« 学校を地域に開いていくためには・・・ | メイン | 少数の価値だってあるはず。 »

2003年07月01日

「原子力と日本病」

  自治体の環境政策について学習会がありました。元駐スイス大使の村田光平さんの話でした。村田さんは浜岡原発運転停止を求める運動などの中心になり、原発の危険性を訴えています。あわせて、村田さんが主張しているのは「日本病」の克服です。安全性が担保できないことがわかりきっているにも関わらず、なぜエネルギー政策を転換しないのか?という部分に切り込んでいます。「日本病」とは三感欠如、日本人に倫理感、責任感、正義感が不足していることを指摘しています。誰もが行き場のないような不安と不満を抱いているにも関わらず、それを解消することができない状況を打破していくしかないのです。

 三感欠如とは「見て見ぬフリ」…「タブー」で覆われた社会に特徴づけられるのかもしれません。誰もが原発は危ないことを知っているのに、国策を変更しない大きな理由、そこには政官財学の結束があると指摘します。経済至上主義、工業化社会を支えるのがエネルギーです。今、物質的な豊さが問われている中で、まさに社会の在り様や価値観そのものの転換が求められるわけです。先生は「精神文明」、目先の利益ばかりを追求するのではなく、もっと長期的な視野に立った理想を取り戻す必要性を訴えていました。
 そして問題を権力と金で解決をしていく構造…「原子力村の罪」と言いきりましたが、原子力発電については、権力と金でむしろ安全がおびやかされる状況が造られているのに、その現実を直視しようとしない市民たちがいるといいます。彼らも同罪であるというわけです。市民一人一人が自覚的にこの問題を捉えることなしに世論は変わっていかない…これが村田先生の結論のようです。
 だからこそ「世論の喚起」、世論を変えるために、ビジョンが示せる指導者が不可欠だと言います。知識や見識だけでなく実行力が伴わなければ無意味。先生が「政治」に関わる人に大きな期待を寄せる部分だと述べられていました。
 
 自然エネルギー活用の有効性も提案されましたが、むしろ「自治体のエネルギー政策」というよりは、先生は経済成長を支える大量のエネルギー生産への批判を中心にして「知足経済学」を主軸にした新しい社会の在り方を提案されていたように思います。
 「足るを知る」、一人一人のライフスタイルを見直すことが自分たちの本当の安全を保障するのだとつくづく感じました。電力不足が言われる今日この頃。もしかすると私たちの心がけ次第で電力不足も簡単に解消するのではないか?と感じます。とは言え、原発頼りの私の生活と「原発反対」の思いとの葛藤が当分の間解消できないことは確か…何とも言えない無力さを感じながらも、自然エネルギー活用の必要性、モノに頼らない新しい豊さを訴えていくしかないのかもしれません。

 「原子力と日本病」というタイトルは先生の著書。日本病は原子力問題だけに限らず、日本社会全体に蔓延っている風潮だと思いました。

投稿者 hisaka : 2003年07月01日

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
/396