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2003年07月11日

時間はかかって当たり前。

 議員研修が無事に終了しました。予め宿泊地が決定しているという好ましくない条件。限られた選択肢の中で選んだ岡谷市、茅野市でしたが、私としては正解だったなと思いました。


********************研修一日目


 まず岡谷市。小規模デイサービス体制の整備についての話を聞きました。この施設は介護保険法の通所介護施設という位置になっています。現在、岡谷市には1ヶ所設置されています。民家を改修し、定員が10名ほど、アットホームな雰囲気の施設になっています。介護保険の登録事業者のNPO法人が運営をしていました。武蔵野市でもテンミリオンハウスがありますが、民家を利用した小規模の高齢者施設は「住みなれた地域で暮す」を実現するためには必要なことだと考えています。岡谷市の場合には介護保険法内の施設に対して建物の開設にあたっての改修費用などを補助します。いわゆる元気高齢者のための生きがいデイサービスや施設の運営費用そのものは補助しないという方針を強く持っているようです。
 私が気に入ったのは「市からお願いはしません。」という姿勢でした。地域の人達が生きがいデイサービスが欲しいというニーズがあれば対応するし、小規模宅老所にしても事業者からの申し入れがあれば適宜土地の紹介から建物建設、改修までに対応をする用意はあるけれど、あえて行政からアクションを起こさないというのです。
 もちろん考えの中では地域ごとに宅老所を設置していくのが理想だし、地域ごとに開催されている生きがいデイサービスも市内全地区に広げていきたいとは考えているようですが、地域の「自主性」があくまでも優先だとしています。
 特に生きがいデイサービスに対しては、地域の自治組織を中心に地域の人たちの自主運営を目指していく方式で、地域の集会所を定期的に使用し、地区ボランティア体制を作り、隔週一回開催をしている模様です。デイサービスの内容も参加者の意向に沿って地区ごとに決めていきますが、そのときのコーディネーター役は社会福祉協議会が行っているようです。多摩市のように常設しているわけでありませんが、「生きがいデイサービス」ということで社会福祉協議会に委託をしている金額は1013万円でこれには議員全員がため息でした。多摩市では1施設当り、それ以上もの委託金額だからです。
 もともと地域では様々な活動をしているグループがあるので、「高齢者の生きがいを支えていく」を目的に横のつながりをつくり「地域サポートセンター」の機能として高齢者どうしだけでなく、子ども達や地域全体の交流を図っていけるような仕掛けとして地域自主運営の「生きがいデイサービス」を広げていくのが市の方針のようです。
 高齢者対象の事業だけに留めずにやっていこうという姿勢にも私は共感しました。そこにはこれからどんな地域づくりをしていきたいのかというビジョンを感じられたからです。


********************研修二日目


 そして、今日訪問した茅野市。2時間枠しかなかったのが本当に残念でした。大型商業施設の空き店舗利用と関連して茅野市のこども・家庭応援計画「どんぐりプラン」を中心とした話を聞きました。まず茅野駅前の施設を見学し、「子育て広場」と「中高生広場」を見に行きました。私自身は中高生の居場所ということで提案もしてきましたが、なかなか他の議員に理解をしてもらうことができずにいました。けれども、実際にガラス張りのダンスルームやバンド専用ルーム、学習室などを見て、そして中高生たちの運営委員会で建設から現在の施設運営までを行っている話を聞き、その中で大人はあくまでもサポーターとしての助言者に徹するということなど私が言いたいことをそのまま代弁してくれるような視察になり、中高生の居場所を設置する意義を少しだけ市議会全体に広げられた気がしました。
 0歳から3歳までの親子を対象とした広場も同じですが、実際に見るとイメージがわくと思います。朝10時すぎでしたが、既に20組ほどの親子が来館して、遊んだり、本を読みきかせしたり、母親どうしの交流場所になっていることが肌で感じられたと思います。
 駅前の商業施設の空きスペースを利用し、たった半年間ほどでオープンさせたという経緯もあり、これにも私たちは非常に驚いたわけです。聞いてみれば、市長が一通のメールを見ての決断だったそうです。更にびっくりしてしまいました。

 茅野市はパートナーシップのまちづくりに先進的に取り組んでいることでは有名ですが、そこには市長の方針が大きく関わっていると思います。職員の方に聞いたところ、ハードな整備を進めてきた前任者とは全く異なる方針の現市長が就任した当初は職員にも反発があったそうです。でも、今ではすっかりソフト面の充実がどれほど大事なのかについて職員一人一人の中にも定着しているようです。

 特に、子どもの家庭応援計画「どんぐりプラン」は全て市民(もちろん行政関係者も含むですが)の手づくりだそうです。市民が策定したものを行政としてどこにも手を加えずに議会に提案をし、議会もそれを承認したとのことで、これには私たちは呆気にとられたというか、ちょっと大きなどよめきがありました。職員としての視点から見たら、文章が変かな?と思う部分もあるそうですが、「だけど、市民が作ったもの」なのです。最大限尊重をする…という「最大限」を見せつけられた気がしました。でもこれは当然ことです。

 茅野市役所は毎日、夜10時半から11時くらいまで会議室の明かりが消えないほどに市民が手弁当でまちづくりにかかわっているそうです。行政の担当者ももちろん一緒です。「大変ですね・・」というニュアンスの質問に対し、「行政だけでやるよりも楽しい。市民と一緒にやると行政内部で職員同士の議論よりも‘かたち’に見える」という話をしているのだそうです。これは実感からしか語れないことだなと思いました。
 
 最後に驚いたのは、市内で現在進めている地区子ども館(児童館みたいなもの)の設立。地域の市民たちが設立しようと動いているようですが、それについて当初予算の中ではイチイチ事業化しないそうです。市民の話合いの中で行政が出すべきしかるべき経費があるときには、代表者が直接市長に交渉をし、補正予算を組んでもらうのだそうです。これにもビックリです。

 でも、ここまで来るのにはとても時間がかかったと言います。でも長い眼でいい‘まちづくり’をしていくにはゆっくり進めればいいんだから・…と言います。時間が短かったこともありますが、茅野市方式には驚嘆ばかりでした。これをどうやったら多摩市に・…と私は考えさせられました。もう一度茅野市に行き、私は‘まち’の声も聞いてみたいなと思いました。

 2日間の研修で共通しているのは市民の自主性が育つのを待つ姿勢だと思いました。それにはとても時間がかかることですが気長に行政が市民と付き合おうとしています。「市民自治」の重要性を理解し、それを実現するために行政がどのように動けばいいのかを知っているということかもしれません。これは質疑できなかったのですが、どのように情報を公開し、市民と共有化しているのか…これも気がかりな部分でした。

投稿者 hisaka : 2003年07月11日

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