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2006年08月25日

児童館と学童クラブが指定管理者になったら?

 狛江市の和泉児童館に視察に行ってきました。ここは「小学生クラブ」と呼ばれている学童クラブも併設されています。


 ここは1階フロアが児童館、2回フロアが学童クラブになっているのですが、児童館は3年前から民間(社会福祉法人)委託により運営されてきましたが、去年までは学童クラブは狛江市直営で運営されていたそうです。なので、1階フロアは民間人で2階フロアには公務員職員がいるという複雑、心理的にも微妙な関係を維持しつつ児童館内全体が運営されていた模様です。
 しかし、この4月より小学生クラブの運営も同じ法人が任されることになり、それにともない施設の運営方法も「指定管理者」という風に変更となったそうです。

 それにしても・・・とかく学童クラブの民営化については保護者の反対が大きくスムーズには進まなかったそうで、何度も何度も説明会等を開催したとの話です。受託している民間事業者としては「どうして公務員の方のほうが民間よりも優れていると言えるのかなあ・・・・」と漏らしていましたが、児童施設の民営化問題ではどこの自治体でも反対運動に頭を悩ませていると聞いています。それでも、反対運動にめげず?行政も物事を進めていくので・・・・この4月より和泉児童館・小学生クラブは「指定管理者」となったわけです。(ちなみに、この法人は狛江市の岩戸児童センターと子ども家庭支援センターの仕事、ファミリーサポートの仕事もしています。)


 さて、民間で運営することになってどう変わったのか?一例をあげると、小学生クラブの場合には子どもたちを預かる時間は午後6時から午後7時までに延長されました(この場合は親が引き取ることが前提だけれど、もしも7時すぎた場合でも子どもを帰宅させることはしない・・・タイムカードで管理されてしまい残業制限のある公務員ではできないこと)。また、児童館に遊びに来る一般の子どもたちと小学生クラブに通う子どもたちを一体で見ることが可能。そして、全館の運営を任されたことにより子どもたちの遊ぶ空間も広がったことはよかった・・・と言っていました。
 特に小学生クラブに通う子どもたちを見るのは公務員、それ以外の子どもを見るのは民間人・・・・という構造であると責任主体についても明確化されない部分が発生しがち。どうしても「ウチの子ども」という視点で、子どもたちを分断する中で見守りをしていまう傾向が強くなってしまう部分は解消されました。それから・・・面白かったのは、狛江市の学童クラブでは大人を「先生」と呼ばねばならないのに、児童館では大人をあだ名で呼んでいる・・・というような違いにとまどう子どもと保護者・・・みたいなこともなくなったと言います。


 「一概に民間はダメ!とは決めつけられない。」というのが一緒に視察をした学生たちの感想だったのですが、実際に子どもたちの遊んでいる様子を見ても、非常にいい雰囲気でした。


 ところで、多摩市の場合には児童館と学童クラブが併設されているところが多いわけですが、既に学童クラブは今後民間に任せていくという方針なので、非常に参考になる事例だなと感じました。ちなみにスタッフは正規職員が5人、パートは8名(うち2人は相談員)という体制で、小学生クラブの定員は50名とのことでした。
 そしてまた障害児も受入れており、そのノウハウについては同法人が別途運営をしている障害児施設に学んだりしているそうです。障害児の受入希望については人気があるとの話でした。


 実は・・・「この法人がすごいスケール!」ホームページも見てわかるように、多くの自治体の児童施設などの運営を受けているようです。狛江の和泉児童館と同じような児童施設は都内全部で11館だそうで、その11館対抗でのドッヂボール大会など代々木にあるオリンピックセンターにて行なえば、300人が集まるとのこと。このような他との交流もまた行政とは一味違った取り組みとしてあげられるようです。

 一方で、地元地域との連携、そしてまた施設運営に対する第三者評価の視点など気になるところですが、地元との連携はあまり進んでいるように感じませんでした。評価については年2回、地域の保育園、幼稚園、小学校、中学校、保護者などを交えた協議会を開催を予定しているとのことでしたが・・・。ここは今後の課題のように思いました。


 それからもう一点。狛江市には他にも学童クラブがあります。こちらは直営で行なわれているところですが、そことのつながりや連絡会があるのかどうかを尋ねました。狛江市では「行なわれていない」ということでしたが、聞いたところによると、墨田区では児童館などを直営を含む4つの事業所で運営しているようで、その場合には連絡会的に館長会議の開催をしているとの話でした。
 これは事業者というよりは狛江市の考え方によるのでしょうが、やはり狛江市としてどのような小学生クラブ、学童クラブ、子どもたちの育ちの環境をつくりあげていくのかというビジョンをしっかりと示すことは必要だと思います。その上で職員どうし(民間人と公務員)の意見交換や交流会をすることは大事ではないでしょうか。互いに切磋琢磨♪も必要です。民間事業者側としても、指定管理者になり、自由裁量の部分が広がったとは言え、民間には民間のやり方がある・・・ということで、突き話せない部分だと思います。


 いずれにしても、民間に任せる時には、その移行までの間どういう引継ぎをするのかが課題になります。特に春休み中に学童に通ってくる子どもにとっては3月31日までと年度が変わった4月1日からとで、突然に職員の顔ぶれが変わると言うことで戸惑いもあるようです。
 だいたいは体制が変更する2~3ヶ月前から準備(引き継ぎ)を設け、公務員とともに民間人が同居し、大人も子どもも新しい環境にスムーズに移行できるように配慮はするようです。


 多摩市でも来年4月から多摩第2小学校に新しく設置される学童クラブが民間委託される予定です。その際、現在、東寺方学童クラブに通っている子どもたちへの対応をどうするのかなど課題になっていると思います。今日の事例を踏まえつつ、今後の多摩市の動きに注目したいと思います。

 
 本当は全学年の児童を対象とした「小学生クラブ」の話しを聞きにいったのですが、私としては指定管理者制度の方に関心が寄せられ、肝心な小学生クラブに関することをあまり聞かなかったかもしれない・・・と帰り道に反省してしまいましたが・・・・。でも、とても参考になる話しを聞くことができ、一緒に視察をした政策ゼミのメンバーもいい視察になったとの感想を述べていました。 

投稿者 hisaka : 2006年08月25日

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