員会の取組みについて議長がどのように把握すべきだったのか、あるいは常任委員長に対してもっと早い段階でなすべき示唆があったのではないか?という意味で、さまざまな課題をいただけたような気がします。何よりも、今回の条例制定のありかたについて「市議会の姿勢が表れている」と言われたことについて、真摯に受け止めていかねばならないと考えています。行政に対し「当事者参加」の必要性を厳しく指摘する声もある市議会が、自分たち自身の取組みについてどうであったか?についても問うておかねばならないとも感じています。

「当事者参加とは何か?」・・・「私たちのことを私たちのいないところで決めないでほしい」。

ここに原点があるのだと思っています。ちょっと考えれば、この気持ちは理解できます。障がい当事者には限らずで、「勝手に決めないで!」という思いは誰しもが日常生活でも多かれ少なかれ感じる場面があるのではないでしょうか?私もしょっちゅう…娘から言われていますし「ママが決めなくていいし。」と。そしてまた、私も「勝手に決めるなよ!」って思うことがありますし。「自治基本条例を制定するときにどんな議論をしていたのか?」、なぜ市民参加が大事だと思っていたか、あるいはそのための情報提供が必要だと考えていたか・・・などなど当時議論したことを久しぶりに思い出しました。

戦没者追悼式。最高年齢の参列者が103歳だったそうです。平成時代最後の戦没者追悼式でもあり、改めて平和への願いと祈りとそのために私ができることを少しずつ重ねていかねばならないと心に誓ったひとときでした。