ていねいな暮らしがある場所。

 

海士町の「あまマーレ」の閉館時間に間に合って、訪問。ここにあったのが「古道具屋さん」。昔は保育園だった施設を再活用している施設。大規模な修繕を施すわけではなく、キラキラと生まれ変わるようなこともなく、昔の佇まい、園舎の趣きをそのまま活かし、だけど、そのままではない空間。あ…涙もろくなっている私は、何だかホロリと来てしまう。懐かしくて、昭和時代の映画のロケに使われそうな施設なのに、なのに古臭くない。

この気持ちは何だろうって思うけれど、ていねいに使われていることがうれしい。そして、掃除が行き届いていて、物を大切にしたい、あるものを丁寧に使い続けたいという心が感じられる場所。「これだ」という感じがして、すごくうれしい。

そして「古道具屋さん」。横文字にすれば「リサイクルショップ」とも言えるかもしれないけれど、でも、結婚式などの引き出物などなどお家に眠っていたような品物がていねいに並べられていて、引き取り手を待っているという感じ。きっと、「今は足りているから…」って、大切に仕舞われていたものばかりなんだろうな。

「足るを知る」というのか、欲張らないというのか…便利ではない町だからこそ、「今あるものの中で工夫する」ことが知らず知らず身についているのかもしれない。町には100円ショップはないけれど、ここに来れば、いい食器に出会えそうで、そのほかにも大切にお取り置きされていたものが並べられていて、見ていて飽きない…(のに、眺めるだけしか時間が無くて残念でしたが)。

コワーキングスペースもあって、子どものお部屋もあって、調理のできるお部屋もあり。みんなのコミュニティスペースで教育委員会が管理をしている施設のようですが、管理人をされている集落支援員さんたちの抜群のセンスが光っていて、公共施設ならではの利用のしにくさを感じさせないというのか、使う人が場所に合わせなければならないというよりは、使いたい人が使いたいように使えるような印象…居心地の良さは「受容」を感じることとも関係があるかな。居心地のいい公共施設のお手本みたいな気がしてしまった。

リニューアルしなくても、ていねいに使い続けるための使い方がある。そんなことを学んだひとときでもありました。勉強になりました。

島では唯一のパン屋さん。廃業を決断した「ときわベーカリー」さんを次世代につなぐ。事業を引き継ぐのが「隠岐桜風舎」。パッケージは昔のまま。バタークリームのパンは絶品で東京にはなかなか売っていない。大人買いしたいくらい気に入りました。でも、大人買いなどしてはいけない、独り占めして買い込んではいけないよな…っていう意識が働くのは、やっぱり、数に限りがあることがわかり、みんなで分け合うことが大切だなと思うからかもしれません。欲しいものを欲しいだけというよりは、必要なものを必要なだけ、今いるだけを買う…お買い物をされている方の姿に学んだこと。つなかけ」も素敵なお店でした。

「私が作ったんです」・・・っていただいたかわいいイラストの「隠岐 絵本ルートガイドブック」。これはどこで手に入るんだろう。人口が約2300人の町。高齢化も進んでいる町。でも、若い力をまちづくりに活かすことや取り入れることに積極的で「大人の島留学」の制度を利用して島に滞在しているみなさんのお姿もお見受けしました。

都会のような贅沢ができるわけではないのに、豊かさを感じるのはなぜでしょうね。何となく日ごろの自分を反省するような時間を持てたりして、海士町の滞在は私にとっても貴重なひとときになりました。物を大切にして、ていねいな暮らし、なおかつシンプルな暮らしをすることをますます心がけたいと思うのでした。今あるもの…を見直してみることも大切ですね。新しいものばかりが良いわけではないというのか。

 

帰りのフェリーから。オープンしたばかりのEntôはやっぱり素敵でした。

海士町は昨年、ふるさと納税で目標の1億円を達成したのです。すごいですよね。たまたま担当している方とお話しする機会がありましたが、そのためにものすごく努力をされていて…一度でもご縁があり、ふるさと納税をしてくださった方全員に一軒一軒電話作戦をしたそうですよ。なかなかできないことですよね。すごいことですよね。感心せずにはいられませんでした。