12月議会 一般会計補正予算に反対しました。でも可決しました。

永山駅で定例朝街宣からスタートしました。そして、今朝は8時半に会派で集合して、補正予算の件について議論しました。

今回の補正予算はパルテノン多摩の大規模改修がいよいよ工事に着工するということで約75億円の支出にGOサインを出すかどうか…とても大事な判断が含まれていました。この件については、議会でも特別委員会を設置しながら、向き合ってきた課題でもあり、担当所管もアドバイザーからの支援を受けながら、ようやく基本方針から、基本計画から実施設計と取り組んできたものです。ようやく工事に取り掛かれるのか…ということで、背中を後押しできるとよかったのかもしれません。

でも、やっぱりそういうわけにいかないなと思った一番の理由は「自動演奏楽器」にありました。これまでマジックサウンドルームで大切に保管をしてきた市民の財産。文化的価値を守っていくために温湿度管理をしながら、今に至る…現在8台ありますが、当時の価格でいえば総額4億円にもなる高価な高価なもの。時代と共に価格は変動していますが、値段で判断できるようなものではないというか、価値がつけがたいものともいえるでしょう。ただ、今は売却してしまうとなれば、当時の価格の何分の1になってしまいます。当初、自動演奏楽器を購入することに対し、議会でも賛否両論あったと聞いています。もっと福祉や教育など優先すべき課題があるという声もあったことを確認しています。それでも、価値のあるものであり、これを多摩市で保有することがパルテノン多摩の魅力にもなり、発信できる力にもつながる等などの理由でコレクションが増えていったと聞いています。

しかし、大規模改修という時期を迎え、行政が将来にわたってパルテノン多摩内で維持し続けることは維持管理経費などを含めても難しいとの結論を出し、それに対し、私たちも賛意を示してきました。もちろん、議会でも「一定の役割を終えただろう」という方向性を示したことも事実です。こうした行政と議会と…見解を合致させつつ、大規模改修の計画づくりに向け、内容が固められてきたはずでした。

私たちは自動演奏楽器の音色を守り、大切に持ち続けることができるかどうか。大規模改修計画を作るうえでは、もっと市民に開放的で、市民に使いやすい施設づくりをしたいと考えてきました。そのために、4階で自動演奏楽器を守ってきたマジックサウンドルームについては廃止せざるを得ないとの方向性を見出してきました。自動演奏楽器のために温湿度管理ができる部屋として設置をしてきたマジックサウンドルームの廃止というのは、パルテノン多摩全体の活性化や次の展開につなげていくためのステップでもありました。また、そのことは自動演奏楽器についても区切りをつけるという覚悟でもありました。自動演奏楽器を後世に伝えていくためにも、次のステップを考えていこうというのが私たちの考えでした。

でも、その流れが大きく変わった。

昨年12月のことです。2,000名を超える市民の方の署名があり、陳情が提出されました。その内容は自動演奏楽器はとても大切なものであり、これからもパルテノン多摩の中で守ってほしいというものでした。もちろん、市民の皆さんの想いもわかります。だからこそ、私たち議会も市民からの陳情を誠実に受け止め、大所高所から検討が必要だと考えながら、どのように結論を出してくべきかを議論していました。そして、残してほしいとする市民の皆様からの声は重たく、結論がすぐに下せず、もし、今後、自動演奏楽器をパルテノン多摩の中で守っていくとしたらどうなるのか?について検討を進めていました。

そうこうしているうちに、つまりは、議会での協議中の段階で、年明けになって私たちに知らされたのは、市長の方針転換でした。つまり、自動演奏楽器について「すべて残す」…今まで、行政と議会で合致していた方針について、まるでちゃぶ台ひっくり返すかのように…突然、方針転換が行われたのでした。

もちろん、戸惑いました。「え?!」と驚いたというのは言うまでもありません。なぜなら、「自動演奏楽器は文化的な価値を守るために温湿度管理も必要で…云々」とずっと説明されてきたその内容は、「思ったほど管理は大変ではなさそうだ。」と市長の方針転換に合わせるかのように変更され(そりゃ、説明を無理やりにでも変更する必要が生じることはわかりますが)、今までの議論は一体何だったのか…と感じずにはいられないような事態になったのです。

 

でも、私はそれは違うと思いました。今まで調べてきたこと、そして河口湖のオルゴールの森や清里の萌木の村でもヒアリングしてきたこと、またインターネット上で情報をかき集めてみても、自動演奏楽器類については適切な温湿度管理の必要性が説明されていて、今まで行政が私たちに説明してきたことが正しいと思いました。今のマジックサウンドルームは動線計画としても失敗していて、人が足を運びづらかったことは確かですが、しかし、その場所で管理してきたのにもそれなりの理由があったと思っていました。狭い空間だからこそ温湿度管理はしやすかった、あの場所がきっと適していたのだと思うのですね。

日本の高い湿度との戦い!」にも書いてあるように、高温多湿の日本に自動演奏楽器を持ち込むというのは同時に維持管理についても覚悟するということでもあり。オルゴールミュージアム的なものが高原地域にあるというのにもやっぱりそれなりに意味があることなんだろうな…とも理解できるのです。

ですので、市長が方針転換をするならば、それなりの設計変更が必要になると思っていました。市民の願いを受け止めて、自動演奏楽器をパルテノン多摩の中に残し守っていくというならば、その責任を果たしていく必要がある。美しい音色を守る。単なる公共施設ではなく、パルテノン多摩という文化施設の中で守っていくというならば、なおさらのこと、その責任が重たくなるなと私は思ってきました。しかし、方針変更と共に私にとってはやや歪められていないか?と思えるような「それほどの管理が無くても大丈夫らしい」という説明により、改修後はパルテノン多摩の2階のオープンスペース(現在の大ホールのホワイエのところとか…)にそのまま置いておくというのが新たな方針であり、自動演奏楽器を残すという選択をした市長であり、行政の結論となってしまい、私の考えとは合わなくなってしまったのです。

今日の補正予算の質疑応答で明らかになったように「自動演奏楽器を残すといっても、特別対応はしない」ということには疑問ですし、納得しがたい部分があるのです。そして、自動演奏楽器については、必要になるだろうメンテナンス費用のことについても、少しだけ明らかになりました。これまで行政は「今後、自動演奏楽器を維持していくともなれば、それなりの費用負担が生じていく」との説明をしていたように、大規模改修工事中には、今のマジックサウンドルームからパルテノン多摩の大規模改修中に1階(地下)の収蔵庫(第2収蔵庫。温湿度管理ができる第1収蔵庫ではない。)に移動させ保管する予定とのことですが、そのために必要な経費の見積もりは約500万円。これが、高いか安いかというのはそれぞれの価値判断によることと思いますが、いずれにせよ、改修が終わった後には、また、次の設置場所に移動させる必要があるわけですから、それなりの負担を覚悟するということになりますね。また、現在8台ある自動演奏楽器のうちの1台はマジックサウンドルームから運び出すにも分解しなければならず、分解するといっても何か図面があるわけでもないので、分解した人が図面にでも残さない限り(図面に残すとすれば、これまた費用が嵩みそう)、その人にしか組み立てができなくなるという事情もあるのです。仮にも同一人物に分解組み立てをお願いできるような状況が整わなかったらどうするのだろう・・・。

ちなみに、8台の自動演奏楽器の残し方ですが、現在決定しているのは、そのうち2台は新しく建設される図書館に配置して、6台をパルテノン多摩の2階のオープンスペースとなる場所に置く計画です。オープンスペースは楽器にとってどのくらいの快適性を保てる場所になるのでしょう。図書館に移動する予定の2台は8台の中でも管理しやすい種類のものであることもわかりました。パルテノン多摩に残される自動演奏楽器にはそれなりの気遣いが必要になるのです。現在の計画のように、オープンスペース…言ってみれば、人が行き交う場所への設置になるわけなので、自動演奏楽器たちはその環境の中でどうたくましく生き抜いてくれるでしょう。私には判断が付きません。必要があれば加湿をするとの話ですが、どんな加湿器を使用するかもわかりませんが、オープンスペースに加湿器を置くわけですからね…。自動演奏楽器に快適環境は人間にとっても快適環境になるのかどうか…。

自動演奏楽器たちは、温湿度の微妙な変化でも音の狂いが生じたり、また老朽化?というのか、傷みの進行も早くなってしまうと聞いています。どうなっていくのか?大事なものだからこそ、そのものの価値(いい音色が奏でられてこその価値)を守るという視点から考えると、やっぱり、パルテノン多摩大規模改修について「お墨付き」を与えることができませんでした。

そんなわけで、私たちの会派は今回の補正予算には反対したのですが、結果的にはほかの方々はみんな賛成でしたので「賛成多数」にて可決。一部の反対の声があっても、予算は無事に可決されたので、市長はホッとしていることでしょう。でも、私は違います。ホッとはできません。今後も、自動演奏楽器を守るという責任の重たさを感じています。

今後、自動演奏楽器はオープンスペースと図書館に配置をされる。もっともっと市民にも聞いていただいて、親しんでいただける財産にしていくというのが方針です。いい音色を守っていくために私たちはこれからも税金をかけていくということも含め、市民と共に引き受けていくのでしょうね。