「ゼロ・ウェイスト」をめざす。

生活環境常任委員会の行政視察。徳島駅から…有償ボランティアタクシーに乗って、約1時間。徳島県でも最も小さな上勝町へ行ってきました。

委員会で設定したのは「廃プラスチックをいかに減らすのか?」というテーマ。それに関連し、人口は約1500人でしかも山間部という多摩市とは似ても似つかないような町に行くなんて…という声もあったように聞いていますが、日本で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」をしたところ。日本全国というよりも、世界中からも注目されている場所であって、世界各地からの視察も絶えない…そして、「ゼロ・ウェイスト」がまちのブランドにもなっていると伺ったくらいに、がんばっているところ。町役場の限られた職員さんで対応するのもきっと一苦労だと思われます。

見に行く価値があると判断して足を運んできました。しかし、通常であれば、行政視察は2カ所ほどに足を運び、学んでくるわけですが、交通アクセスも良好ではない山間地域…そこで、今回は上勝町と言えば有名な「葉っぱビジネス」のこと、あわせて「有償ボランティアタクシー」のことについてもヒアリングをしてきました。

ゼロ・ウェイストのことについては、もともとは山に大きな穴を掘って、「野焼き」をしていたこと。その穴に町民の皆さんがごみを捨てに来ていたという時代の話からはじまり、現在45分別まで行っていること。ごみ収集車は1台も走っておらず、町民の方が「リサイクル拠点」まで自ら「廃棄物」を運び、自ら仕分けをしていくことやその場がコミュニケーションの場にもなっていること(来た人どうしやリサイクルステーションにいる職員さんと)、高齢者などリサイクル拠点に自力で来ることができない方々のための2か月に1度の収集が安否確認の機会やふれあいの機会になっていることなどなど伺うことができました。

  

自ら廃棄したものの行方、どこに引き取られていくのかはもちろんのこと、引き取られるときに「収入」になるのか、「支出」になるのかも一目でわかるように工夫されていました。例えば「金属製キャップ」のところには「入 キログラム120円」となっており、「徳島市 アルミ原料」という風に行先とどう再利用されていくのかが明示されているのです。ちなみに「プラスチック製キャップ」は「出 キログラム0.49円」「大分県(容リ協会) 製鉄の還元剤」となっていたりします。

「マジック・ボールペン」「カミソリ・カッター」そして「ハブラシ」などなど、町役場は「リサイクルしてもらえる先」を探してくるところがお仕事。ハブラシはライオンの回収で有名ですね。また花王の「リサイクリエーション」にも取り組んでいます。とにかく徹底的にリサイクルできるものはリサイクルする…現在のリサイクル率は79%くらいとのお話でした。

それ以上のところ、やはり20%くらいはどうしても焼却処分せざるを得ないものもあるということで、「蛇口のほうをしめなければいけない」とおっしゃっていました。私たちは容器包装類からfを含めた商品価格を負担しているんですよね…と思うとき、「できるだけゴミになるものを生み出さない」ということに意識を向けていく必要がありますね。わかっているのですが、ここにもっともっと働きかけをする必要性、分別をしてもしても、それでも「どうしても焼却…」という現実を目の当たりにしているからこそ、言葉にさらに実感がこもっている気がしました。

ちなみに、生ごみについては各家庭でリサイクル。生ごみ処理機によって対応しているとのこと。ですので、リサイクルステーションには「ごみ臭さ」がほとんどありません。多摩市で上勝町のことをそのまま取り入れるわけにはいかないわけですが、もともと、ゴミ収集が行われていなかったという歴史があったとはいえ、「ただ、廃棄するだけ。ただ、分別するだけ。」ではない…町民の皆さんが日常の暮らしの中でコスト意識や実際の再資源化についても自然と意識が向き、「ごみ」を考えられるようになっている良いシステムだなと思います。多摩市でももう少し取り入れることができるとよいなあと思うのです。「有料指定袋を買えばいい」で終わってしまってはいけない。

さて、今、「ゼロ・ウェイスト認証」ということにも取り組んでいるとの話だったので、ちょっとおしゃれなお店にも足を運んできました。建築そのものもユニークで廃材を存分に使用しています。

 

私たちは地元産ゆこうを使ったソフトドリンクをおいしくいただき、その際には紙ストローに「おおっ!」となりました。スーパーマーケットなどでは難しそうですが、地元のお店ならではの「量り売り」などにも取り組んでいるようです。宿泊したホテルも「ゼロ・ウェイスト認証」がされているホテルでした。

台風19号の影響を心配しました…とお気遣いもいただきましたが、行った日にはわざわざ上勝町の森副町長さんが歓迎のためにいらしてくださいました。上勝町の視察はすべてパンゲアフィールドさんが引き受けておられ(視察メニュー)、いわゆる、議会事務局どうしのやり取りなどもなく、いつもとはちょっと違った雰囲気だったのですが、副町長さんがいらしてくださり「宿泊していただけるのは本当にありがたいです。」と感謝の言葉のいただき恐縮でした。

副町長さんからは「葉っぱビジネスとゼロ・ウェイストの2本柱」に加えて、「教育にも力を入れていれている。町営の塾を開いている。」というお話も伺うことができました。そしてまた、「上勝町持続可能な美しいまちづくり基本条例」を制定し、55ある集落がそれぞれに地域課題の解決に取り組んでいるとのお話でした。町が町民主体で実施する公的な事業に上限100万円で補助金を出しているという話でした。道路の修繕とか、バス停に屋根をつけるとか…そんなことを町民の皆さん自らで行っているとの話でした。

2040年に人口が約900人にまで減少するという予測に対し、何とか1000人は死守したいと頑張っている町。そして、その町の頑張りに魅力を感じている若い世代が移住し、葉っぱビジネスやゼロ・ウェイストなどの取り組みの担い手にもなっているようにも感じました。実際に、視察対応してくださった方々はみなさんお若かった!

これは人口ピラミッドなのですが、少子高齢化が一目見て捉えることができる。町民で一番多いのは80歳代以上なのです。

でも、「高齢化を決して悲観はしていない」ということで、前向きな姿勢で取り組んでいく秘訣…ここを探り切れなかったなとは思っています。ただし、「葉っぱビジネス」が町の人たちの意識や価値観に大きな影響をもたらしたのは事実。「やればできる」という意識が、「ゼロ・ウエィスト」宣言やその取組みにもつながっているのではないかな?と思った次第です。

今、新しいリサイクルセンターを建設中。そこには宿泊施設やコインランドリーなども併設し、複合機能のある拠点にしていく構想です。ちょっと興味があるけれど、気軽に行けるという場所ではないのが残念。


(上から見ると「?」の形になっているそう。ここに来れば「リサイクルの疑問」が解決するよ!という意味を込めて)

個人的にはいろいろと感じること、学ぶことの多い視察になったように感じております。多摩市もまだまだこれから、努力できることはあるな!と思いますし、努力できることを見つけていくことも大事ですね。