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2002年09月26日

おおらかな心を持ちなさい

 知らない現実にぶつかると心が痛くなる時があります。何とかしてあげたい…そんな風に思うこともあります。先日、障がい児の親の会に一緒に参加した議員の一人が「行政と違って議員はハートで仕事をする」と言っていたのが印象的でしたが、そういう部分は否めないと思います。でも、ハートだけで動かされてはいけないのも議員の仕事です。
 私が選挙に出る直前、ステイツマンの審査を受けた時にこんな質問が来ました。「『どうしても私の子どもを保育園に入れてください。』と懇願された時、どうしますか?」私はそのとき確か「私が便宜を図るわけにはいかないし、やはり直接行政の窓口で相談してみて欲しい…という説明をする。議員の仕事はそういうものではない。」と答えました。確かに困っている人を見ると助けてあげることも議員の仕事ですが、他にも同様に困った状況にあるという人もいるはずで、私がすべきことは特別に(いわゆる)口利きをすることではなく、保育環境を少しでも充実させるように政策を仕向けていくことだと思うからです。

 でも、現実はそんな理想通りにはならないのでしょうか?最近、高齢者の方の話を聞くことが多いのですが、介護の切実な問題にぶつかると息苦しくなります。ある方に「岩永さんは若いから、そういう話を生々しく聞こえるのかもしれないけれど、それは経験したことないからだよ。でもそれは悪いことじゃないんだから、聞いてあげることが大事なの。大らかにね、聞いてあげることだよ。」と言われました。その通りなのです。私は何もしてあげられないのです。
 「政治家の知り合いがいる人は老人ホームでもちょっと待っただけですぐに入れるの。こっちは3年待ちだって言われてるのに。不公平だよね。正直者がバカを見るわよ。だから行政も信用できないし、政治家だって信用できない」と言われたこともあります。でも私は何もできません。ただ話を聞くだけです。
 今日も痛ましい老老介護の現実に出会いました。おじいさんは数年前に脳梗塞で倒れて、今はなんとかリハビリで復活。おばあさんはおじいさんの病気に悩んで、自分自身が寝たきりでほとんど意識もない状況だそうです。おじいさんは目に涙をためながら言いました。「弱いものは何もできないんだよ。だって現場と窓口が全然違うよ。言ってごらんなさい・・・・って言ったから、少しケチをつけるとピシャってやられちゃうんだよ。」彼は訴えました。おばあさんのオムツ代が一万円台から急に四万円ほどになってしまったので「どうしてそんなにかかるようになるのかと尋ねたそうです。自分にとっては少ない年金の中でそんなにオムツ代がいるのは苦しいと…。」すると病院側が「だったらオムツ、とりかえなくていいですか。オムツいらないならいいですよ。」と答えたのです。「それならおばあちゃんがかわいそうだから。」おじいさんは自らも脳梗塞だったので、頭がだめなんだ、文字も読めないし、字もほとんど書きたくないんだ…と言いました。そして病院がちゃんと領収書をくれないんだと言いました。私は「市に相談とかしましたか?」と聞きましたが、「ダメだよ。いくら訴えたって。それに言って、市が病院に指導してくれたって、それでおばあちゃんが今度は病院からつめたくされるんだよ。だから言わないことにしたんだ。市には本当にお世話になってるんだよ。感謝してるんだよ。」と言うのです。行政のおじいさんへの対応は丁寧だと言うことは何度も言っていました。行政も介入できない根深い部分があることを感じました。
 「老人は発信する勇気がないんだよ。」と教えてくれた人がいます。老人になればなるほどプライバシーを気にするのだそうです。意固地になるのです。例えば子どもを持たない…(から介護してくれる人もいない)みたいなことをコンプレックスに思い、民生委員が相手だとしても絶対に家の中にいれたくない…「恥ずかしいから、人様に自分のことを知られたくない。」という気持ちが強く強くなるそうです。その方は言います。「だから民生委員の人格ってものすごく大切なんだよ。そういう心を閉ざした孤独な老人のところへ行ってもね、入りこめるような人じゃないと。」
 この話を聞いて民生委員はどんな風に選考されるんだろう…と思いました。私には到底太刀打ちできないような現実があります。でも「あなたはね、そういうことに立ち向かわなくちゃだめなんだよ。」大らかに話を聞きなさいとアドバイスをしてくれた方に言われました。私の出来ることは話を聴くことだけです。そして政治の方向を議会の場で決定することです。私はもらい泣きしないように大らかに話を聞くことを続けていこうと思います。

投稿者 hisaka : 2002年09月26日

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