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2008年10月28日

共に働くの実践を!「チャレンジドオフィスちば」

 厚生産業常任委員会のメンバーが千葉県の「チャレンジドオフィスちば」に視察に行くとのことで・・・・・委員会外の議員への呼びかけもあったので参加をしました。視察といっても参加者が政務調査費を使用しての視察だったので結果的には「議員有志」による視察という性格?位置づけの視察となりました。聞くところによると、「県」への視察って公式的には難しかったのか、「委員会視察」にはならなかったようですね。


 というわけで、おかげさまで私も参加できたのでよかった♪


 「チャレンジドオフィスちば」の取組みは「行政(公共)サービス等における障害者就労のあり方に関する研究」に始まります。いわゆる障害者の雇用といっても身体障害者の雇用はしているけれど、知的障害者や精神障害者の雇用はなかなか進んでいかないというところが問題意識の原点。県庁でも障害者の法定雇用率は目標に達しているものの雇用しているのは身体障害者のみ(ってこれは千葉県に限らず、全国自治体に共通していると思うし、民間事業者についても同様だと思われます。)。それでは示しがつかない!と奮起してスタートしたようです。もともと本格的な研究に取組む以前から、知的障害者の雇用促進ということで2004年に2名、2005年と2006年に1名ずつの当事者の雇用を行っていました。そこには、知的障害者の雇用促進を民間事業者に求める行政が実践してなければ説得性がないだろう・・・・という管理職の判断があったようです(極めて良識的!)。そこがベースになり、改めて実践段階にと進めていくために2006年に上記の研究へ・・・・・・「障害者モデル就労」のプランづくりを行い、2007年6月に「チャレンジドオフィスちば」の開設にたどりつきます。


 オフィスの定員は5名。オフィスマネージャー(再雇用職員)がコーディネーターになり、5名それぞれのスケジュールと作業内容の設定などを行い、日々の業務を見守っています。5名は嘱託職員として雇用されていて午前9時から午後4時まで、休憩時間1時間を除く勤務です。嘱託職員なので雇用契約は1年ごとで、更新は2回まで。それ以降はステップアップという形で、民間企業などへの再就職をフォローアップしていくシステム(というかモデル)です。既に昨年~今年度にかけて、2名が民間企業に再就職していったとの話です。知的障害者は働くことに何らかの課題を抱えている場合が少なくありません。「チャレンジドオフィスちば」ではまさに訓練・支援により課題を克服し、次の段階へのレベルアップを目指すことが使命の一つ。実際に雇用されている知的障害者を全面的にバックアップしているのは「障害者就業・生活支援センター」で、「チャレンジドオフィスちば」の役割は知的障害者の就労支援の一角を担っていることとなります。
 なので、今日もオフィスにはジョブコーチ(障害者就業・生活支援センター)の方が働く場に立会い、働く姿を離れた場所から見守る姿がありました。オフィスではマネージャーと県の人事担当者とジョブコーチの方との連携で5名のフォローを進めている様子でしたが、やはりジョブコーチの方の果たす役割が大きいようですね。ジョブコーチの方にアドバイスを適宜もらいながら、5名それぞれの個性を理解し、必要な支援を行っている様子(声かけの仕方、業務の手助けの仕方などなど)でした。

 5名の日常業務は文書の集配、封入作業、コピーやシュレッダー処理、給茶機の清掃、ごみの回収や簡単なパソコンの入力作業などなど・・・・季節モノの仕事もあれば、定期的な仕事もあり、それらの組み合わせで進んでいきます。「仕事はとても楽しい」「嫌な仕事はない」・・・・ちょうど、私たちがオフィスを訪問したときには封入作業中でした。直接お尋ねしたところ、小さな声で答えてくださいました♪それぞれの役割分担で、封筒にはんこを押している職員、封入文書を3つ折作業をしている職員、その文書を封筒に入れている職員、そしてテープで封をしている職員の姿がありました。みんなで一斉に同じ作業をすることもあるようですが、それぞれ役割分担があるというのもまたいいですね♪責任感が味わえそうです。
 ちなみに報酬は千葉県の最低賃金(732円)をベースにしているとか。最終的には民間企業などへの就労につなげていくことが目的なので、「県で働いていたときは賃金は高かったのに、仕事が楽だった」ということを避けるためとの説明でした。なので月額は9万4千円(今年度実績)。


 それにしても、とてもいい雰囲気のオフィス。みんながマイペースで作業をしていました(見学者がいたから余所行きだったかな?ごめんなさい)。
 「それだけ地域に雇用の場がないということの現われだと思う。」とマネージャーの方はおっしゃっていましたが、中には1時間45分もかけて県庁まで通勤している職員さんもおられるとか!(多摩から千葉県庁まで行くのとほぼ同じくらいの時間?!)

 彼らのこなしている業務は「できる業務・できそうな業務」を全庁をあげてそれぞれの部局が切り出していく作業が必要になりますが、実はそれらの中には「職員が残業でやっていた業務」も多かったとか。ですので残業代の削減にも寄与できている部分もあるのだとか。統計までは出していないそうですが、実際にはそのような業務が見受けられるというのが人事担当者の「ここだけの話」・・・。


 なんて・・・・公表してしまいましたが、どこの自治体にも「できる仕事はあるはず!」ということなんです。例えば組織改正などで部署などの名称が変われば、パンフレットなどに部署名の訂正シールを貼る作業なんかが発生したりするでしょうし、封入作業などもあるでしょうし・・・・。やれる仕事はたくさん眠っているとの話でした。(でも、多摩市では封入作業や宛名シール貼りのために正規職員が残業をするということは少ないようにも思いますが。実際のところは調査してみないといけないかも。)


 だから多摩市でも千葉県同様の取組みが「できないはずはない!」のですね。今日一緒に行ったメンバーそれぞれに同様の感想を抱いたのではないかと思います。ただ、ジョブコーチや再就職先となる民間企業の開拓などなど周辺の部分での体制づくりを優先しなければ実を結んでいかない気もしましたが・・・・。
 


 
 さてさて、この事業のもう一つの使命はやはり「一緒に働く環境を作る」ということ。県職員そのものの意識改革があります。実際に障害者と共に仕事をすることへの不安感などが払拭されつつあるなど、少しずつだとは思いますが、職員の障害者に対する理解が広がっているようです。「シュレッダーはとても危険だから、誰かが見ていないと不安。」とこぼしていた職員も実際の働く姿を見れば「一人でもできるんだ!」と体感してくれる。その実感こそが何にも変え難いものに。


 多摩市でもできたらいいなあ!やっぱり、民間事業者に求める前に行政自らがチャレンジしていかなければ!できないとしたらその理由がどこにあるのかを分析してみることが必要ですね。そこは厚生産業常任委員会のメンバーに委ねましょう。せっかくの取組みを多摩市の実践につなげるための処方箋づくりができたらいいなって思います。


 何だかとても印象的だったこと。オフィスを後にする際に「ありがとうございました」と去りゆく私たち一行の背中に向けて、作業をしていた職員の方がとっても大きな声で「おつかれさまでした」と言ってくださったのですね。それが何だかすがすがしくて新鮮でした。市役所の中で聞いたことのないような明るくて大きくてさわやかな声で、ドキッとしました。

投稿者 hisaka : 2008年10月28日

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