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2006年12月26日

軽度発達障害と特別支援教育

 教育センターで行なわれた学習会に参加をしました。主催しているのはCEセンターというNPOです。

 昨年の12月定例会で「発達障害者支援法の成立と特別支援教育の実施に向けて」をテーマに一般質問をしましたが、その際に東京学芸大学の上野一彦さんの本に数冊目を通しました。LD学会日本発達障害ネットワークなどでも活躍されている先生なので、一度直接お話してみたいなあと考えていたところです。
 今日は上野先生が多摩市の教育センターで話をなさるということだったのでとても楽しみにしていました。開口一番先生がおっしゃったことは、「ゴールが見えないで、あれこれその場凌ぎで対応しても上手くいかない。」ということでした。今日の講座は教職員や学校関係者を対象として実施されていたので、子どもたちへの指導のあり方をまずは問いかけられたのかもしれません。
 
 本格的には来年4月から実施される特別支援教育に向けた教職員の心構えを中心としたお話で軽度発達障害のこと、特殊教育から特別支援教育に転換する意義、特にインクルージョン教育とは何かの適切な理解、そしてまた指導者として求められるあり方等など・・・示唆に富んだ話を伺うことができました。

 上野先生のブログでも紹介されていますが、今日の講座内容については「LDとディスレクシア」という本にまとめられているようなので、こちらも購入し、さらに理解を深めたいと考えているところです。
 先生は特別支援教育への方針が打ち出された際、現行の特殊学級の存続を求める署名が全国で展開されたことは残念だと指摘されていました。特別支援教育は「障害の種類や程度により子どもたちを種別し、特定の場で行なう教育から個の教育ニーズに対応する教育」をすることであり、まさに「学習などに困難を感じているすべての子どもに対して実施される教育」ということを述べられていました。海外の場合にはSpecial Educationと言われるように、‘スベシャル’のところにはいわゆる‘天才児’だって含むという考え方であり、まさに個々に応じた支援、援助をしながら同じ屋根の下で学ぶことだという話をされていました。
 本来であれば特殊学級もすべて編成される方向性で進んでいくことが望ましかったのかもしれませんが、特殊学級存続を求める署名効果もあり、目指している方向的にはインクルージョン教育かもしれませんが、そうはならなかったのが新たに始まろうとしている日本の特別支援教育体制です。

 いずれにせよ、来年4月から本格的にスタートするので多摩市教育委員会でも取り組んでいかねばならないわけですが・・・・何よりも円滑に進めていくためには特別支援教育に対する理解を深めることはもちろん、個々のニーズに応じた個別指導計画や教育支援計画を作成し、その子ども一人の状況を応援できる体制づくりだと思っています。そのために、各学校にはコーディネーターと呼ばれる人が配置されるのですが、多摩市の場合にはコーディネーターは教員が兼務しているようなので、本腰を入れて取組もうとするとかなりの激務になると予測されます。他市等、先見性がある自治体ではコーディネーターの任務を負うことになった教員はクラス担任などから外し、専門的に役目を果たせるようにする方向性などを模索しているとか。コーディネーターの任を負う先生の力量が問われることは言うまでもありません。
 
 現在、多摩市教育委員会でも構想としては特別支援教育体制の充実など考えているようですが、そこにはやはりある程度の財源が伴うわけなので、市長自身の考え方が左右してしまうというのは言わずもがな。来年度に向けてどのようになっていくのかは年明けになればわかると思いますが・・・・。
 
 
 上野先生のよると、軽度発達障害への対応については歴史的に流れを見てみると、これまでにも何度か転換点があったとか。しかしながら、風穴があきそうになったところでいつも前に進めなかったそうです。今回の特別支援教育への取組みもそんなに甘いものではなく、着実に前進していくようにみていきたいと述べられていました。特殊教育から特別支援教育への転換が単なる看板の架け替えに終わらないようにしていかなければ・・・・・というのは本当にそのとおり。新しい体制が目指そうとしている大きな方向を見据えながら、進めていきたいものです。
 先生は「障害とは理解と支援を必要とする個性である」という言葉を締めくくりとしていましたが、ノーマライゼーション、共生社会を考えてみても、教育段階で障害の有無で垣根を作ってしまうような従来の体制が望ましくないことは一目瞭然です。中学生の職場体験で「初めて障害者の人に出会った。」と言う感想が出てきてしまうわけですので・・・・。
 多摩市の特別支援教育体制が前に進んでいくように、今後も注目していきたいと考えています。

投稿者 hisaka : 2006年12月26日

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