子ども未来応援支給事業への賛否。

昨日の本会議最終日で話題になったのは「子ども未来応援支給事業」。

中学3年と高校3年生世代の子どもたちにクオカードを3万円。そして、18歳以下すべての年齢の子どもたちに図書カード5千円。中学3年、高校3年生世代の子どもたちにはクオカードと図書カードと両方が支給されることとなります。新型コロナウイルス感染症対策の補正予算ということで、国からの臨時交付金に後押しをされて実施するという内容。でも、「子ども未来応援支給事業」に充てられる臨時交付金は7900万円相当、残りの2億2千万円ほどは市の一般財源から…要するに市の積立金などを取り崩しながら対応するということです。財源のやりくりは様々で、お金そのものには色がついていないわけですが、しかし、市の独自財源を投入するという決断…重たいですね。

この事業の目的は「子どもを応援する」ということにあるようです。新型コロナウイルスで修学旅行とか学校のイベントなどもなくなり、今年の思い出づくりができない…それに、中学3年生や高校3年生は進学や就職などなどいろいろと出費も伴うと思うので…ということ。

しかし、今、なぜ?…このタイミング?

そう感じる議員は少なくないというのが議会でのやり取りを聴いているとよーくわかります。私ももちろん疑問です。例えば「図書カード」。他市ではステイホーム期間中、外出もままならない…というような状況、なおかつ図書館も閉館している…そんなこともあり、親子で読書をしてほしい、本をたまには読んでほしい…というような首長の心遣い?があり、子どもたちに配布したという事例などはあります。「ああ、なるほど。」って、私はその話しを聴いたときには、「図書カードが金券ショップで換金されることはないのか?」とも思ったりしましたが、その首長なりの意図は理解できるものでした。

しかし、なぜ、今なのか?

子どもたちのところには、一人ひとり氏名が明記され、事前の案内送付とさらには簡易書留によりクオカード、図書カードが送付されることになっていますが、しかしながら、その意図やら意味が…よくわからない。議会からは「大盤振る舞い」という表現で、今回の事業のやり方に指摘があったように、捉え方見方を変えれば、単なる「バラマキ」のようにも見えますね。本当に困っている方々に目を向けてほしい、新型コロナウイルスで生活が一変し、生活再建に必死、あるいはまだまだ厳しく苦しい状況にある方々の存在を知っていれば知っているほどに、こんな風に税金を使うことへの疑義を抱かざるを得ません。

もちろん、お財布に余裕があり、余力があれば話は別ですが、しかし・・・しかし・・・しかし・・・です。お金には色がついていないとはいえ、国からの助成は今回の事業の一部に充当されるだけで、あとは、全部、多摩市独自のお財布からの支出となります。やっぱり、多摩市の財政には余裕があるのかと思えるというのか、市民には当然にそう思われるだろうとも感じます。また、余裕はないながらも「子どもたちを大切にしているまち」をアピールするための事業なのかはわかりませんが、今、目を向けていかねばならないのは生活困窮しているにもかかわらず声をあげることのできていない市民の存在であると思っていますし、その意味では行政が果たすべきセーフティネット機能を優先してほしいですし、今後のことを考えても、ますます経済状況も冷え込むことを頭に置いた対応を図っていきたいと考える私たちの会派にとっても、やっぱり・・・「???」と言わざるをえない事業でもあります。

対象年齢の子どもはうれしいことにはかわりないですよね。突然、ボーナスというか、お小遣いのように…金券が送られてきて、むしろ驚きますよね。

議会からは送付するときに添えるメッセージなどの工夫が求められたり、小中学校のの場でもこの金券配布の意図を子どもたちに伝えたり、保育園などでも伝えたり…みたいな要望もありましたが、はっきり言って、それぞれに届いたクオカードの使い道やら図書カードの使い道など、いちいち言われたくないですよね。有効に使ってほしいといっても、大人にとっての有効性を子どもに押し付けるような結果にはしたくないものです。

それ以上に私の感じる問題点と言えば…。

今回の支給事業については「業務委託を行う」ということですね。事前案内やら金券の発送などについて、市職員の業務負担を考えた結果…試算をした結果で「外部に委託する」という判断をしたそうです。

私にとってはこれこそ「えっ?!」です。

事前にヒアリングをしたところ、発送作業をする場所の確保、金券を管理して間違いなく送付するための封入作業などをはじめ、あらゆる検証をした結果らしいですが、個人的には、臨時職員さんなど短期間の雇用などを行って、間違いのないようにしっかりと発送作業などを行うほうがよっぽどいいと思います。私にはどのような試算が行われたのか、あるいは、こうした業務を実施するときの負担増の問題等直接従事をしていない分、踏み込んで「業務委託すべきではない」と言い切れない面もありますが、しかし、外部委託の費用は約2200万円。これ、郵便料金などは別になっています。

こんなタイミングで「子どもたちの未来を応援」ということで、子どもたちの未来を応援するのは、新型コロナウイルスがあってもなくても応援すべきであって、私たちはいかなる時も、その気持ちで仕事をしてきたはずです。新型コロナウイルスという特別な特異な事態と位置付けるのかもしれませんが、それにしても、こうした事業の実施については現況を冷静に分析する視点は重要だと感じます。今回の補正予算については、その他にも新型コロナウイルス感染症対策として盛り込まれている予算もあったため、否決はしなかったものの、考えさせられるものです。

 

さて、「同調圧力」…読み始めたのですけれど、前評判どおりですね。「まさか、反対しないようね」みたいな空気圧、感じること多い今日この頃ですから。

 

いずれにせよ、「子ども未来応援支給事業」への疑義は大きく、補正予算については附帯決議が提出され、議決されています。でも、私たちの会派と共産党の会派は反対していて、全会一致ではない付帯決議というのもまた、多摩市議会には珍しいことなのですが。

付帯決議の内容は「本年2月からの日夜を問わない新型感染症への理事者・職員対応には改めて深い敬意を表するものであるが、令和3年度予算の編成においては大幅な歳入減が見込まれる。

財政調整基金を含めた各種基金の取り崩しが見込まれる中で、新型感染症対策においては多摩市の一般財源投入を慎重に検討し、あらゆる交付金や補助をこれまで以上に活用すること」

というもの。「一般財源の投入について慎重に検討し」…というのは、「新型感染症対策において」のみならず、その他の事業についても同じことだと思うんだけどなあ。

 

今日から10月。新型感染症の終息はまだまだ見えない。市内での感染の広がりが見えつつあるそうで…公共施設の利用についても改めて検討がされていくかもしれません。

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