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2004年05月13日

まずは障害者モデルを。

 午前中に多摩市手をつなぐ親の会の総会に出席しました。会員が3年前くらいから伸び続け、今では175名に達していて、障害児(者)数が増加していることを実感しているとの話がありました。もちろん、その分析も当たっているように思いましたが、私は、この会の活動内容が充実していることや、また、ハンディを背負っている事について今までは閉じられた空間の中で抱えこんでいた人たち(家族含めて)が昔と比較すれば社会に出やすい環境になりつつあるとも考えられるように思いました。

 総会には市長、議長や行政の関係者に国会議員、都議、そして市議会議員がズラリならびそれぞれ挨拶をしましたが(総会自体よりも挨拶のほうが時間が長かったです。)、一言で短く挨拶をしようと考えたとき、私がふっと気になったのが「手をつなぐ親の会」という名前でした。
 つまり、今では「地域共生」が当然の謳い文句が如く語られるのですが、昔は「まずは、親どうしが手をつなぐ」ことからでしか障害児(者)を取り巻く環境を考え、行動出来るような場がなかったということを表していると思ったからです。すでに総会も36回目を数えているのですが、その歴史をたどってみると、社会環境の変化も見えてくるような気がします。今は、ボランティアやNPOなど「共生社会」という理想を実現するために活動をする場所が増えていて、当事者らのみではなく地域が支えることへの理解とその大切さがじわじわと広がってきました。もちろんまだまだ不十分な点はありますが、時代は確実に前向きに歩んでいると思います。

 それにしても、財政難を抱える市長の焦りと言うのか…?市長の挨拶では「行財政再構築」に関する説明がありましたが、財政難の話はともすれば本当に展望が描けなくなり、夢がしぼんでしまうし、元気がなくなります。市民とともに知恵を出し合うことで、何とかまだ財政的な体力が残っているうちに再建したいというのが市長の方針だと痛いほど感じるのですが、逆に私は「希望が持てない」とつながりやしないかと危惧しています。今日もその思いを持ちました。

 デンマークやイギリスでは脈々と流れる福祉政策の基盤に「障害者」が存在します。まずは「障害者モデル」から政策が始まり、そしてその上に「高齢者モデル」があるそうです。ところが日本では「高齢者モデル」が「障害者モデル」と連動して確立していない傾向があります。多摩市の健康福祉推進プランを見てもわかりますが、とにかく「高齢者福祉」分野の計画の分量は介護保険も含めてですが、障害者、児童、健康などの他の分野に比べて圧倒的です。このことを考えてみても、「障害者モデル」から出発している諸外国の政策方向との違いが見えます。
 私もつい最近に、この話を聞いたのでまだ勉強不十分ですが、政策の打ち建て方として「障害者モデル」を礎に据える事がとても大事だと感じています。

 今日は、ちょうど午後からも「障害者の就労支援」をテーマにした学習会にも参加し、アメリカの障害者法(ADA法)のことなども含めてコミュニティサポートセンターの斉藤明子さんに話を聞きました。アメリカでも1960年代には養護学校、施設、作業所が障害者の居場所であったけれど法律ができた効果がとても大きかったと言います。特に事業者に求められる責任、「ハンディを理由に就労を断われない」ということ、裁判などでも「就労能力」という部分について、障害者が証明する義務はなく、雇用者側にその説明責任が求められるところが法律の最も特徴的なところだと指摘していました。
 斉藤さんはもう20年以上も障害者支援分野で活動をされていますが、精神障害分野が日本ではものすごく遅れているとおっしゃっていました。これは医学上の問題とされてきていて、ここにかかっている医療費は約55億円だそうですが、精神障害者が社会的入院を解消するために使われているお金は約3千万円しかないのが日本の現状であると話されていました。この数字にも考えさせられました。

 また、障害者のためだけに用意されているような場所がたくさんあると思います。多摩市でもいわゆる「福祉的な場所」として整備されているところがありますが、やはり誰もが利用出来るところに障害者も参加していく事が大切だと強調されていました。ここにはもちろん社会の意識もあると思いますし、障害の程度によっても変ってくるのだと思いますが、「本人中心」ではなく「親中心」、実は保護者の安心が福祉施策の柱になってきたことも指摘されました。これはある分、外れていない見解だと思います。これは児童福祉などの問題を考えても当てはまる事のように思うからです。
 「誰にとっての社会サービスなのか?」…福祉分野に対しての考え方はもっと当事者中心であるべきです。その視点に立って政策点検をしなくてはなりません。そして障害者モデルを点検し、高齢者モデルとのつながりを見出しながら、一つ一つの事業を体系化させていく事が必要な作業だと考えているところです。

投稿者 hisaka : 2004年05月13日

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