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2004年01月11日

『当事者主権』

 大学のほとんどのゼミでは春合宿をして、新しく入るゼミ生どうしの顔合わせなどを含めて問題意識共有の第一歩をスタートします。今年のゼミの春合宿で使用すると言う『当事者主権』(岩波新書)をやっと手に入れたので、今日は一日この本に没頭してしまいました。
 著者はは中西正司さんと上野千鶴子さん。まずは、この組み合わせから面白いのですが、中西さんの障害者運動、上野さんの女性運動ともに『当事者』の運動ということで深く結びついているわけです。

 この『当事者』という部分には「自己決定権」という大きなテーマがあり、「自分のことは自分で決める」という発想に基づきながら、社会をどう動かしてきたかについて書かれています。これは、今、私が考えている「誰が地域のことを決めるのか?」課題にも密接に関連してくるわけです。
 『障害者は一歩先に自立したが、むしろ多くの非障害者はまだ自立できてはいない。世の中をこんなものさ、と受け入れていれば、自分のニーズにさえ気づかない。そのために、非障害者は当事者にさえ、なれないのだ。』という‘おわりに’の鋭い指摘にはハッとさせられます。
 
 いわゆる今の政治をめぐる色々な状況を見ていると、「当事者」が増えることを恐れているのではないかと考えさせられてしまいました。『世の中こんなもんだろう』と思ってくれる人が多ければ多いほど権力者たちの思い通りに事が運ばれていくのです。だからこそ、低投票率に対する危機感が肝心のところには生まれてこないのではないかと思っています。どんなに低投票率であっても、法律に基づいて淡々と選挙が行われていれば、選ばれた人は権力の座につくことができ、そして結局最後は投票権の放棄こそが問題で、選出された人の正統性は保たれる。私は「本当にこれでいいのか?」という疑問を抱えています。もちろん常にその事を意識しながら、自分の活動をしています。

 私は社会の中で、誰もが『当事者』のはず・・・と思います。なぜなら、この本で説明されているように『私の現在の状態を、こうあってほしい状態に対する不足ととらえて、そうではない新しい現実をつくりだそうとする構想力を持った時に、はじめて自分のニーズとは何かがわかり、人は当事者となる。』と思うからです。少し小難しい解説かもしれませんが、何度も読めば読むほどに意味深い一文で、実は『当事者』とは何も特別な存在でないことがわかるのです。
 久々に私のオススメ図書ベスト10入りの一冊となりました。

投稿者 hisaka : 2004年01月11日

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