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2007年02月09日

障害者自立支援法の行方

 多摩市手をつなぐ育成会が主催をした学習会に参加し、斎木博さんより、「障害者自立支援法」が施行されてからの現状について話を伺いました。

 斎木さんは江戸川区にある区立施設の長をお勤めの方です。現場からの意見を中心にした話はリアリティに富むものでした。特に障害者の1割負担が発生したことで、サービス利用を抑制しようとする傾向が見られることが言われています。本来はサービスを活用することが望ましいにも関わらず、負担があるから利用しないことで、実は障害当事者本人もその家族も厳しい状況に置かれてしまう現実など切迫した状況が目に浮かびました。
 最終的には国の方針であり、国レベルでの考え方が問われているとの強い主張をなさっていましたが、その方針の変更を求めていくところでの自治体の役割の大きさが指摘されていた気がします。また、財政力が豊かな自治体とそうではない自治体、そしてまた都市部と地方とでは「選択の余地」の違いがあることなど、地域間格差が拡大している現状も指摘していました。
 
 そして私が何よりも印象的だったのは、いわゆるサービスの担い手の問題でした。過去数年前までの就職難の時代には新卒の学生などの就職口になっていた障害者施設も、障害者自立支援法により施設運営のあり方にも一層の見直しを迫られています。固定経費である人件費の切り詰め傾向、そしてもともと低賃金であり、労働環境も厳しく、「選ばれない職場」になってきたこと。せっかく就職した若い世代も賃金のベースアップを見込むことは難しく、将来に展望が描けないことを理由に辞めることを迫られてしまう現状があることです。
 施設長としての立場では若い担い手を育成していくことの重要性を認識しているものの、残念ながら自信を持てない職場環境があることも包み隠さずに切々と述べられていました。「若い人を育てることができない。」
 その一言の持つ意味はとても重いです。障害者自立支援法は「・・・障害者及び障害児がその有する能力及び適性に応じ、自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付その他の支援を行い、もって障害者及び障害児の福祉の増進を図るとともに、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与すること」が目的です。障害者の地域生活を支える人材の育成が求められます。その中心にあるのが専門職として関われる人を増やすことだと考えています。しかし、それへの対応は十分ではなく、結局は保護者など関係者やボランティアに頼らざるを得ないのが現実ということなのでしょう。引き続き、この問題については国の動向を見据えながら、多摩市でできることも考えていきたいと思っています。

投稿者 hisaka : 2007年02月09日

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