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2005年05月06日

ベルブゼミ

 永山公民館の高齢者セミナーが衣替えをし、昨年から「ベルブゼミ」となっています。このゼミの公開講座に参加していました。「多摩市の20年後を予測する」というテーマで多摩ニュータウンタイムズ社主の横倉さんと首都大学東京(都立大)の上野淳教授がパネリストでした。
 横倉さんからは多摩ニュータウンを受け入れた多摩村民の視点から話がありましたが、ニュータウンの受け容れで失ったもののうち最も大きなものは「政治を失くしてしまったと言うこと」と指摘していました。地域リーダーを選び出すことが政治を蘇らせるために必要という主張でしたが、私にはそのイメージがあまり湧きませんでした。いわゆる地域リーダーと言えば、かつての‘ムラオサ’が思い起こされるからです。

 さて、私が興味深かったのは上野教授の話でした。先生は多摩ニュータウン関連の研究など実績のある方ですが、多摩市内で行なった調査をもとにした話でした。多摩ニュータウンと言えば丘陵地、坂道の多さなど移動の問題が何かと話題になります。急な階段といえば、バス停から団地まで、そして団地でも一階から自宅階までの昇降も含めて今後の多摩市にとって頭の痛い課題です。
 先生は団地居住高齢者の生活様態の研究から、外出における移動の問題はもちろんのこと、もっと注目すべきは住宅の中のバリアであると指摘してました。特に「安全で快適なお風呂とトイレの必要性」ということで、団地の多くはバリアフリー構造になっていないため、高齢者の日常生活を厳しくしている実態が報告されました。足腰が悪くなると自宅のお風呂にも恐くて入れないとか、トイレに行くのも大変だったりと、日常生活そのものに支障が出てきます。
 これからは古いものを壊して建て直しという時代ではなく、長持ちさせる、少しずつ改良を施しながら住みつづけることを考える時代だと言うのはそのとおりです。団地の建替えもなかなか大変です。その点から考えても、行政の支援策として「住宅のリフォーム助成」を今後もっと強化すべきだとおっしゃっていました。同感です。
 ゼミの参加者からはニュータウンの住人について「今、不便とか住みづらいとか言うけれど、もともとは自分で選んでそこに住んでいるのではないか。今更そのことの不満を言っても…」という趣旨の発言がありましたが、上野先生は多摩ニュータウンのこれだけの住宅ストックについて何も手を施さなければ、ゴーストタウンになることが目に見えていると言っていました。高齢者が安心して住み続けられる街にはなれないということです。「自立して健康だった高齢者がひとたび怪我でもして家にいるようになると一気に弱ってしまう可能性が強い。」、そのことをどれだけ回避できるのかが鍵なのです。だからリフォームと言うわけです。そのくらい住居内におけるバリアの問題、そして玄関外からも階段というバリアが高齢者等にとっては厳しい環境なのです。
 
 上野先生のスタンスでうれしいことは、ご本人も多摩市在住で「老いても安心して住み続けられる街」というのは自分自身のテーマでもあるというところです。先生の調査研究から見えてきた高齢者の持続的継続居住の条件、それに対して行政ができること、多摩市が「老いても安心」を確保できるように自分自身役立ちたいという言葉に力強さを感じました。

 今日の公開講座ですが、ベルブゼミ生として登録をしている人以外にも、私のような一般参加者が多数いて、永山公民館の集会室は席が足りなくなるほどの盛況ぶりでした。(比較的)高齢の方々の‘学び’に対する意欲の高さを感じました。

投稿者 hisaka : 2005年05月06日

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