条例づくりを進めていくための技法…。

遠目で見るといいけれど、近くで見るとちょっと…と言われて多摩センター駅前の階段を見に行きましたが、、確かに、近くで見るとちょっと薄汚れたりしていて、「いまいち」と言われる理由が分からないわけではないが…。

今日は健康福祉常任委員会がありました。「(仮称)コミュニケーション保障条例」について素案をベースにして各会派の意見を調整するということになっていますが、なかなか議論を進めるについても、実際に条例をつくるにおいても、難しさがあるなあと感じています。多摩市議会は「委員会主義」をとっているということで、かなり委員会が努力を重ねてきているとはいえ、「委員会主義」というのは「委員会独自の取組みは尊重されるものの、しかし、委員会が独自に突っ走る」ということで議会全体の足並みが揃わない中での委員会主義であってはなかなか物事がうまく進んでいかないのもまた事実。委員会の取組みがどのように議会全体に共有されているのか、他の議員との意思疎通を図っているのかも含め、問われているような気がしています。今回の条例提案についても、全議員の意識がまだ醸成されていないというのか、行政的な言葉を借りれば「気運が高まっているとは言えない」となりそうで、議員間の温度差を解消することを優先しなければいけないだろうと考えています。

私は議会における政策提案や条例提案は全会一致で行うべきものであると考えていますが、今日の委員会では「委員会主義なんだから最終的には多数決でも・・・」という意見が出されたので、それにはさすがに驚きました。委員会主義はもちろんそのとおりで、尊重すべきことと思っていますが、委員会がこれまで取り組んできた過程の中でどのように全体議員の合意形成を図ってきたのか、あるいは、委員会に所属している各会派のメンバーがどのような情報共有が出来ていたのかについても、条例づくりを進めるにおいては非常に問われる点だと考えています。会派内でどの段階で情報を共有し、議論を練り上げていくのか?もポイントの一つになっていると思います。今回は条例素案がある程度固まった段階で全議員に取組み状態が公表されましたが、過去のことを思い起こせば、条例の骨格をどうするのか?あるいは条文素案を作成する段階から全議員を巻き込む工夫で取組みを重ねてきたように思います。素案があった方が議論しやすいことは確かなのですが、いきなり素案を見せられたところで、それ以前に全体議員の理解度をどう上げていくのかが大事。

なにせ、今回は初めての取組みとはいえ、議会全体の取組みとして多摩市議会が「全会一致」を重んじていくとすればかなり私たち、今後の努力が問われ、覚悟も問われるだろうと思います。議会提案としての重みをしっかりと持たせ、行政に対し義務を課していく条例にする野であればなおさらのこと。「全会一致」にしなければ意味がないと思います。

ところで、条例づくり・・・ということで、条文をいかに作成するのか?という点ですが、これもまた専門家がなかなかいると言いがたい議会においては難しい。私も今日の委員会で意見交換をずっと聞いていたのですが、議会基本条例のように「議会独自のルール」ではないことを思うと、行政提案でなされる条例の「姿」を考慮しながら、全体の条文構成や言葉遣いなども考えていく必要がありそうです。言い回しひとつをとっても、あるいは用語についても…そういう意味でとても難易度が高いですね。

行政の場合も他市で先行している条例を参考にしながら作成すると思っています。とは言え、すべて真似をして「市の名前」のところを「多摩市」に変えればいいという問題ではないでしょう。おそらく自分たち自身の独自性というのかオリジナリティを加えようとすれば、他市を参考にし、足し算あるいは引き算で加筆修正などを加えていくことはよくあることとは思います。しかし、それで出来上がった条文全体を客観的に眺めていくことが必要です。足し算引き算をしながらだと、全体が実はちぐはぐな印象になることも多く、特に条文作りなどには慣れていないと大変です。なるほど、行政には「文書法制課」という担当部門がある理由がよくわかります。大学院に通っていたのも既に昔々…のことになってしまいましたが、そのときに条例づくりの授業があり、私も何度か体験もしておりますが、ド素人な人がいきなりつくり、同期だった行政職員にすごく突っ込まれたりと懐かしい思い出…。私たちは決して条例づくりのプロではない。行政職員であっても、全員がプロ級ではないからこそ専門部署としての「文書法制課」が存在し、ある意味屋台骨になっているとも言えますね。プロ集団です。

という状況を踏まえ、しかし、市民生活の問題解決のために何ができるか?について条例制定が必要であれば、それに向けて最善を尽くすことが求められるのは当然のこと。何とか健康福祉常任員会で取組んできたことがカタチになると良いなと願っておりますが、まだまだハードル高そうです。

とにかくこれから、やらなければいけないことが山積みになっているという点がとても大きいですね。市民意見を聞くという点でもまだ十分とは言えず、今後、さらに取り組んでいくとなれば…正直、来年4月の私たちの改選までにどこまでできるか、多摩市の条例として、他の条例とともに例規集に並んでもおかしくない水準に高めていくためにも行政との綿密な調整も必要になります。先にも書いた通り、行政に義務を課すというのはとても重たいことなのです。

「議会で議員の政策提案条例が一本もない」ということが学識経験者などから批判され、地方議会は仕事をしていないあるいは能力がないなどと指摘する知識人もいらっしゃいます。それは議会が「立法機関」としての役割を果たしていないとする批判だと思っていますが、議会は行政から提案された条例をまずはきちんと議論することが必要であって、その上で議決するというのは「立法機能」を果たしているとも言えます。なので、個人的には政策提案条例がないという批判に対し、学識経験者や知識人の方々の批判は一面だけを見ているだけなので、そんなに悲観することはないとも思っているのです。

そもそも、議員の数だけ政策提案はあるわけですから、それを「よし!」と議会全体で政策提案条例に結び付けていくための努力やあるいは取組みを進めていくためにはそれ相応の議会全体の意識づくり、政策提案条例をするにいたる立法事実などの共有などその準備段階がものすごく問われると考えております。議会というのは議員どうし(言ってみればその背景には支援者である市民がいる)の利害調整をどう進めていくかについても必要な視点であり、そうそう簡単ではないのです。

ということで、今回の取組みの中で今、私たちが到達しているところを踏まえ、次にどのようなステップを踏んでいくかも大事。委員会で取組んできたことをどう大事にできるのかを改めて考えていきたいと思っております。議会事務局もしっかりと議会を支える組織として進化してもらいたいですしね…。何となく、私たちに足りないのは条例づくりの実践を進めていくための技術ももちろんなのですが、今はそれ以上に、「お作法」というのか、議会内でのルールが未確立であるところに要因があるのかなという気も。