« 雑木林を守る | メイン | 不燃ごみ処理の実態 »

2005年10月04日

委員会の視察

 厚生産業常任委員会で神奈川県大和市への視察を行いました。視察内容は「移動サービスについて」です。 大和市は先進的な取り組みをしており、構造改革特区の認定を受けたモデル地区です。

 移動サービスは障害者の「移動の権利」を保障する立場から出発しており、タクシー事業者では担いきることの出来ない「有償運送」サービスを行っていると理解されてきました。今後、高齢化が進み、移動困難者が増えることが予測される中、ますます移動サービスの必要性が高まると考えられます。しかし、法的にはかなりの問題がありました。いわゆる「白タク」問題です。道路運送法第80条第1項の「自家用自動車は、有償で運送の用に供してはならない。」という規定に照らすと「違法」といわざるを得なかったのです。とは言うものの、とりわけ車イスの方の移動手段としては必要性が高く、移動サービスへの取締りがされることはほとんどありませんでした。

 ところが、タクシー事業者も介護タクシーの導入など時代環境に合わせた新たなサービス展開をするなかで、移動サービス事業者であるNPOなどとの軋轢が深まりつつありました。有償運送をするのであれば、それに価するだけの要件が必要で、例えば2種免許の取得などすべきではないかという声が強まってきたのです。そこで、大和市では移動サービス事業の必要性を法的にも確立すべく構造改革特区の申請をしたというわけです。それにより、一定の要件をクリアし、認められた場合には「移動サービス事業者」としての許可が付与され、NPO等が堂々とサービス提供することが出来るようになりました。法的地位が不安定だった事業者も信頼度が増したと言います。

 国では大和市をはじめとするいくつかの自治体における「移動サービス特区」の状況から、全国的にこの動きを広げることになり、多摩市でもようやく取組みがスタートしたところです。しかしながら、大和市ではもう一歩先の取組みがすでに始まっています。それは「セダン型特区」というものです。
 移動サービス事業者への許可は「福祉車輌」限定で行われることとされており、あくまでも車イスやストレッチャーも運べる車輌による運送しか行えないことになっています。しかし、これは実態に即していないのです。特に、利用者の中には知的障害を持つ方々もいらっしゃり、その場合には普通車輌で十分に対応できます。いわゆる自家用の普通車があればいいわけで、福祉車輌に限定する必要がないのです。
 しかし、そこにはやはりタクシー事業者との大きな壁が存在します。福祉車輌の運行は、タクシー事業者も採算性の点から考えると、なかなか難しいようなので、福祉車輌限定での移動サービス事業者のサービスとは「すみわけ」がスムーズいきます、しかし、普通車輌による運行も可能となれば、タクシー事業者との兼ね合いをどうつけるのかが課題です。
 大和市はその状況も見つつ、しかし、普通車輌による運行の必要性から「セダン型特区」の申請を行いました。これにより移動サービス事業者も登録した普通車輌によるサービス提供が可能になりました。タクシーと大きく違うのは、移動サービス事業者の場合には運転手を選ぶという点でも対応することが可能です。特に、知的障害のある子どもなどには決まった運転手が対応することが望ましく、タクシーでは対応しきれない部分もNPOなどの持ち味を生かしたサービスが必要です。その点から考えれば、普通車輌による運行を認めたとしてもタクシー事業者との「すみわけ」問題は解決できるのではないかと思います。

 多摩市は地形的な問題、エレベーターのない住宅のことを考えても、移動サービスの必要性が十分に認められますし、市内から市外の学校に通っている障害児等の利用もあり、「セダン型」の導入もするべきだと考えているのですが、現在までに示されている方針では、「『セダン型』については、他市の状況も見ながら・・・・。」という返答です。
 今日の視察では「高齢者や障害者に占める利用者の割合はほんの数%しかない・・・ということも考えて、そのサービスの有効性を見ていくべきではないか。」という主旨と考えられる意見もありましたが、大和市では「必ずしも利用者の割合に着目しているわけではない。」という姿勢だったと思います。もちろん私も後者の立場です。行政の立場は運輸支局に移動サービス事業者としての許可申請をするためのサポートを行っていると考えられ、許可申請をする事前の審査をするための協議会設置をし、事務局業務を請け負うだけのことです。それ以上に移動サービス事業者に予算的なてこ入れをするわけではありません。事実、移動サービス事業者の運営実態を見ていると非常に厳しいものがあります。ちなみに、多摩市内で事業をおこなっているNPOからのヒアリングでも利用者が増えれば増えるほど、運行すれば運行するほど赤字経営が迫られるという話しも聞いたことがあります。それでも必要なサービスなのです。

 「誰でも、いつでも、どこへでも」というアクセスフリーの実現を目指し(もちろん、多摩市の交通マスタープランも同様の考え方をベースとしているのですが)、パイオニア的な取り組みを行い、「大和市の事例を国に報告して、その事例を活用してもらいたい。」という積極的な大和市の意欲には少々うらやましさを感じました。

 さて、多摩市が積極的ではない「セダン型」の導入。「セダン型特区」を申請することなどで手間があるのかを聞いてみましたが、別に特段のことはないという話でした。ただ、多摩市の場合には、大和市が単独で設置をしている協議会が、他市と共同設置される予定のため、現段階では「セダン型特区」導入を多摩市だけで判断できない環境に置かれているという問題点があります。各地域事情はあるにせよ、私は多摩市だけで協議会を設置するほうが機動力もありそうだと思っていましたが、やはり大和市の担当者の話しぶりからも私の予感はあたっている気がしました。(共同設置の運営協議会から抜けることは不可能ではないのですが)
 他市と横並びで進めることは失敗を回避する意味では安全な方策なのかもしれませんが、それでは「多摩市がオンリーワン」を目指せないなと改めて感じた次第です。(市長はオンリーワンを目指すと以前に言っていましたが・・・・。) 

投稿者 hisaka : 2005年10月04日

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
/995