多摩市はなぜ「公契約条例」を制定できたか?

今日は午前に北海道帯広市議会の総務委員会の皆さまが「公契約条例」、午後は大阪府高石市議会の議会運営委員会の皆さまが「議会改革について」の視察にいらっしゃいました。議長は冒頭挨拶すれば、それで終わり…ということも多いですが、せっかくいらして下さった他市議会の皆さまから学べることもたくさんあります。ですので、お邪魔にならない限り(と言っても、少々めんどくさいと思っても「同席したい」という意向を拒否することもできないか…)、いつも同席させてもらい、お見送りまでご一緒させていただいています。他市議会の方からは「議長さんが最後までおつきあいくださるなんて。」と驚かれることもありますが、「私の勉強です。」というと「なるほど」・・・と。

そんなわけで、議会改革に関連する内容以外のテーマの場合には説明する担当職員さんが「やりにくい」と感じても良くないなと思っているので、冒頭のお出迎え挨拶をしたらあとはお任せしています。が、今日は「公契約条例」がテーマだったので、担当部署がどんな説明をされているのかに関心もあり、同席することとしました。

公契約条例についてはインターネット上にもたくさんの情報が掲載されていますが、賛否両論であって、条例制定その後の運用もなかなか難しいと言われています。多摩市でも毎年毎年の状況環境変化などにも対応し、その運用方法など工夫をしています。そのための「公契約審議会」が設置されていて、労働者代表と経営者代表が参加し、労働法制に詳しい弁護士さんのもと協議を進めています。ですので、おそらく公契約条例の制定、運用という観点で言えば、全国の中でも非常にうまくいっている事例と考えています。そして、その理由は条例を制定する過程から労働者代表、経営者代表が参加して時には立場に寄る意見の違いも乗り越えながら、折衝してきたことに経過があると思います。地味ながらも、こうした条例が制定されているところは自慢です。

ところで、今日の視察で改めて感じたことですが、公契約条例制定時から既に担当課長も係長も異動などで変わっているにもかかわらず、きちんと制定したときのマインドが引き継がれていることにうれしく思いました。視察対応をした課長係長は条例の意義にも深い理解をお持ちで、当たり前と言えば当たり前なのかもしれませんが、満足度の高さだと☆(きら星)5つくらいついてしまうくらい素晴らしい充実した内容でした。私の経験に照らし合わせて、客観的に捉えたとしても、「これはかなりおススメできる!」視察であり、対応している課長のやる気にも支えられているのかもしれませんが、非常にクオリティが高いと思った次第です。あまりにも地味すぎてシティセールスできる内容とは言えないかもしれませんが、ぜひ、全国の市議会の皆さんには宣伝したいですね。

ちなみに課長は「公契約条例」の視察対応については昨年度だけでも40件ほどはこなしているとのこと。すっかり業界では有名かもしれませんね。昨年、NHKのクローズアップ現代でとりあげてから視察がとても増えたという話しも伺っています。ただし、今日の説明で条例制定のきっかけとしては「阿部市長が平成22年に当選したときの公約の1つに掲げていた」ということから始まっているところに「間違ってはいないけれど、やや正しさに欠ける。」というのが議員としての私の捉え方。多摩市はなぜ公契約条例を制定することができたか?と言えば、阿部市長と「公契約条例の制定」を言ってみれば政策協定した議員たちがいて、そしてまた、その議員たちが議会における合意形成、あるいは市民(特に経営者層の皆さん)に対する同意や理解を得るための努力などに動いていたという裏事情があったわけですから。

市長が公約に掲げればさえ、うまくいくかと言えば、決してそうではありません。労働者側と経営者側との意思疎通をどう図っていくか?条例の存在価値にどう理解を深めていただき、同意を取り付けられるのか?…実は議会内でもそれぞれさまざま立場があるわけなので、議員どうしで理解を深める努力、あるいは合意形成を図る努力がまずは必要だと言えるわけです。他市の議員さんから「公契約条例に取組もうと思っても、なかなか上手くいかない」とするお悩みを伺う場合もありますが、まさに多摩市でうまーく条例制定に運べたところには、「汗をかいた議員の存在」があるのだと私は考えています。超党派で勉強会をしてみたり、いろんな方と意見交換をさせていただいたり、中心になって取組み議員がいたことも大きかったなあ。ああ、懐かしい。

いずれにせよ、公契約条例が制定されているなんて全国の中でも珍しく、正直、私も「公契約条例の制定って、そんなに難しいことなの?」と他市の状況を見ていて、改めて思い知っているような状況です。つまりは、この件では多摩市はかなり頑張っているわけです・・・何度も繰り返して恐縮ですが「地味に」・・・。そしてまた、公契約条例がある多摩市から発注されて工事などを請け負いしている事業者さんたちが私たち多摩市の取組みに協力して下さっているわけなので、そこにも感謝。

既に制定時から一定の時間も経過しており、当時の議会内での議論がどうだったのか?…記憶をたどるだけでは思い出せず、過去の議事録でも見返さないといけないなと思うわけですが、やはり「議会とどんなやりとりがされていたのか?」など他市からいらっしゃるみなさんの関心事がありそうですね。久しぶりに、昔の資料を引っ張り出したくなった次第。時間があったら過去の振返りをしてみよーっと。(これまた懐かしすぎる広報物