予算委員会が終わりました。結果的には一般会計は修正案が否決されて、原案が賛成多数で可決しました。特別会計はいずれも、全会一致で可決です。
修正案は「連光寺6丁目農業公園(仮称)の新設」に関し、基本設計費用を削除するという内容。提案者は生活者ネットワークの岩崎さん、岸田さん、社民党の伊地智さん、折戸さん、白田さん、そして私。修正案には、維新の藤條さん、鬼塚さん、中島さんが賛成してくださいました。修正案を提出すると提案説明したり、質疑を受けて答弁します。岩崎さんが「農業公園の設置に関して、環境の専門家の視点を取り入れる必要があるのではないか」という提案説明をしてくださったのですが、内容がとても素晴らしくて頷けるものでした。「午前中の市側に対する質疑の内容に疑義がある」ということで、修正案に対する質疑をされたのは篠塚さん。「午前中の」と前置きがあったので、岸田さんと岩崎さんが質疑に対する答弁をしてくださったのですが、結局は見解の相違なので、相容れないですね。とても頑張って答弁されていたなと拍手です。とても緊張もするのに堂々とされていたかなと思って。もともと篠塚さんは「そのまま進めてほしい」という立場なので、「ちょっと待ってほしい」という意見とは相容れないのはわかっての質疑だったと思いますし、「その修正案には賛成できないよ」という表明だったと受け止めています。
私は「農業公園をやるなら、かなりちゃんとやらないと大変なことになる」と思っていて、厳しい財政環境の中でどんどん進んでいくことへの懸念があったのですが、そもそも今回の問題点とは「農業公園の基本構想」が明らかにされていないという点です。一般的には、基本設計の前に基本構想が説明されたりして、内容の把握ができるのですが、「まだ、決めきれていない」のか「説明できる状態にはない」ということで議会への説明はありません。今年度予算で「基本構想の検討」について予算化されている割には、生活環境常任委員会での報告もされていないようです。少しも内容がわからない中ではやはり不安も大きいですね。
ただ、事前に知り得たこととしては「議論しているメンバーの中には環境の専門家が加わっていない」ということ。2年前に当該地の活用について検討会が開催されていますが、基本的にはそのメンバーを継続しつつ、数名の市民が加わって基本構想の検討が進んでいる様子でした。里山保全の活動にも関わっている市民が加わっていたとはいえ、学識経験者やプロという立場ではないので、やはり環境の専門家にも加わってもらうべきですね。なぜなら、当該農業公園というのは、東京都の「里山保全地域」に指定されていて、農業をやるのは「自然環境を守るため」だからです。ですので、一体どのような内容で農業公園が考えられているのかなど、きちんと把握しておくことが議会としても重要と思われます。
「構想については、基本設計に入る前にはお示しができるようにします」というのが答弁。「内容がわからないのに、基本設計を認めるのは難しい」というのが修正案を提出した私たちの立場です。やっぱり、「里山保全地域」の一角にはさらに重要な「動植物保護区域」があり、その環境を守っていくためには相当慎重にならなければいけないのです。「絶滅する恐れがある動植物を守る」ことが最優先になるから。今、里山保全地域に隣接しているエリアには宅地開発の波が押し寄せている現状もあったりで、「動植物保護区域」の状態悪化も懸念する声もあります。つまり、「里山保全地域」の指定区域に関しても、もしかすると拡張しなければならない可能性なども有るかもしれない。
まず、多摩市が考えるべき、やるべきことは「動植物保護区域」を守ること。もちろん、そのために必要な里山環境の保持でもあって、当該地の農的活用であって、農業公園であることは理解しているのですが、ちょっと前のめりになって農業公園の取組みだけを進めていくと、見込み違いになっていくのではないかな…という気になっているのです。「お金も」そして「人手」についても。
そう思っていたので、一般質問でも
「環境との共生」を考えていくフィールドにもなる可能性を秘める(仮称)連光寺6丁目農業公園ですが、そこに夢を語り、実現させるのは相当な覚悟が必要と考えます。安定的に人的資源を確保し、その運営を継続させていくための財政基盤の構築は課題ですし、そのために、「商い」を持ち込んだとしても「里山保全」との両立により、限界もあるのではないでしょうか。改めて、現状の課題と「協創」の考え方を農業公園にどう活かし、開かれた場所にしていくのかお考えを伺います。
という項目を入れていたのです。今、やっていくにはちょっと無理があるのではないかという意味も含めて。ちなみに、答弁は
連光寺6丁目農業公園づくりに向けては、これまで有識者や市内の農事業者を交え、試験事業を重ねながら、あり方検討を進めてきました。保全地域としての規制がある中で、環境保全を第一としつつ、しっかりと収穫物を得て活用していく持続可能な運営体制を構築していくためには、引き続きトライアルアンドエラーが必要です。これまでも試験事業の参加者を中心に、農業公園づくりの市民サポーターを募ったり市内の農事業者との交流事業にも取り組んできましたが、世代を超えてより多くの市民に当該地の自然を知って、触れて、活用していただき、認知度をあげていきます。そのうえで多様な主体に関わっていただき、自然と共生し、資源が循環していく農業公園に育てていく考えです。
決して、答弁が悪いわけでもないのですが、「しっかりと収穫物を得て活用していく持続可能な運営体制」がどんな体制なのか、早く明らかにしてほしいとは思っていました。今日になって「指定管理者」ということが出てきて…「あ、え?」…「指定管理者でやっていくの?」みたいな感じになりましたが(里山保全地域での活動を指定管理者にするという考え方は認められるの?…ということが調べきれていません)、そうなると、やっぱり、運営費用にも一定の支出を見込む必要があるなあと。数百万円というわけにはいかなくなります。市長は、この取組みに全身全霊をかける…という感じでもないですし。そして、まだまだ、これから区域内にある土地の取得は既に決定していて、そこへの支出は決定(これには都市計画税を使うと答弁がありました)していることやら、個人的には先にも書いた通り、保全区域外にも少し目を向けておく必要があって、これからも取得しなければならない土地もあるかもしれない…ということも含めて、もっともっと全体像を考えておく必要がありそう。とても長期的な視点で。
ところで、東京都が里山保全地域に指定するにあたって協議、決定するのは自然環境保全審議会。審議会開催の資料など見ることができ、当初、区域指定されたのは第130回で平成26年9月3日開催、区域を拡張した時が第145回で令和2年9月3日です。「わー、たまたまなのかもしれないけれど、両方とも9月3日~」と思いながら、第130回の資料はさすがに掲載されていませんでしたが、第145回の資料は掲載されていましたので、議事録と合わせて、今回ばかりはちゃんとプリントアウトして読んでしまった…。第145回で区域拡張と保全計画書も変更されていて、その資料はとても参考になります。ある意味、市がその内容に則って、議論を進めてきていることも理解はしています。
ただ、「東京都は区域指定をするときには周辺環境もしっかり調査して、把握したうえで行っている」…という説明があって、そんなの当たり前だと思っていますが、でも区域を指定するときには残念ながら、既存物件や既設の道路などについては配慮されているはずなのです。里山保全地域は原則、「宅地開発も不可」どころか、「車の乗り入れ禁止」になってしまうし…。こうした指定区域をつくっていく作業はいろんな意味でまた、大変なのです。土地所有者さんとの関係もありますし。
さて、修正案は否決されたので、予定通りに来年度予算が執行されていく方向になります。まだ、予算の議決そのものは最終日本会議で正式にとなりますが、予算委員会での結論が覆されることはないので。「動植物保護区域を守るための農業公園」とその運営と、将来にわたって、どうあるべきかを考えるビジョンと…市長は心の中でどう思い描いておられるのでしょうね。しつこいようですが、環境政策は多摩市にとっても優先度が高いようですが、だからといって、「そこばかり」になれない現実を踏まえて、「さて、どうあるべきか、どうすべきか」ですね。