氷見市のふりかえり。

氷見市役所。統廃合された県立高校の体育館をリノベーションした庁舎。注目されているだけあり、多くの方が視察にも訪れているようです。個人的にというか、一緒に行ったメンバー的に最も注目したのは「複数提案からの選択」という視点です。・・・ホームページでは「耐震補強か、新築か」いくつものシミュレーションを繰り返す中、学校統合で使われなくなった高校の体育館を新庁舎として再利用するという画期的な案を選択し、防災・市民サービス・財政負担という3つの課題を同時に解決することができました。」という記載されている点につき、ヒアリングをしてわかったのは、議会に対し、「7案」が示されていたという事実です。なおかつ国の緊急防災対策事業債の申請時期なども考慮し、6月議会で特別委員会を設置し、9月には「体育館を庁舎にする」と決めたそう。どのような過程で吟味されたのか、ここは詳細までヒアリングすることができなかったものの、決め手となったのはコストパフォーマンスだったようです。ちなみに体育館改修案は職員さんからの提案だったと聞きました。

そしてもう一つ、「体育館改修」を決定し、ほぼ基本計画基本設計と進んでいたところで、市長が交代し、そこでこれまでの検討は一旦ペンで印具となったということ。交代した市長の公約が「対話のある市政」の実現ということで、仕切り直しをし「新庁舎デザインワークショップ」を行ったそうです。この時、ワークショップに約3千万の予算が計上されたとの話。議会では「スケジュールが遅れるのではないか?」など気にする声などもあったそうですが、そこはどうにか乗り越えて着地して、今に至るということでしょう。当時、「フューチャーセンター???」「ワ0クショップ???」というのが庁舎内の反応だったようですが、実際には「働く職員」さんたちの声を集めるところからはじめ、回数としては全3回、最後2回は市民と実際のリニューアルイメージを共有しながら、アイデアをデザインへとつなげていったようです。

この「新市庁舎デザインワークショップ」は国際ファシリテーター協会の「ファシリテーション・インパクトアワード金賞」(プラチナ賞に続く賞)を受賞しています。

このような取組みは他の事業でも採用され、氷見駅周辺整備事業等でも活かされています。特に「駅をたくさん利用するのは高校生」という視点で、地元の氷見高校にも協力を得て若い世代の声を集める努力もしています。氷見高校には「HIMI学」という時間があり、その中で「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の策定に向けた高校生どうしのディスカッションも行われていました。

支える職員さんの育成が鍵。ファシリテーター研修は、さらに議論の「見える化」をするためのグラフィック採用(グラフィックファシリテーションとか言われています)にも研修を実施し、「対話できる市政」を支える人材を増やすための取組みも進んでいました。ちなみに市民サイドのファシリテーター育成にも取り組んでいて、ここには中学生なども参加しているようでした。

さて、フューチャーセンター庁舎ですが・・・。

これは市長室。基本的にはガラス張りで中が見えます。入り口には「ハットリ君」(氷見市は藤子不二雄Aさんの出生地)。

(ちなみに、「ハットリ君とその仲間たちに会える街・氷見」です)

これ、庁舎2階です。体育館は天井が高く、熱効率が悪い。そのために曲面天井にして工夫。それから、自然光も最大限活かしたエコ視点も(こちらのほうが見やすい)。先の市長室も、このフロアと同じ場所にあり、市長室にどんな人が訪問しているのかなど、みんなにも見えます。

センターと呼ばれる会議室。

これ吹き抜けになっています。つまり、声は外に聞こえてしまいますね・・・・。ここ、見た目ではわからないのですが、壁もありません。

お洒落な囲いのある空間と言う感じ。

体育館の床。

こんな感じで打ち合わせなどをしていて・・・。雑音とか気にならないのかしら?と思ったのですが、「慣れた」とのこと。


 これは市民との協働スペースとして設けられた場所。会議室としても活用できるようです。もっと他にも写真がありますがこのくらいに。

庁舎前で集合写真。そして、その後、漁港まで歩いてみると「氷見高校」の船。

それから、氷見市に任期付職員として3年間採用され、今年の4月から本採用となったファシリテーターとして対話する市政の中心となってきた谷内さんにもお会いして、意見交換などする時間もいただきました。まるで多摩市にいらしたことがあるのかと思うほどなのですが・・・「市民の意見をたくさん聞いて聞いて聞きすぎて、決めきれなくなる恐れ」が指摘されました(これ一般論として)。ここ重要・・・結局、最後に問われるのは「決断」になるので。谷内さんをご紹介いただいた府中から能登半島に移住された太田さんとも再会でき(太田さんの「ぶなの森」)、ご縁に感謝した氷見市の夜でもありました。

対話を重ねていく時、単に「場を設ければいい」というわけではなく、重要なのは「場のデザイン」なんですよね。市民参加をすればいい・・・って言葉では簡単に言うけれど、全く簡単なことではないのです。市民参加の目的や方向性等含めて持ち合わせておかないと、結局ぐちゃぐちゃになって終わるだけ。個人的には谷内さんとお話しをして、確認できたことでした♪