続き。なぜ、「子どもの館」である必要があるのか。

大規模改修工事の開始とともに、木の実公園のところにある集会所に一時移転している連光寺児童館です。2階建てのこじんまりした建物=集会所は1階が子育て拠点、2階が児童館として使用されていました。決して広いとは言えない場所ですが、公園の一角にあるのですごく居心地がよく、「おじいちゃんおばあちゃんのお家に来たような雰囲気でしょう」と職員さんがおっしゃる通りに、確かに田舎の親戚の家に遊びに来たような気分にもなれる場所で、すごい寛げます。広すぎないサイズが醸し出す特別な雰囲気があります。集会所を管理されている地域自治会の方のご理解もあり、室内は児童館らしい装飾もされているのですが、妙に気持ちが落ち着きます。室内で思いっきり身体を動かすとか、そんなことはできないのですが。場所の狭さを忘れる佇まいです。

連光寺児童館は4月の人事異動で館長さんが変わったばかりということですが、以前、同じ建物内にあった連光寺福祉館にもいらっしゃったこともあるそう。「何となく児童館のことは知っていたけれど、実際に仕事を始めてみると、外から見てただけではわからないことが多くて。」と前置きをされた一言に納得してしまいました。

なるほど、外から眺めているだけではわからないことがある…実際にはそういうことが世の中多いわけですが、中にいる人にしかわからないことも時に第三者(外部)にも理解してもらう必要があります。確かに、児童館条例があり、それに基づく規則などもありますが、それらを見たところで、まあ、多摩市児童館のことが理解できるわけでもありません。児童館が毎年まとめている報告書があり、それを見れば活動状況もわかるとはいえ、それだけではやっぱり十分とは言えず、もう少しその取組みを「共通言語化」しておく必要性がありそうです。マニュアルというのは良し悪しあると思いますが、やっぱり、かねてから指摘されているように「多摩市版児童館ガイドライン」の作成に取組むべきではないかなあと感じます。そのなかで、改めて「児童館の役割」を再確認することや、時代環境と共に「児童館の業務内容」が見直しもされ、増えていること等も掴んでいけると良いのではないかと思うものです。

連光寺児童館が仮住まいに場所を移転する直前には「フェアウェルイベント」のようなことも実施したようですが、その時の話を伺うと「福祉」としての児童館の存在意義を痛感するものであって、「児童福祉法」に基づく施設であり業務を展開していることを頭にとめて置くことの重要性を再認識させられるものです。

もちろん…こちらは土曜日の諏訪児童館ですが、染め物体験をやっていたり、火起こし体験をやっていたり、子どもたちが楽しめるイベントも実施していますが、児童館の原点を辿るところには「児童福祉法」があることをきちんと押さえながら、事業展開されていることを忘れてはならない気がしています。

豊ヶ丘児童館です。ここは公共施設の統廃合計画によって一旦は「廃止」と方向性が出た豊ヶ丘地域の複合施設内にあります。しかし、地域のみなさんの「残してほしい」に耳を傾けた結果…「改修を実施する施設」と方向転換され、現在に至る。建物を残すか残さないかに大きく揺さぶられ、現状での児童館の扱いは…「児童館を残す」ではなく、「児童的機能を残す」というような方向になっている様子。「児童館的機能」って一体何なのか?と思うのですが、「場所があればいい」というような乱暴な話ではないことを確認しなければならないと思いますね。

玄関入ってすぐのところがおしゃれな設えになっていてびっくり。ビリヤード台!子どもたちと一緒に手づくりしたそうです。

こちらも…。カフェ風に…ということで、おしゃれな椅子は閉店する喫茶店から譲り受けたものだとか。ちょっとした勉強スペースにもなっているとか。「カフェ風」というのも、子どもたちからの希望の声で…ということで、南側にもテラス風の場所が設置されていて、ガンガン照りではない時間には、蚊取り線香と虫よけスプレー必須にて、活用できそうです。

「子どもたちと一緒にできる作業は一緒に」ということで、取り組んだようですが、その作業を通じて「子どもとの距離がぐっと近くなった」と館長さんがおっしゃっていました。子どもたちがお客さんではなく、子どもたち自身も大人と一緒に対等に作業をするわけなので、その意味で距離が縮むことが想像できます。きっとその中で、児童館の大人に対する子どもたちの信頼感も高まっていくのだろうと感じた次第です。

 

以前は学童クラブがあったスペースは、子育て拠点として、幼児も安心して寛げる場所になっていました。やっぱり、小学生以上、時には中学生も…となった場合、体格も違うし、スピードも違うし…小さい子どもたちが紛れるというのは危険も伴います。場所を分けることができ使用できるのは保護者にとっても安心ですね。見学した時にものんびりと親子が遊んでいる姿がありました。子どもたちは思い思いに過ごすことができ、児童館の大人はその過ごし方に余計な干渉はしません。もちろん危険な行為については注意を促しますが、部屋の隅っこで読書している子がいれば、そっとその様子を見守っているという感じですね。ただ、その子が次に動き出したときには、声をかける準備をしているのかもしれません。

豊ヶ丘児童館もまた、複合施設内にあるのでその他施設と同居する大変さもあるようです。それだけに、館長さんが日ごろから児童館以外の施設にも目を配り、気配りもしながら、「児童館」が地域に理解されるように、そして、地域で子どもたちが大切にされ、見守ってもらえるようにと取組みの工夫などされている様子なども伺うことができました。

館長さんを訪問し、いろいろお話しを聴いてみると、「なるほどなあ」と学べることが本当に多くあります。久しぶりに児童館をめぐってみて、発見したり気が付かされることも多いです。「子どもたちが排除されない地域づくり」のためにも児童館職員が必要ではないかと思うのでした。