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2004年04月05日

現場の話を聞いてみれば・・・

 ここ半年ほど、移動困難者と移動サービスについて調査活動などをしています。議会の「立法」機能を高めていくためには、やはり議員自身が立法技術を身につけていく必要がありますが、そのテーマとして選んだのが「移動サービス」の問題です。

 多摩市のエレベータ無し集合住宅においては「移動」が深刻な課題になるに違いありません。足腰丈夫なうちは大丈夫ですが、それでも私の知り合いはまだ高齢者の域に達していないものの、買い物袋を下げて5階までたどりつくのは結構大変だともらします。ニュータウン地区は一気に高齢化することは目に見えています。
 いつもは聞き流している朝のニュースですが、今日はたまたま多摩ニュータウンと耳にさわったので、「なんだろう?」と聞いてみると、人口調査で全体には現在約19万人の住人がいるそうですが、そのうち20~24歳が9.6%で50~54歳までが8.3%という割合になっているとの結果が出たそうです。20~24歳までの割合が比較的高いには、ただ単に学生の一人住まいが多いからという理由です。ニュースでは「偏りある人口構成」と紹介されていました。学生が卒業後に多摩に定着するとはとうてい思えないので、それこそ高齢化への備えをしておく必要があるでしょう。ニュースの中でもそのことを指摘していました。しかし、この将来を悲観したくはありません。そのためにも「移動の自由」という権利が将来に渡って保障されることを一つ考える意義は大きいと考えています。
 
 今までは「移動制約者」の問題は障害者が中心で考えられ、交通バリアフリー法制定への運動などの展開をしてきましたが、今では高齢者や妊婦、ベビーカーなどなどまで含まれてきて、その定義も幅広いものになりつつあります。「誰でも好きな時に好きな場所に移動ができること」・…これは当たり前のことではないのです。移動サービスの問題に関わるようになり、そのことを実感させられています。

 さて、この「移動サービス」の重要性を考えた時、地域ごとにサービスの位置づけなどを明確化していく必要があるということで、そのためには‘まち’でルール化を試みるのが、今回の議会の立法機能を活かしてみようとの活動になっています。つまり条例化をしてみるのです。
 私自身は、まだ条例化をしていいものかどうか?と躊躇する部分もあります。移動サービスの問題は「白タク問題」とも考えられてきた面もあり、しかし採算性の面からは営利企業では担いきれないサービスであり、ボランティアやNPOなどが活躍しているのを黙認してきたとの状況が続いてきました。しかし介護保険制度が始まったことで、一気にクローズアップされたことにより国土交通省と、厚生労働省間での折衝‘せめぎ合い’がなされてきたのです。
 ようやく先月に国土交通省からもガイドラインがでたばかりで、実際に移動サービスを提供しているグループなどではまだまだ様子見というの現況です。そんな渦中で条例提案をすることの意義などを見定めていく必要があります。
 そこで実際に、現場の事業者(すべてNPOでしたが)にヒアリングをしたのでした。ずばり私たちが策定を試みている条例の原案に目を通し「この条例が目的とするところや、獲得をしたい目標みたいなことがわからない。」と言われました。そして現場の実感としては、国土交通省が今回公表したガイドラインの方が条例よりも弾力的な運用ができそうに思うとの感想を聞くことができました。条例を制定するということは、ある意味で「規制」をかけていくことにもつながってきます。一度制定をすると改正手続も困難です。そのことを考慮しながら立法していく必要性があり、まだまだ条例化するには検討を重ねなければならないとわかりました。

 それ以上に、今日は地域ごとに事業者の置かれている状況がまったく異なることがわかりました。例えば人件費のあり方も経費負担の方法、事務所がなくメールと転送電話だけでサービスをまわしている事業者もあり、苦労が大きさを知ることができました。そのことからすれば、私自身は何らかの形で市民活動を支援するような方策をもう少し進めていけたら…と思いますが、「じゃあ、なぜ移送サービスなのか?」と尋ねられたなら、そこに対して十分な回答を持ち合せるまでには至っていません。これも「移動サービス」をテーマにした条例化をするために、私自身が地域事情を把握して、克服していかなければならない問題です。

 今、多摩市で移動サービスを行なっているNPO事業者の話では当初は610件ほどで現在は3500件ほどに仕事が広がってきているそうですが、実態は…といえば、人件費についても時給は事業スタート直後から変わらずに1時間750円、ガソリン代など経費は実費請求の形を取っているそうですが、何でも、走れば走るほどに赤字になるという経営実態があり、やっと事業がまわせるようになってきたけれど、それでも黒字に転換することは困難だと言います。もちろん利用者にも負担を求めているのですが、それにも限りがあります。この実態の厳しさを知れば、新規に事業の立ち上げを考えた段階で挫けてしまうというのもわかります。そこにある不採算制を克服し、なんとか「移動の自由」を確保していく…そのために行政が果たせる役割はあるのかもしれません。
 しかしながら、今日の話の中では「だからといって、行政の補助金を当てにはしたくないし、当てには出来ない時代になっている。どうやったらなるべくお金をかけないで事業を展開していけるのかをもっと考えなくてはいけない…」これが事業者の生の声であり、私たちとも共有している悩みの部分だと思いました。
 
 「移動の自由」が誰もに保障されている当たり前のことではない…という認識を少しずつ広げていくことが大切。時間がかかりそうだけれど、まずは私が身近で手軽にできることだなと思いながら、家に帰りつきました。

投稿者 hisaka : 2004年04月05日

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