新庁舎建設について府中市でヒアリング

今日は会派フェアな市政のメンバーでお隣は府中市での調査活動。

老朽化、狭あい化などなど(どこかでも聞いたことがあるな)…昭和34年(そろそろ西暦を使おうか。1959年)に建築された最も古い庁舎は耐震性能は不足していて、大きな地震には当然耐えることができないだろう…というレベル。ここを耐震化するよりも、とにかく新庁舎建設のプロジェクトを進めていくことだとの結論をもとに取り組んできたようです。

なので…耐震化の工事は一切行っていないとのこと。多摩市の場合には耐震性能が不足しているからと補強工事を実施し、設備などについてもまだあと少しは使わなければならないから…と更新工事を実施しました。もちろんそこには億単位の税金が使われています。でも、府中市の場合は「何とか我慢して」というのか「どうにか持ち堪えさせて」というのか…更新工事には税金を使わず、新庁舎建設を加速させていったようです。確かに手狭で、そして庁内は電気の明るさも昭和時代を感じさせるわけですが、私は「いかにも市役所」という懐かしさのある庁舎で、嫌いな雰囲気ではありませんでした。

さて、いよいよ着工するのは令和3年度以降になるとのことですが、今日に至るまでの経過をヒアリングする中で最も感心したのは、「より多くの市民に」を心がけた情報提供への工夫ですね。公開プレゼンテーションによる事業者決定、市民説明会だけでなく市内各所で開催されるイベントに赴いたキャラバン隊、節目ごとの広報やかわら版の発行など、大規模で50年、60年に1度のプロジェクトであるからこそ、できるだけ丁寧な工程を重ねようと努力されていることが伝わりました。

議会とのやり取りについては、もちろん議会も特別委員会を設置して対応していますが、特筆すべきは「議会エリア」については議会内での検討会による協議を重ねてきたということですね。おそらく、ここは府中市だけでなく、他市の場合もきっと「議会エリア」は議会サイドで議論しているのではないかと思われますし、多摩市でも庁舎建て替えが話題になっていることを思えば、議会としても議論に参加していく心づもりが必要なんだなと感じられました。

担当者の方は「土地の取得に時間がかかった分、合意形成を丁寧に重ねることができたと思う。」と謙遜されていましたが、決してそうではないだろう…と思えたのは、会議室の規模(サイズ)や必要数などを把握するために一年間の各部署の会議開催状況などの実態調査を行ったり、実際に新庁舎の窓口空間をより快適な状況にするためカウンターやロビーチェアなど市民だけなく職員にも参加してもらったモニタリングを実施したり…一大プロジェクトだからこそ、現況把握などを含めてより慎重に丁寧にと心がけた取組みがなされていたからですね。執務室についても環境調査を行っているというのもなるほどなと思います。そして、何よりもプロポーザル方式による業者の選定などについても、選定基準の公開なども含めた情報発信にも気配りされていると思います。

今日のヒアリング。なんと言っても、説明してくれた職員の方が開口一番「経験したことのないプロジェクト」であり、そこに関わることへの緊張感が感じられ、そして、先にも書いた通り「50年60年に1度のことであるからこそ、より公平公正に進めていかなければならない」と強調されていたことが印象にのこりました。だからこそ、「顔の見える取組みにしていかねばならない」とその必要性が語られました。その考えに基づいた合意形成過程を積み上げ、より多くの情報発信、積極的な情報公開への努力…になっているのではないでしょうか。

しかし、府中市はこうした一大プロジェクトを見込んで庁舎建設のための基金も積み立てされてきたようです。なので、PFI手法なども検討したとは言うものの、基金を活用し、起債すれば十分に対応でき、従来手法(PFIなどをやらなくていい)で進めていくとの判断もわりとスピーディにできたそう。ちなみに約80億円くらいの基金はあるそうです(すでに土地取得のために取り崩しもしている)。

さて、わが市は?…と目を転じてみれば、庁舎リニューアルは優先度高い課題であるはずなのに、遅々として進まず。以前から「平成41年度から新庁舎を稼働させる」ということだけは聞いていますが、まだ、庁舎の場所問題をどうするか?についても結論はない。庁舎の位置を変更、つまりは場所移転するともなれば、議会の議決も必要になります。庁舎というのは、「まちの顔」にもなり、まちの発展をけん引する場所になっていくのかもしれませんね。府中市の場合にも、市民が集まれる、利用できるようなスペースも確保し、休日でもにぎわう場所にしていくような設計になる予定ですし、日常的に市役所に人が集まってくるような仕掛けも含めて、環境が整備される予定です。

学べたことがたくさんあり、収穫の多いヒアリングになりました。多摩市の庁舎建て替え問題も悠長に構えていられないはず。引き続き、他市事例なども調査しつつ、「その時、市議会は?」という視点からどう対応するか、取り組むことができるかを考えていきたいと思います。