通じあえる喜びを。

ありがたいご縁をいただき、多摩市社会福祉協議会が主宰されている「失語症」のみなさんの活動を見学してきました。自分自身が「失語症」を誤解していたことに恥じながら、現場を実際に見ることができ、そしてまた、ちょこっとグループの会話に加わることもでき、とてもとても楽しいひとときでもありました。一般的には「失語症」は脳卒中や頭部外傷等で脳の言語中枢が損傷される ことにより起こる言語障害と説明されるのですが、ちょっとお堅いですね。

「聴く」「読む」「話す」「書く」

ことばには4つの側面があって、ここにどちらかと言えば、複合的に不具合が生じ、記憶や感性、意見や「その人らしさ」はそのままで、ただ、コミュニケーションが困難となってしまう。これが失語症。「ことばの4つの側面」…例えば、「聴く」に症状があるとしても、聴力の問題ではないということです。中途障害であること、そして、症状は一人ずつ違っていること、そして、見えにくい…でも、それについて当事者ご本人が訴えることができない難しさがある。外見上は失語症当事者であるかがわからないために、いろんな意味で誤解を受けやすく、だんだんと話すことへのハードルが高くなり、会話することをしなくなってしまう‥‥となると、やっぱり、それに対する心のダメージもあることは想像に難くありません。見学をした活動は、失語症のみなさんのパートナーとして、コミュニケーションを橋渡ししていく「意思疎通支援者」さんも参加しながら、当事者の皆さんどうしでおしゃべりを楽しむ会でした。

当事者の皆さんの話を聴きながら、表現したいことを受け止めて、周りにきちんとその意図、意思が伝わっていくようにフォローをしていく役割が意思疎通支援者さん。もちろん話す側だけではなく、聴く側の理解を助けるためにもフォロー人材が寄り添います。

 

こんな感じで、話を聴きながら、絵を描いていくとか、あとは、会話のポイントになる単語を紙に書くとか…理解を助け、促していくのですが、なかなか、これは簡単ではないなと。意思疎通支援者さんと当事者さんとの信頼関係がまず築かれてこそ…というのがありそうです。同じようにコミュニケーションを支援するとして、例えば手話の場合にも、長ったらしい文章なども的確な単語などに置き換えたりと工夫をされていると思いますが、そもそも「何を言いたいのか」を推測をしていくという作業を伴いながら、意思疎通を支援していくので、こちらにもかなり経験に伴うスキルなどが求められるなと理解しました。通訳者を挟まず、手話でお互いに会話するということもできますが、失語症の場合には「当事者」どうしであっても意思疎通はできない。

「その人らしさ」はそのままなのに、言語機能にダメージがあって、「伝えられない」。想像すると本当に苦しいことだろう、辛いことだろうなと。意思疎通ができた瞬間、きちんと言いたいことが伝わり、理解されて、「会話が成立!」という時、私自身にも得られる喜びがありました。

ちなみに、ストレスなどで発語ができなくなってしまった…というような症状は「失語症」ではないのですが、それを「失語症」として誤解している人も少なからずいるのではないかなと思います…私もまたその一人でしたので、ホント…自分の勉強不足を晒しながら、お会いしたみなさんから学ぶことができた。実際に、当事者の皆さんが「会話をするために」どれほど、どれだけの苦労をされているのか。やっぱり、一人ひとりの「生きる」を肌で感じることは重要です。そこにある困難、苦労などなど機微というのは、そこにある空気感を共有しなければわからないので。もちろん、短時間ですし、わかった気になってはいけないのですが。

「どうぞ、見学にいらしてください」とお声をかけていただいて、本当にありがたかったです。そして、こうした活動は当事者の皆さんが本当に安心して参加できる場になり、支えになっていることも理解できました。日常生活の中では、家族とでも意思疎通の難しく、もどかしさをたくさん抱えながら暮らしておられる場合も多いはずです。「失語症」を家族以外の他人には明かさないまま、今までの暮らしを継続している場合もあると伺いました。もし、橋渡しとなる意思疎通支援者さんのサポートがあれば、気軽にお出かけができたり、誰かと一緒に活動ができたりする機会を増やすことができますね。「暮らし」に喜びが増えていくような気もしました。家族の方とご一緒の場合にはまだしも、お一人で暮らしておられる方の場合には例えば買い物、病院、あるいは相談事、問い合わせなどなど一つひとつに困難が伴うことは明らか。今は、多摩市は失語症の個人の方への意思疎通支援者を派遣することは実施していないようですが、支援者の手を借りることができると確実に「暮らし」が広がっていくなと思いました。同時に、失語症に対する社会の理解を広げていくための啓発活動も進めていく必要もあります。まだまだ入口のところで、理解した失語症のこと。「わかった気になる」ではなく、今度、機会あれば、多摩市内で活動している自主グループ「こだまの会」にも参加してみようと思います。

初めてのところに行くのはやっぱりドキドキして緊張するのですが、とても温かく迎え入れてくださりありがとうございました。