市役所の建替え。どう議論を重ねるのか。

今日は市役所本庁舎の建替えに向けて設置された議会の特別委員会「多摩市役所本庁舎建替基本計画特別委員会」でした。いずれ建替えは必要になり、どこかで対応もしなければならず、決着もつけていかなければならない課題とは言え、ずっと先送りもされてきて、そして、阿部市長が何とか一歩を踏み出したところとも言えますが、だからと言って、いけいけどんどんと議論が十分に煮詰まっていないのに進めていくわけにはいかない…と私は思っていて、後々、辻褄が合わなくなるようなことになっては困りますので、今できるだけの協議をしなければいけないと感じています。

とりあえず、外観上は市民や有識者の参加も経て、「現在地での建替えが適切」とする結論を導き出し、議会としてもそれを前提にした議論が進む予感。今のところ、私としても前提を覆すようなことはせず、議論に臨んでいますが。

しかし、「市民に来てもらえるような市役所」とか「市民協働を進める拠点になれるように」とか…「市民とまちづくりを進めていくための場所になれるように」なんていう意見が出ていることに、今さらながら驚きます。

この場所に市民がもっともっと来てもらえるようなことを求めるわけ?

「だったら、市民が来やすい場所に移転しないと。」と。「わざわざこの場所に市民は足を運ばないでしょう」と。あるいは、「ぜひ、市役所の中に食堂とかカフェを」という意見についても、飲食店を経営するってものすごく大変なことであって、現在地に開設することって極めて困難だと思うけれど‥‥と、もちろん「職員さんがランチできる」とか「市民にも食べに来てもらえるようなお店に」…という絵は描けたとしても、実際に価格帯はどうなのか?などなど考えると厳しいことは目に見えます。つい最近と言ってもいいほど、数年前のことですが、不便な立地にある多摩市総合体育館の食堂・カフェ機能をどうするのか?でさんざんスッタモンダしてきたことを思い出してしまいます。

もちろん、かつては、職員に対する福利厚生という名目のもと、当時のやまばとホール、図書館本館のあった建物に食堂「ハーベスト」って名前だった気がする…が併設されいて、破格でうどんやそばを食べれた記憶はあります。食堂については家賃はゼロでした。でも、それは今の時代はなかなか難しく現実的とは言えないでしょう。赤字補填をすること前提でなければ格安200円台からの食事を提供することは難しい。そんなに安くで食事ができる…があり得ない。とにかく、今の場所に建替えていくことを前提にして、食堂機能を取り込むこと等は不可能と思っています。

事程左様といいますか、「市民とまちづくりを進めていけるような場所」についても同じく。やぱり、立地は大事。便利な場所にあるからこそ、市民は立ち寄れるし、だからこそ市民が気軽に立ち寄れる場所と空間をつくりましょう‥‥の議論になるわけです。市民が市役所を利用するイメージ‥‥もし、まちづくりの拠点としてこの場所を…というならば、今でもやれているはずなので。

市役所が駅前に移転して、そこにまちづくりカフェ的なものを設置して、少し、飲食も提供されていくようなイメージだと、「そういうのもありかなあ」と思いますが、そもそも、現在地で市民が「行き交う」なんてことはあり得ない。「じゃあ、今日、カフェでお茶しよう」なんて、駅前なら見込める状況が想定されても、現在地では全くもってイメージすらわきません。

なのに、特別委員会のなかで、そうした観点からの意見が出ることに、個人的には違和感なのです。

ところで、今日の委員会で最も「???」と思ったのは、新庁舎については「エネルギー削減目標」の掲げ方。建物の環境性能について、これからも長く使うことになること前提、そして未来を見据えて、新たな建築物をつくるからこそ、市役所が率先して省エネと創エネの組み合わせの「100%CO2排出ゼロ」にでもするのかな?とも思いこんでいましたが、どうやら、「費用対効果を考える必要」があるのだとか。だから、鼻から諦めるような提案がなされていたところです。

「環境共生都市」と言ってみたり、「気候非常事態宣言」をアピールしたり、気候市民会議を開催して、市民も巻き込んで「脱炭素化」に取り組んでいく道筋などを議論したり、「サスティナブルアワード」やら「ESD」やら「学校の屋根貸」などなど…いろんなことやっていて、なかなか難しい課題とは言え、それなりに努力を重ねてきた環境部についても評価をしてきたのですが。

にも関わらず、市役所建替えにあたって建物の環境性能については、省エネで再生可能エネルギーの最大限導入をめざすとはいえ「ZEB」をめざすことはせず、「ZEB Ready以上にする」(資料でも環境省ホームページから引っ張ってきた図が掲載されていた)ということで、「え、それが、多摩市の環境政策なの?」とつい疑いたくなるようなレベル。

 

何といっても、あまりにも正直に「費用対効果」と言われたことには、思わず開いた口が塞がりませんでした‥‥。「何、それ!」みたいな。それを言ってしまえば終わります。すべての取組み、ゼロになっちゃうような発言に心底ガッカリでした。あ、この議論、ものすごい既視感がある。そういえば、多摩市立中央図書館の時と同じなんですよね。図書館を建設するときにも既に「ZEB」にすることの提案もありましたが、費用対効果云々で結局、それよりも後退して後退させた「ZEB Ready」…。

ますます地球環境問題が深刻化していること、この状況のなかで「待ったなし!」と市民に呼び掛けている多摩市が自分たちのところはさておきで…いいの?!と素朴に思います。「ZEB」をめざすけれど、大所高所から考えたうえで、「ZEB」にはできなかった、諦めたということであればまだ話しはわかりますが、最初から「ZEB Readyで」というのはないと思います。

こういう場面で、市長の腹の中がますます見えないというか、「結局、市長って環境問題どう思っているの?」…と感じざるを得ません。あちこちで、市民向けには環境政策の必要性を強調したり、きちんと取り組んでいきたいとか威勢のいい発言を議会でしている割には伴っていないというか。ここは、ホント、私、譲れないです。阿部市長は何のために、一旦は廃止されていた「環境部」を再設置までして「環境政策」に取り組まねばならないと考えたのですか?市長の真意や本気を問いたいです。

ということで、他にも「今の市役所に高校生に来てもらって、ここで働くとは」を想像してもらいながら、アンケートを取って、市役所建替えについて意見を聴くこと等する予定だとか。事前学習で何らかの準備をし、高校生にも学んでもらい、知識を習得してもらってから、実際にアンケート調査をするそうですが、一体、それってどんな目的と意図があり、どんなアンケート項目にしていくつもりなんでしょう?それを「若者参加」にしていきたいというのも、ホント、ピントズレているとしか思えませんでした。乏しい私の想像力では及ばないようなことに取り組むのかもしれませんが。アリバイ作りにもならないようなことだと時間がもったいない。それこそ「費用対効果」ですよね。「高校生の皆さんに学びの場を提供するため」が目的であれば話は別ですが。

 

今後、どんな風に議論を重ねていくつもりなのか。その議論の過程のなかで、議会はどう役割を果たすべきなのか。いろいろ考えさせられることは多いです。少なくとも議会全体での合意形成を大事にしながら、どう進めていくのか、ここは丁寧にやっていけるといいなと思いますが。いい議論をしていくためには、議論をするための前提として情報、知識なども必要。行政側がどういう情報を出そうとしているか、議会側に共有して、議論してもらいたいと考えているか…そこにもかかっていると思います。「当たり障りのない情報」だけしか出さないという従来型行政では、何も変わらない。よい議論をしようと思ったとしても限界があります。「当たり障りのない情報」のなかでしか、議論できないのは本当に残念。