« ひと休み。 | メイン | あっという間に時間が過ぎて。 »

2009年01月29日

「なかまの樹」を訪問しました。

 昨年7月に総合福祉センター内に開所した重症心身障がい者通所施設「なかまの樹」に伺いました。これは東京都の事業を多摩市が受託して、さらに民間事業者に委託をし運営されています。都内では6番目に開所したということですが、単独で開所したところは多摩市が初めてではないかというお話でした。他の場所では他の事業と「併設」で運営されているのだそうです。

 施設は指導員と看護師の2名のスタッフ体制で、島田療育センターから作業療法士、理学療法士を派遣してもらいながら、対応をしているのだとか。定員は5名ですが、現在は2名が医療的なケアを受けながら日々の活動に取り組んでいます。

 今日の活動メニューは午前中は「スプラウトの栽培」で午後は「絵画」というもの。訪問したのは午前中だったので「スプラウト栽培」の作業を見ることができました。痰の吸引などをしながら、持っている力で行う作業・・・・・「自分にあったペース」で進む作業をスタッフの方が励まし、じっと見守っている姿がありました。
 
 とにかく医療的なケアが欠かせないため、そして体調変化が突然に起こるかもしれないということでスタッフに求められるスキルは相当なものだろうなあと・・・・それは素人目にも伝わってくるものです。コミュニケーションをとることも簡単ではない彼らの気持ちをゆったりと受け止める・・・・スタッフと通所者の間の信頼関係がしっかりと育まれていることがわかります。
 途中、通所者のご家族の方にもお会いできたのですが「本当に感謝をしている。ありがたい。」ということを繰り返しおっしゃっていました。ここに通うようになり生活リズムが整うことで、体調も安定し風邪もひかなくなったこと、他の施設にも見学や体験に行ったけれど「子どもが合わないと思っている、行きたくない場所には行かせられないし、この子はずっと家にいなければならないのか・・・・」と思っていたことから考えると「夢みたい」となるのでしょうね。そして、「他市に引っ越しをすることも真剣に考えたこともある。」とのお話もされていました。「ほんの少しの力でも、ここに来て、少しずつ引き出してもらっていることがうれしい。」この施設に通っての成長もご家族には感じられるのかもしれませんね。
 
 施設設備的には・・・・もともとここは「事務所スペース」であった場所なので水回りその他では不自由をしているようです。特に排泄への対応は少し大変そうです。総合福祉センターの他の利用者の方々との共通設備になってしまうので、そこには色々と難しい問題もあるような気がしました。
 この「なかまの樹」の自慢は「畳プラットホーム」と呼ばれている一角。ここは床から50センチくらいのところにある畳スペースで通所生たちが横になれる場所でもあります。通所生たちが横になったときにでもスタッフと同じ目線になれるようにと床面が高くなっている特別注文品。「なるほど」と思いました。

 さて、一番難しいのは「食事」。食事も一人ひとりの障害に寄り添った対応が必要なので、今のところは「お弁当」で、通所生がご自宅から持参している状況です。養護学校で以前に「給食」の話を伺ったことがありますが、それはそれは一人ひとりにきめ細かな対応をしていることを思い出しました。「一人ひとりに」・・・・つまり、そこ必要なのは「人員」。きめ細かな対応にはそれだけの人手が必要です。でも、人手を確保するには欠かせないのが現実的には「人件費」で、それを捻出していくことがなかなか厳しく難しい台所事情も抱えているのが実際のところ。障害者自立支援法で「応益負担」になってから、施設の運営存続がシビアになっている現状があります。「なかまの樹」の場合も「できるだけのことはしていきたい」という運営者側の思いが実現していけるように、そして障害があっても地域生活を豊かに送っていけるようにするためのサポート体制が必要です。


 「行政も財政的には厳しいからね、あまり無理は言えないんだけれど。」・・・と運営事業者の方がおっしゃっていました。

 「自分のやりたいなって思っていることができる。」・・・・通所生の一人は「なかまの樹」をこのように表現しています。地域で活動できる場所に選択肢が狭く、「自分のあっている場所」を見つけることがどれほど大変なことか・・・・。なのでここが本当に価値ある場所なのでしょうね。「なかまの樹」という地域活動に新たな選択肢が一つ増えたことの意味の大きさを思わずにはいられません。

 なので、ご家族の方の「多摩市には本当に感謝をしている。」という繰り返しのお言葉になるのでしょうね。重度の障害をお持ちの方が地域で暮らすための資源はまだまだ不十分であることを感じますし、どう取り組んでいくことができるのかを考えさせられた訪問でした。

投稿者 hisaka : 2009年01月29日

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
/1918