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2006年08月28日

すくらむ21(川崎市男女共同参画センター)

 今日は9月定例会で予定している女性センターに対する一般質問の準備の一貫として川崎市を訪問しました。午前中は市役所に行き、男女共同参画室の担当職員の方に話を伺い、その後、この視察の一番の目的である「すくらむ21」に足を運びました。

 実はこの施設も・・・今年の4月から指定管理者による運営が始まりました。しかも・・・運営をしているのが東京電力の関連会社「TEPCOパブリックサービス」(詳細はこちら「事業概要」を参照)ということで、何となく・・・というか、ほとんど男女平等施策に縁遠そうな企業体。しかし、川崎市は将来性を期待して「TEPCO」さんを指定しました。
 これは個人的な感想ですが、例えば「すくらむ21」のホームページを見てみても「お役所臭さ」が一掃されている印象を受けました。

 
 実際に指定管理者による運営について行政の担当者に話しを聞いたところ、「正直言って、まだ始まったばかりなので。」というのが現状のようです。川崎市の場合には「相談事業」も指定管理者にお任せしているところには少々不安を感じます。今のところはまだ目立った問題は生じていないようですが、行政の他部門との連携や警察など他機関との連携等も必要になってくるのが相談事業だと思うので、指定管理者にそこまで任せてしまってもいいのかどうか今後議論の余地はありそうです。
 

 それから、もう一つはノウハウの蓄積ということです。当然ながら、今後は「すくらむ21」に関する運営全般面でのノウハウを取得し積み重ねていくのはTEPCOさんです。当面は5年契約ですが、5年後以降もTEPCOさんが運営事業体として継続するかどうか・・・見通しがあるとは言えません。当然ながら、TEPCOさんも採算が合わないなど判断すれば撤退を余儀なくされる場合があるでしょう。・・・・行政は継続して欲しいと願ったとしてもTEPCOさんには民間事業者としての考えまたもあるわけです。その時、行政はどうするのでしょうか?ノウハウの蓄積が0(ゼロ)になってしまった空白の5年間を埋めるのは相当きついと思われます。
 これは「すくらむ21」に限らず言えることですが、指定管理者制度を導入するということは決して行政が身軽になるというものではありません。例えば「すくらむ21」は、公営駐輪場や駐車場の管理とは異なり、特に「女性施策推進」という難しいミッションが与えられている施設です。採算ベースで切り詰め切り詰め、コスト削減だけに偏重してしまうことで、最悪の事態が訪れるでしょう。つまり、5年後以降の施設の担い手が不存在という場合も想定されるということです。
 要するに、指定管理者制度を導入に対する行政の構えが一つ大きな問題になってきます。コスト削減だけに囚われた民間センスの導入により、行政は痛い目にあうかもしれないのです。しかし、今のところこの部分についてはあまり語られていません。(きっと、「痛い目にはあわない」ということが前提だからだと思います。)
 実際のところ、「すくらむ21」の場合も‘トントン’の運営で進んでいるのが実態です。


 では、なぜ「TEPCO」が指定管理者を希望したのか。ここには男女共同参画の視点を企業内に取り入れていきたいと考える「TEPCO」側の積極的な理由が存在します。そこで運営スタッフの一部には、これまで「すくらむ21」の運営にあたっていた財団の職員を受入れ(もちろん本人同意の上で任用替え)、そしてまた館長(もともと非常勤)もそのまま継続し、TEPCOにノウハウがない部分にもしかるべき対応を図っています。その上で指定管理者のメリットが生きているわけです。
 最も活かされているメリットというのは、館長さんが実感を込めて話をしてくれたのですが、「意思決定がスピーディ」ということ。次々と事が運び、業務の進み具合がスムーズだと言います。この点は「なるほど」と思いました。


 館長さんに曰く、「TEPCOさんのネットワークを生かしながら、新しい展開ができる可能性も広がっている」と言います。行政にノウハウが蓄積されることも大事だけれど、民間企業が「男女共同参画」に取り組んでくれることで生まれる効果に期待していると言うのです。館長さんはもともと一市民として女性問題に携わってきた方です。工学博士の肩書きも持つ素敵な女性ですが、川崎市の女性施策の変遷をずっと見つめてきた立場からの発言には納得しました。企業や事業者に「男女共同参画」の視点を浸透させることがいかに難しいのかということです。


 行政、そしてまた「すくらむ21」にも足を運んで話しを聞きましたが、今の段階では「指定管理者」の評価ができるわけではなく、良し悪しの判断が出来るわけでもありません。毎日のように行政とTEPCOのマネージャーさんが密に連絡をとりあう状態が続いていると言います。
 でも私は、実はここが施設運営を上手くやっていく秘訣になるのではないかと感じています。先にも書いたとおり、指定管理者にしたからと言って、行政の責任が軽減されるわけではないからです。そう言う点で、指定管理者側といかに風通しの良い関係性を保持できるのか・・・ただ単に毎月の業務報告を収受するだけの関係ではなく、行政と指定管理者側が常に協議を重ね、議論出来る関係があることが大事だと思います。そこに指定管理者のメリットを生かしたより良い施設運営が出来るのではないかと感じました。

 それにしても、内実はわからないわけですが、TEPCOさんのように男女共同参画に積極的に取り組もうとしている会社には好感が持てますし、何となく女性が活躍できそうで、働いてみたいなと思える職場環境がありそうですよね。そういう点で言えば、TEPCOの企業イメージはアップしますよね。このことは指定管理者になる事業者側にとってマイナスにはならないはずです。 


 

 今日の視察もまた非常に示唆に富み有意義なものとなりました。ただ川崎市の事例がそっくりそのまま多摩市に当てはめられるとは思いませんが・・・・。

投稿者 hisaka : 2006年08月28日

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