「助けてほしい」が言える場所を。

今日はオンラインにて「本を活かしたまちづくり戦略 未来の読書のカタチ」を受講してから、新宿歌舞伎町へ。

「図書館は大切だけれど、ただ本を貸し出ししていればいい」というわけでなく、そこでどんな活動が行われているのか…それも、地域事情に則した取り組みができるのかどうか…地域のことをどれだけ真剣に考え、地域のことを研究し、そのうえで資料選びを行うこと、さらには市民に届く情報提供する努力と工夫に情熱を注ぐことができるか…そこに必要なのは「人材」…図書館で仕事をする「ヒト」にかかっているんだなあと再認識。単に図書を貸出するだけが図書館の機能ではないことを意識し、「読書文化」なるものをどんな風にまちに広げていこうとするのか問われることを学んだのでした。「読書とは何か」についても考えさせられるひとときでした。娯楽的読書なのか、機能的読書なのか。私の場合は両方がオーバーラップしていて、明確に区分けできるとも思えませんが、自分の立ち位置を確認したり、問い直すために読み進めることが好きですね。

さて、夜の歌舞伎町に出かけた理由とは…「夜の見回り活動」についてお話を伺うためでした。コロナ禍でしかも夜に都心への外出は1年以上ぶり…ですし、緊張してドキドキ。新宿駅の構内がなんか、随分変わっていて驚いた・・・。

ということで、今日お話を伺ったのはNPO法人レスキュー・ハブの坂本新さんです。若手市議会議員の会の有志で集まりました。まずは、活動にまつわるエピソードなどを伺ってから、実際に坂本さんに同行して大久保公園をはじめとする歌舞伎町の一角をパトロールというか、見回り。坂本さんの活動の内容は私が書かずとも…記事にて。まさに、その活動の様子を、実際に足を運んで目の当たりにしていたのでした。

 

会議室での事前レクチャー。オンラインでも坂本さんのお話しを聞きたいというメンバーがいたので、質問にも丁寧に回答をしてくださり、何というかそのお人柄を感じられた一場面でもありました。

 

実際の見回り現場。坂本さんと顔見知りの方も多そうでした。いつもとは違って、私を含む同伴者5名がゾロゾロいるのには違和感があったことと思います。坂本さんはいつもどおりに、街頭に立ってスマホをいじっている女性に「最近はどう?」と…声をかけてはグッズを手渡します。性別を言ってしまうのは…と思うものの、男性が女性を支援するというのはなかなか無いですし、違った目的で声をかけられたのかと思うでしょうね。女性が女性を支援するというのは何となくわかる気がするのですが、坂本さんはかなり体格もよくて、ちらっと見ただけだと怖そうで、怒られてしまいそうな感じもあります。もちろん、受けとりを拒否される場合もあり、その場合は強制はしません。ただ、何度も何度も繰り返し声かけをしながら、まずは顔を覚えてもらい、ある時に受け取ってもらえる場合もあるようですね。一定の信頼関係を築くことに時間はかかることを心得たうえでの活動です。

最近は、ロクシタンから300本寄附していただいたというハンドジェルを配布しているそうですが、やっぱり人気があるらしい。「え、ロクシタン…」と反応してくれる人が多いのだそう。実際に、ガールズバーの前に2人組で営業していた方々に手渡すと「いいんですか、こんなのもらっちゃって」と。少し前までは昼間もSEをやっていたけれど、そっちはやめたと話していたのは、すごく若くて、スタイルもよくて、かわいい子でした。坂本さんは「お店の中にも一緒にお仕事している子がいるの?何人いるの?」と声をかけて、その方々の分まで数を渡しておられました。

グッズを渡すことではなくて、カードを渡すこと、手元に届けることが目的。

困ったときには連絡してください、相談してくださいと連絡先が記入してあるカードです。このカードの渡し方についてもようやく形ができてきたと話しをされていました。いちいちカードに何が書いてあるかなどは説明をせず、ただ、グッズにつけて渡すだけ。一度だけではカードの存在が認知されない場合も多く(カードは見ないで廃棄されてしまう)、繰り返し渡して、何かの折に‛ふと’…あるいは‛やっと’カードについて認知してもらえる場合もあるようですね。

雨上がりの大久保公園周辺…いつもよりも少ないとはいえ、周辺に男性と女性の姿。女性側に声をかけていくのですが、決して「何やってるの」とも言わず、「変わりはない?」という言葉かけで、相手の状況をそっと聞いてあげるところから。「こんなことやっていていいとは思っていない」…でも抜けることができなくて、生きるために必死にここに来ていることを否定してはいけない。本人が支援を受けたいと思わなければ、どんなにか支援をしたところで上手くいかないから…。そのとおりですよね。相手をまずは受け入れなければ始まらないこと、それから、最後までしっかりと支援し続ける覚悟が求められます。「責任を持って最後まで支援する」ということも実はとてもエネルギーのいることであって、相当の強い気持ちが無ければ、全うできないことですね。よほどの強い意志を持たなければここまで心身ともに時間を割くことができないのではないかと。坂本さんからはこれまでのエピソードを伺ったものの、それでもまだ、私には坂本さんのその強いエネルギーがどこに根差し、源があるのか、・・・どんな原体験があるのかと・・・ついつい考えてしまったのでした。支援の必要性は頭ではわかっていても、生半可な気持ちで関わってはいけないと思うと、二の足を踏んでしまう場合も多いでしょうし、実際に正直言って、私はまだそこまでの活動をする余裕はありません。もう少し余裕ができたなら、こうした活動にも関わっていきたいものです。約1時間半のどの見回り活動に同伴しながら、今の私に何ができるだろう…そして、行政は何ができるのか…ということも考えた次第です。

困り感を抱いていると思われる方たちのところに自ら飛び込み、「何かあったら、いつでも対応します」…の扉が開いていることを知らせていく活動。名刺大の小さなカードが命綱です。坂本さんは昼間は別の仕事をして生計を立てていることから、日中も両方をやりくりして対応するのにはかなりの神経を使い、そして体力もつかっておられるようでした。なにせ、連絡先については深夜1時までは受付しておられるとのこと……睡眠を削ってでもという使命感には頭が下がるばかりです。「本業は…『見回り』と言いたいところなんだけれど」と本音をポロリと漏らしておられた一言が帰路に着いてからも印象的でした。

坂本さんは、今後、歌舞伎町に近い一角で居場所を作りたいと話しておられました。今も大久保公園のところには「駆け込み寺」があります。ここを運営されている玄さんにも議員になりたての頃にお話を伺ったことがありました。朧気ながら記憶がよみがえってます。坂本さんは玄さんとの連携も模索されているようでした。

今日のキーワードも「孤立感」。

「どうせ誰も助けてくれない」「誰にも頼れない」と自分自身で自分のことを諦めている気持ちから抜け出た時、次の一歩が踏み出せるのだと考えています。たったの1回だけで心を開いて…なんてことはありえないですね。そして、改めて、「孤立感」に打ちひしがれ、「孤独感」で心が固まってしまう前の段階が重要であることも感じています。手を差し伸べるとか、支援をするとか…そんな言い方も上から目線のような気もしてきますが、「一人ではないよ」「助けてくれる人はいる」…当たり前のようにそのことを信じられるような地域や社会をつくっていきたいものです。そのために果たすべき政治の役割は大きい、そしてセーフティネットである行政の役割と責任も大きいんだよなあ…。

議員としてもできることはもちろんですが、地域の一員として、一市民としてもできることあるなと思いながら、雨上がりの夜空を見上げたのでした。