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2006年06月22日

多数派にはなれず

 6月定例会最終日の重大案件であった「助役二人制」については賛成多数で可決されました。賛成は13、反対は12です。私の判断は反対です。一番大きな理由は何よりも議論不足ということです。総括質疑では市長、そして助役ができる限りの答弁をしていたようですが、私が「なるほど」と思えるような回答はなく、特に、助役二人制にしてトップマネジメントを強化するとはいえ、一体どのように強化され、それがどのように機能していくのかが具体的に示されない中では否決せざるを得ませんでした。

 形式論や手続き論に過ぎないとの野次を受けましたが、私自身はこれからあるべき自治体経営や組織運営のあり方については、しかるべき場所できちんとした議論をすべきだと考えています。
 なぜならば、例えば、助役を複数にするにしてもその手法はさまざまあると考えるからです。なにしろ助役を複数にするということはそこに新たな人件費が発生するという問題があります。特に、「小さな市役所論」が言われる時、そこには常に人件費の問題が意識されていると思っていますが、今日の総務委員会でもアドバイザー的な立場として高額の報酬を受取らなくとも助役を引き受けてくれるような人材を募集する(この場合は名誉職みたいになるのでしょうか?)ということも考えられたのではないかという提案が出ていました。言うまでもなく「小さな市役所論」により正職員を削減していくことは、そして民間の力を活用することは、コスト削減、人件費抑制の議論と深く結びついているものです。
 どのようなマネジメント体制を描いていくのか、複数助役制というのもありかもしれませんが、その際、報酬そのものの水準を見直すことも視野にいれる必要があるのだと思います。あえて特別職としての助役は置かず、市長が部長級に大幅に権限移譲しなが組織経営している自治体もあると聞いています。

 市長だけで組織運営しているのでなければ、市長と助役、収入役、教育長など特別職だけで運営しているわけではなく、やっぱりそこには経営陣の一翼を担う「部長級」の職員たちの存在が大きく、彼らの力あって組織がまわっていると思っています。
 しかしながら、今回の提案は「部長級」職員たちとの意見交換をしてきた経緯はなく、市長からのトップダウンにより「助役二人制」が示されたようでした。議会に提案する特に重要な案件を付議しなければならない首脳部会議でも報告事項としてしか取扱われたなかったようであり(これについては本当に不満。「助役二人制」にするというのは私には‘超’重要案件としか思えないけれど。)、そしてまた、自治体経営に関する重要事項を議論する経営改革推進会議でも議題にはのぼらなかったようです。市長のトップマネジメント体制の強化が、市長のトップダウンにより決定されたとなれば、そのこともまた問題だと感じます。

 そもそもは収入役人事案件が撤回され、そのもとで提出された助役二人制の提案。収入役を廃止する方向には異論ないものの助役二人制を多摩市として導入するのかどうかについては、もっと慎重な議論が必要だと感じます。特に多摩市では収入役は金庫番という本来業務以上に、重要な役回りを果たしていたので、その役回りを総括しつつ、今後の方向性をも示す必要があったはずです。これについても今日の市長、助役答弁に私が納得し、そしてまた私自身も市民に理解を得られるような説得力のある説明が可能だと自信が持てる内容ではありませんでした。

 しかし、助役二人制を導入することに対する議会の判断は「可決」というもの。拮抗していたとは言っても、市長の提案は議会の議決を経て、「助役二人制」という新たな仕組みが誕生しました。

 ここで次なる問題が・・・・。当然のことですが、もともと「助役二人制」が可決されたなら、助役人事が追加される予定になっていました。人事が提案された場合には同意するかしないかを判断することとなります。助役二人制を否決したという立場からは、人事案に同意しないのが筋かもしれませんが、私は賛成しました。ここはとても悩みました。助役二人制という仕組みができたとしても、人事案件が同意されなければ、助役一人分は空席にできます。正直、人事に同意することは結果的には助役二人制を認めることにもつながってしまいます。
 しかし、助役二人制で新しい自治体運営をしたいと提案した市長に対し、それが今後にとって望ましいと判断した議会の多数意思を踏まえた上で判断を下しました。そこで、私は新たに助役として提案された現在の企画政策部長に対し注文をつけました。一つは市長の示唆しているトップマネジメントとやらの全体像を早く示すこと、もう一つは、市民、議会、市役所組織内部などにおける風通しをよくしてもらいたい(情報の共有をもっと進めて欲しい)ということです。
 助役二人制を否決した立場の議員は人事案件では難しい選択を迫られたと言えます。そのことを示すかのように、議決には加わらず、退席をした議員が4名いました。退席をすることももしかしたら選択肢として存在していたのかもしれませんが、私にとっては高度な政治テクニックだと思いました。「趣旨採択」のようなグレーゾーンみたいなものです。
 
 最終的にはすべての物事が「数」により決定されていきます。その都度その都度の状況判断の難しさを痛感した一日になりました。「人事に同意するんだったら、助役二人制も同意しないといけないよ。」と議会終了後に声をかけられました。でも、私の中の順序では助役二人制の議論が先にあり、その後に人事をどうするのかの議論が存在していたので、それぞれに判断を下したト思っているのですが…やはり周囲から見ると‘わかりにくい’という風になってしまうのかもしれません。その批判や批難は甘んじて受ける心づもりです。

投稿者 hisaka : 2006年06月22日

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