実際に足を運ぶからわかる。

群馬県太田市の「太田市美術館・図書館」に行ってきました。「よかったら、見に行くと参考になることもあると思う。」と知人よりアドバイスをいただいたので、早速。一人で行くのもなあ…と思ったので、会派のメンバーも引き連れて訪問してきました。「美術館・図書館」というかたちで一体でなくとも、多摩中央公園にパルテノン多摩があって、立派な中央図書館も建設中ですから、これからの運営の参考になるかなあと。

特にアポイントメントもなく足を運んだのですが、たまたま館長さんがいらっしゃり、少しだけお話を伺うこともできました。ラッキー。「博物館法」に基づく施設と言うことで、「美術館・図書館」と名称がついているものの、図書館については、既存の図書館とは区別されて…「別の施設」というか、扱いは別の図書館であることがわかり、いわゆる利用者カードも別になっているとのこと。ここ、今回の見学で最も肝心なポイントでした。

今はインターネットでもかなりの情報を拾うこともでき、施設の概要、コンセプトなどはホームページでも見ることはできますが、やっぱり、実際に足を運んで、感じることって大きい。

「美術館・図書館」はアート、芸術に軸足をおき、書籍が揃えられていること。また、絵本・児童書は世界各国の書籍も取り揃え、子育て世帯、親子での利用に力を入れていること、また、ブラウジングコーナーをはじめとして、とにかくゆったりとした空間で、利用者が思い思いに時間を過ごせ、そこに身を置いているだけで完成が磨かれていきそうな雰囲気。公共施設としてはもしかすると「無駄な空間が多すぎる」になってしまうのかもしれませんが、多すぎる余白、空間の心地よさを満喫できる設計で、何時間でも滞在できる場所だと感じたのでした。「第三の居場所」というのか、「心地よさ」を感じ、特段、目的を持たずとも、ふらりと立ち寄りたくなる場所でした。

開館と同時に次々と利用者が訪れる感じ。「ボーッとして過ごす」ことは人間にとって必要不可欠で大切なことだと思っているのですが、この場所ではそれが叶えられる感じもありました。来館しているみなさんの様子、利用者の姿を見ることができるというのが何よりも一番の収穫とも言えますね。子どもたちの楽しんでる姿が一番物語っている気がしますし、若い世代が思い思いに雑誌を手に取ったり、新聞を読んでいる姿とか…カフェを利用しながら、お仕事している姿とか…「実際」ってやっぱり現場にあるなあと。

既存の公共施設にはない「居心地の良さ」が実現できている気がするのは、この施設を後にして、既存の「太田市立図書館」も見てきたからわかることかもしれません。太田市立図書館は、多摩市の図書館とも相通ずる雰囲気で、普通にというか一般的な図書館で、「美術館・図書館」とは別の空気感。確かに区別されているというのか、「別々」を感じさせられるものでした。「美術館・図書館」はもともと駅前のにぎわい、ひととの交流、コミュニケーションを重視している場所でもあって、既存の図書館と差別化されていくのは自然なことかもしれませんね。

ということで、現在、多摩市で建設が進められている中央図書館なるものは…「美術館・図書館」と既存の「図書館」とを合体させたような施設運営をしていこうとしているので、そのビジョンは正直…壮大とも言えます。既存の「図書館」の枠組みに固執した運営ではもったいないくらいに先行投資をしているとも言えますので、それこそ、運営体制を含め、「既存意識」に捉われずに新しいものを取り入れることができるか‥‥ここ、最も問われるでしょうね。「太田市美術館・図書館」が小布施町の図書館に学び、「まちじゅう図書館」の取組みも進めていて、なるほど…業務の役割分担…という点にも注目。「まちづくり」「コミュニティづくり」にコミットするのは…という視点で小布施町と考え方を違えているところもまた面白い。

 

「知の地域創造」…言葉にするのは簡単だなあとしみじみと感じつつ、居心地の良さ、「創造するために必要な空間」の在り方も学べたひとときでした。「知の地域創造」というのは「図書館の中」だけで行われるものではないでしょうし。

 

そして、帰り道。コロナ禍でもあって、移動距離その他を考えると…とレンタカーで出かけたので、せっかくの機会を活かすべく…飯能市にある「トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園」に立ち寄ってきました。公園づくりのコンセプトもまた大切であって、すごくわかりやすいですよね…トーベ・ヤンソン…と言えばムーミンですから。ムーミンの世界観が表現されている公園とも言えます。公園にある「館」は、経済状況がまだ良い時代に完成したんだろうなあ…を感じさせられるしっかりした建物。

暑すぎて、長時間の滞在は無理でしたが、園内を一周歩いてきました。テーマパークのように、ムーミンのキャラクターが利用者をお迎えするとか、案内板にキャラクターが描かれるとか‥‥そんなことは一切ない場所。でも、「ムーミンの作者さんだよね、トーベ・ヤンソンって」と思い浮かべた、そのイメージ、世界観をしっかり味わうことができて、とても楽しい。リピーターなんだろうなあ…と思われる親子の会話が聞こえてきましたが、子どもにとってはちょっと特別感のある公園なのでしょう。やっぱり、「現場」でしかわからないことがありますね。

 

ちなみに、「太田市美術館・図書館」、「トーベヤンソンあけぼの子どもの森公園」…ともに指定管理者とか民間委託とかではなく、「直営」になっていて、職員さんたちがその維持管理に努力をされているんだなあ…という姿も目の当たりにできたのは本当に良かった。たぶん、どちらにしても、相当な努力なくして維持することは不可能だろう…と直感としても思いましたし。そしてまた、今後も維持し続けることも難しいとも感じました。

 

実際に足を運ぶ…やっぱり大事なことだなと思います。そしてまた、一人で行くのではなく、会派のメンバーも一緒だと見方捉え方に複数の視点が重なるので「分厚く」なるなあと。独りよがりにならず、考えを深めることができますね。とても良い見学ができて、何より!…と思える一日でした。