「場所」ではなくて「ひと」が居場所をつくっているという話し。

今日は唐木田児童館に行ってきました!今日で児童館見学シリーズは最後なのですが、実は一番最初に行ったのは桜ヶ丘児童館で、その目的はパルテノン多摩と連携した事業実施が企画されていると知ったのがきっかけの一つ。残念ながら夏休み中にも実施予定だったワークショップは緊急事態宣言中を考慮して中止になってしまったそうですが、再度、桜ヶ丘児童館にも足を運ぶ予定です。児童館側は万全な感染防止策も考えていたようですが、連携先のパルテノン多摩から中止したいという申し出があったそうで、本当にがっかり(仕方ないけれど)。9月にも予定されている事業のほうは今のところは実施する方向と聞いているので、無事に開くことができますように。

さて、唐木田児童館の館長はこの春に一ノ宮児童館から異動してきました…ということで、多摩市最古の児童館から最新の児童館へ。何と言っても「その設えの違い」をまざまざと実感されているようでした。もちろん、唐木田児童館の設えが集大成というわけではありません。ただ、今までの児童館活動の経験をベースにし、大半が…ではなく、その一部が設計にも取り入れられた施設ですから、他館からみれば羨ましいとしか言いようがない環境にあることは確か(他の地域の子どもたちが、ここに来たら驚くだろうな!)。

あ、私に言わせれば「施設格差がありすぎ!」なのですが、思っていてもそのことは口に出さずして、他館では「施設格差」をきちんと乗り越えた運営されているわけですから、そこも評価したいですね。そして、そこには必ず「ひと」がいることも強調したいポイントです。実際に、一ノ宮児童館では限られた施設、スペースを使用するにあたって工夫やら配慮やらさまざましてこられた館長さんですから、ある意味、その苦労が唐木田では少しは減ったのかもしれません。

一方、唐木田児童館の場合は…複合施設内にある他の児童館とも同様に、他施設と同居していることの難しさというのか苦労というのは…意外と絶えないはず。これは一ノ宮児童館とは異なるはずです。特に唐木田児童館の場合は2階にあるという立地が難。1階にあればまだしも、2階にあるために…しかも建物があまりにもモダンで吹き抜けになっているがために、児童館活動に伴う「音」の問題をはじめ…その日常が他施設を利用する大人たちの気に障ることもあるようで…。子ども専用になっていないことの苦労の大きさというのは、想像以上のものなので。

それにしても、コミュニティとはホント難しい。「子どもの声が聴こえてうれしい」とか「子どもたちの姿に元気をもらえる」という人ばかりではないので、その調整というのか、コミュニティの「和」を保つための児童館の役割もまた大きいこと…唐木田児童館へ行っても実感させられます。

という話しはさておき、今日は「中高生の居場所づくり」という話しも少し深く聞くことができ、非常に勉強になりました。中高生向けの事業については重点対応する児童館としてまずは、唐木田児童館と一ノ宮児童館からスタート。今は永山児童館も「中高生の重点館」として事業実施しています。事業開始当時、中高生対応と言っても…とネックになったのは、やっぱり「施設」のことだったそう。中高生にとって明らかに使い勝手が良い唐木田児童館、「この施設では中高生を呼ぶことは難しい」一ノ宮児童館…そしてまた永山児童館…。その「施設格差」の大きさというのは説明されなくとも、実際にそれぞれの館に足を運べば明らかです。

 

でも、市長に「やる」という方針があれば、現場は動くしかない。中高生にも利用してもらうための工夫に取組んだと言います。その結果、一ノ宮児童館でも少しずつ中高生の利用が進んだそうです。そして、時を重ねながらようやっと、小さい時から児童館を利用している子どもたちが中高生になってもユーザーとして利用を継続し、児童館の活動そのものも支えてくれるジュニアリーダーやボランティアとしても活躍してくれるような流れが徐々にできてきたそう(その前からもやっていたことと思うのですが、さらに…ということでしょうね)。こうした一ノ宮児童館での経験を踏まえ、この4月から唐木田児童館長として新たなスタートをきった館長ですが、やっぱり、プレッシャーはあるのだろうなあ…。なぜなら、児童館の活動にも地域性があり、それぞれの館の特色があり、伝統とか歴史があるわけで、それを上手く継続しながら、進化させたり、発展させていくことが求められると思うので。前任館長もまた新規オープンした時からずっと唐木田コミュニティセンターや唐木田図書館とともに唐木田児童館を築いてきた方である意味「顔」になっていたわけですし(一方、今の館長も一ノ宮児童館の「顔」でもありましたが)。児童館というのは「館長」の振舞い一つで地域からの評価も大きく変わりますし、その意味でも、非常に重要な位置にあることもまた押さえておきたいものですね。

そして、何しろ、児童館の利用者は子どもなので、ある意味…その評価はシビアというか、辛らつに突き付けられるようにも思います。「行きたくない」「なんか、人が変わったら、しょぼくなった」…なんてこと、子どもは素直に反応しますので。そこが、他の市役所業務とは全く異なるのかもしれません。強制的に行かねばならない場所ではないからこそ、子どもたちの自由意志がそれこそダイレクトに示される場所になるのでしょう。

この間、児童館に足を運び…。児童館職員とは…についても考えたり、その様子からも学んできたのですけれど、行動原理にあるのはこの図かな…と思っています。

なぜなら、子ども一人ひとりへの支援、親への支援などの場面を通じて、’あからさまに’合理的な配慮をするのではなく、そっと、自然な気配りをして、「ここに来たらみんなとつながれる」とか「仲間になれる」を実感してもらうことを大切にしながら業務が遂行されているように思ったからです。

児童館利用をしてくれたすべてのみなさんに「明日も行こう!行きたい!」って思ってもらえるように。

「一期一会という気持ちで仕事をしている」とおっしゃる職員さんの声も聞いているのですが、まさに、その気持ちで利用者を受け止める場所にしようと日々努力が重ねられているように思います。そして、全部を見たわけではなく、見学をしてきたすべての児童館で「ここを」心の支えにしている子どもや大人たちの存在を目の当たりにし、少しは理解できたような気がします。この場所にとって何が大事なのか、そしてまた、場所だけあっても「居場所にはならない」ことを強く感じています。

公園の砂場でママと子ども一人が遊んでいるのと、児童館のプレイルームでママと子ども一人で遊んでいるのとは何が違うのか。家で子ども一人で留守番をして、大好きな折り紙や塗り絵をしているのと、児童館に一人でやってきて同じように大好きな折り紙や塗り絵をしているのとでは何が違うのか。

ここにこそ児童館の役割と機能とを見出していかねばならないのではないかと思うものです。一ノ宮児童館で「この場所で中高生を呼ぶことは難しい」という実感を超えて、でも「中高生対応の重点館にする」という方針をカタチにしてきたところにも「ひと」がいたことを忘れてはならず、そしてそこにどんな工夫がされてきたのかも振り返っておきたいですね。

児童館で「おたがいさま」という子どもたちどうしをはじめ、子育て広場利用者間の関係性を築くことができていること、児童館が「迷惑施設」にならないための陰ながらの様々な努力をしているようなエピソードをはじめ、「地域」という視点から子どもたちや親子をつなぎながら、活動をしてきた様子などなど…今日も忙しい館長を捕まえて、私のおしゃべり時間にもつきあっていただき、また、一層…児童館どうあるべきかに対する自分自身の考え方を深くすることができたように思います。

多摩市にとっての「児童館とは?」を考えるための調査活動はここでひと段落。ここから、質問事項をまとめていく作業をするのですが、現場からの声をぶつける相手は…現場にいない部長や課長なんですよね…。さて、どこまで共通認識を持てるのか、ここ、問われそうです。ただいま子どもたちは夏休み中…で、忙しくしている児童館に邪魔しに行くような私にも丁重に対応くださった現場のみなさんに感謝の気持ちで、質問づくりに取り組みます。