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2005年08月19日

「つくる会」教科書は不採択

 教育委員会で来春から使用される中学校の教科書の採択がありました。もちろん注目されているのは「つくる会」の歴史・公民教科書。出版は扶桑社です。ちょうど、昨日の朝日新聞では「つくる会」教科書の採択率が1%前後になりそうという調査結果が掲載されていましたが、東京都立のろう・養護学校や、東京都立中高一貫校、そして先日は東京都杉並区も「つくる会」の教科書を採択するという状況があり、多摩市教育委員会でどのような結果が出るのかにも関心が高まっていました。

 今日の採択にあわせて、「中学校の教科書採択についての請願」が提出されていました。今日までに1583人の署名が集められていました。「つくる会」の教科書内容の問題点を指摘し、教科書としてふさわしくないことを述べ、そして「採択すべきではない」という趣旨の請願でした。これについては国の教科書検定を通過していることを考えると、教科書の不備や問題点をいまさら多摩市教育委員会として論ずる必要もなく、「請願としては不採択にするべき」という意見が出され、教育委員全員の挙手にて不採択になりました。この時には一瞬、傍聴者からため息がもれました。

 ちなみに、今日の傍聴者は抽選でした。実際には傍聴定員は10名なので、抽選に外れた人は別室で音声中継に耳を澄ましました。傍聴者は約60名ほどはいたと思います。私も別室で音声を聞きながら、会議の行方を見守っていました。採決の方法は無記名投票でした。挙手だと市民に対しても不明確な感じがあるので、投票が望ましいだろうという説明でしたが、市民的に考えた時には記名投票にしてもらいたいという声があがっていました。「つくる会」教科書を選ぶ人がいたら、それはどの人なのかを知りたいと考えるからでしょう。

 さて、私は教科書が採択される現場に触れるのが初めての経験でしたが、学校で使用する教科書が教育委員会でこんなかたちで議論されていたんだと驚きました。例えば、今日は国語教科書から順番に選定が行われていくわけですが、本論と資料とのバランス、現場での使いやすさ、挿絵の効果、読み物の質がどうなのかなどなどさまざまな観点から全出版社の教科書を比較して分析をしながら選ばれるのです。相当な見識が必要だと感じました。資料が多すぎると、その資料をどのように先生が使いこなせるのかという点で、先生の力量にばらつきがあると困るだろうという意見があれば、先生の力量が試されるとなればそれぞれに工夫が講じられていき、結果授業水準が向上するだろうという意見が出されるなど、思ったよりも活気ある議論だったようにも感じました。歴史、公民分野とも「つくる会」の教科書を採択した人は一人もいませんでした。

 肝心の歴史、公民分野の教科書ですが、結局は歴史分野は東京書籍、公民分野も東京書籍が選ばれました。「つくる会」の教科書については「読み物的」という意見が出ました。特に私自身は「この教科書については、もっと多面的に物事を捉えられるようになってから読むべきものだろう。かなり主張が強く、「読み物」としては興味深いのかもしれませんが・・・。」という見解に同感でした。

 ところで、公民分野の教科書を選ぶ際(こちらも、あっさりと「東京書籍」に決定しましたが)、教育長から「公民分野の教科書としては経済分野よりも政治分野から入ることが望ましい」という意見が出されました。「民主政治、憲法から勉強をして、政治参加の意欲を高めていくようなことが必要」という認識をお持ちのようでした。議会においてはめったに聞くことのできない教育長の積極的な発言には驚きました。

 でも、今日の話でも出ていましたが、中学校、高校にも通じて言えることですが、「近現代の歴史が薄い」のが現状で、ここは学校の課題です。教科書全般についても「近代以降もしっかりと記述して欲しい。」という意見が出ていました。現在のことはわからないものの、私にとって「歴史の授業」というのは「ひたすら年号を覚える」に終始していた記憶があります。「歴史を学ぶ意味」を全く理解もせず、受験のために、テストのために勉強をする傾向が強かったなあと・・・。これもまた問題ですね。

投稿者 hisaka : 2005年08月19日

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