今日から立教大学社会デザイン研究所の「公共ホールのつくり方と動かし方を学ぶ」冬の講座。4日間連続で日曜日まで。これは文化庁の助成を受けて実施されているもので、今回は「次世代公共ホールの出発点」を考えるシンポジウムが最終日にあります。こちら3か年に渡って、季節ごとに集中講座を実施してきたもので、今回が最終3年目の集大成になるようです。
まさに・・・大規模改修があってもなくても・・・・パルテノン多摩にもってこいの内容盛りだくさんの研修内容。もちろん、パルテノン多摩のみならず、全国自治体のホールの存在意義、そして将来にわたっての存在価値を改めて問い直し、考えを深めていこうとする場。とにもかくにも参加者の皆さんの問題意識が高い!
「ホールの担当者になって、『藁をもすがる思い』で勉強しないと・・・と思って参加している」とする公務員の方や、既に公共ホールの指定管理者として仕事に従事しておられる民間企業の方、ご自身でホールを所有され、マネジメントを考えておられる方などなど・・・参加者の顔ぶれも多彩であり、立場の違いはあれどいずれも「公共ホール」について在り様、めざすべき姿について真剣に向き合おうとしているわけでして、議論についていくだけでアップアップしそう。既に本日の講義で消化不良を起こしかけております。
今日はまず、イントロダクション的な話から始まりましたが、やはりパルテノン多摩の大規模改修を進めていくにあたっては、舞台設備・技術のことがわかる専門家=ホールの実務家と言われる人材が必要不可欠であり、設計段階から関わってもらうことで、「よりよいホール」になると確信しました。例えば・・・LED照明をどう取り入れるのか?という問題、照明だけではなく音響などなど機材全般は日進月歩でどんどん新製品に更新されてしまうこともあり、トレンドを掴みながら、個々のホールの要請に適した設備機器導入へのアドバイスが有効であるとの指摘がありました。ホント・・・その通りだと思います。舞台機構などの分野はあまりにも専門的すぎて俄か仕立てで勉強しても理解できるようなものではありません。照明卓ひとつとっても、公共ホールの場合には一般的には4~5千万円くらいのものが使用されているようですが、海外一流最高級の製品で百万円単位で使い勝手もよいものが選択でき、コストは大幅にカットしたとする実例、大規模改修でせっかく設備機器を更新できるチャンスにも関らず、照明をつるしたりするバトンが従前、従来の耐荷重を前提にした時代遅れ製品に交換されただけであることに気がつかないまま設計工事へと進んでしまうという悪事例、空調設備のつけ方ひとつにしても失敗事例の場合には空調をスイッチオンすると舞台の袖幕などが風で揺れる状態になっているなどなど・・・・いくつかの具体的かつ笑えない事例が紹介されました。(ちなみに、いわゆる劇場設計をいくつも手掛けている設計会社さんやコンサルタント会社さんが関わっていたとしても・・・残念な事例が散見されるとのこと。)
話しを聞きながら、現在着々と進んでいるであろう?我が多摩市のパルテノン多摩の大規模改修に向けた基本設計もそろそろ年度末に向けて完成していくはずというか、そろそろ仕上げ段階になっているはずなのですが、大丈夫なのかしら?・・・不安が募ります。ホールの実務家が存在しない状態で、改修工事が突っ走ることは危険では?と思います。パルテノン多摩の大規模改修工事について「失敗事例」として紹介されるようなことは避けたいですね。
って、その前に「どんなホールにするのか?」の議論が深まっていない状態のまま、ホール改修を進めるのがそもそも最悪パターンのはじまり・・・とも言えるかも。講義の中ではいくつかの公共ホールの設計にかかわった建築家からの報告もありましたが、「設計×運営」と一貫した共同体制の必要性が指摘されていて、「ホールをつくる人」と「ホールをつかう人」とのキャッチボールの中から「よりよいホール」が生まれるとおっしゃっていましたね。今はその作業工程が見当たりません・・・・というと語弊があるかもしれませんが、「どんなパルテノン多摩にしようか?」のみならず、「そのための運営をどうしていこうか?」とする視点の欠如を指摘せざるを得ません。
加えて、「ホールにいつも人がいる状態をつくること」・・・その仕掛けづくりが肝であるとのご指摘もありましたが、日常的には閑散としている公共ホールや美術館と比べて、いつも賑やかで人がいるのは図書館・・・・だから図書館とホールの組み合わせなどは有効かもしれない・・・・とのことですね。確かに、視察見学をした大和市のシリウスなども図書館とホールが一つの建物に同居させることの効果を狙っていたように思います。特に集客という意味からは有効な視点。多摩市の場合にはせっかく図書館の新設も浮上しているのに、いかに連携していくか・・・机上の空論としか思えないよう「縦割り行政温存」の議論が進行しています。このまま図書館の方だけ、基本構想が固まり、基本計画へと着々と進んでいくとしたら、これまた私個人的にはいかがなものかと思います。問題になっていることは、パルテノン多摩大規模改修を手始めとする多摩センター地域全体の活性化問題だと私は捉えていますし、そのためのグランドデザインを描くことだと主張してきました。
さぁ・・・パルテノン多摩の場合にはどんな選択をしていくのでしょう?何かイベント、催事がなくとも「ふらり」立ち寄れるような空間=広場として公共ホール・・・・今のパルテノン多摩からは想像できない図ですが、仮にも大規模改修をすれば、誰もに開かれた居心地のいい場所として存在意義と価値を発揮してくれるのでしょうか?そんな見込みはあるのでしょうか?(私はそのあたり、疑心暗鬼になっております。)。いずれにせよ、大規模改修をするということは、今後30年間パルテノン多摩を存続させていくということ、毎年の運営経費を拠出していくということ・・・・確かに、パルテノン多摩の大規模改修に関するアンケートでは「残してほしい」「なくさないでほしい」とする声が多かったのかもしれませんが、その選択により、私たちが負うべき責任、もしかしたらリスクも含めて、ちゃんと認識され、理解されているのだろうか?・・・このあたり、私の中ではいまいち確信が持てないところです。
三越前の十字路からパルテノン多摩まで・・・「人がなかなか歩こうとしない」・・・物理的問題か、心理的問題なのかわかりませんが、ここにどう工夫を持たせ、パルテノン多摩まで人の流れをつくるかにアイデアが全く披露されていないのが本当に残念です。改修したとしても、そこに何の知恵もなければ、人は来ない。「場所があれば来る」というのは私は違うと思っています。雨が降っても人が集まりたくなる場所にできるかどうかを考えていきたいですね。「雨の日ピクニック」・・・ちょうど公園も隣接しているのでいつでもどこでもピクニックできるようなイメージにしたい。
そんなわけで、明日は「文化政策」のおさらいで、国の方向などを学ぶ講義からのスタートです。雪降らないといいなあ・・・。「よりよいホールをつくる」ためにパルテノン多摩を大規模改修するのであれば、「よりよく」するために必要な作業を改めて洗い出し、今の取組みに不足しているところについては補強していかないと・・・このまま改修工事に前のめりになり、突っ込んでいくとしたら・・・不幸になるのは市民です。