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2004年01月30日

給食におけるアレルギー対応食のこと。

 長野県松本市では5年前ほどからアレルギー対応の給食を実施しています。現在は小中学生あわせて41名の生徒が対象です。給食センター方式ではなかなか個別対応は難しいといわれているわけで、多摩市ももちろん該当するわけですが、「なぜ、松本市ではこのような取り組みが出来るのだろうか?」そこに一番の興味がありました。
 理由は簡単でした。「市長の方針」だそうです。市長がテレビで食物アレルギーが増加して、子ども達が大変苦しんでいるという状況を見たのがきっかけで、他の子どもと同じように給食が食べれるようにアレルギー対応に取り組めないものかと調査研究の指示があったそうです。市長の方針さえあれば、職員は動くわけです。どんなに難しく、手間がかかることであったとしても・…。といういい事例に出会えたという感想を持ちました。
 この取組みは全国でも先進的で非常に注目を浴びていて、給食センターへの視察も非常に多いとのことですが、その状況を物語るように今日も市内だけではなく市外、遠方からの参加者が多くてびっくりしました。
 
 アレルギー対応といっても全てに対応出来るわけではなく、やはり行政が責任を持てる範囲内での対応になっています。というのも近年のアレルギーは非常に多様化していることもあり、ほとんどの食材に対応できないような生徒の場合には、行政としての対応が難しい場合があるからです。リスクが大きすぎると判断した場合には「対応不可」とお断りをする時もあるそうです。担当課長さんは「行政は臆病なので」とおっしゃっていましたが、それでも精一杯の対応はしているみたいでした。特にアレルギー専門の調味料を使用してもらいたいとの要望があり、当初は「できない」としていたようですが、今では菜種油などをはじめとしたアレルギー対応調味料も使用して、出来る限り多くの生徒に対応できる努力をしています。
 最終的には教育委員会において「アレルギー対応」のGOサインを出すそうですが、教育委員会のメンバーには医師がいるので、リスクについての判断も慎重に行われているようでした。
 学校では一ヶ月前に食材などまで細かく記載した献立を配るそうで、それにプラスして、アレルギー対応給食の生徒には、対応食メニューも配布されます。例えば「桜海老のかきあげ」が「ひじきのかきあげ」に変更されたり、または「鶏肉入りのうどん」が「豚肉入りのうどん」に変更するという感じです。一人一人の状況は違っているのでもちろん個別対応になっていて、基本給食メニューで食せる物はそれを食べます。形や、色も見た目もほとんど同じようなのでとても好評なようです。食材を変更するという工夫を出来る限りしますが、それでも心配な場合には家からの持参をお願いする場合もあるそうです。
 給食センターにはアレルギー専用の調理室があり、正規の調理員がローテーション制で2週間ずつ交代で対応食を作るそうです。そしてアレルギー対応食専門の栄養士がいます。栄養士は一ヶ月前から保護者と献立の調整をしながら、個別対応をしていくのですが、それはそれは非常に時間や正直手間もかかる作業だと感じました。当初は郵送により、事前に配布したアレルギー食献立の不都合などを保護者の方から再度指示を仰ぐような形だったそうですが、今では給食センターに直接足を運び、栄養士と個別の面談をしながら最終個別献立の決定をする保護者の方が増えたそうです。当の栄養士さんは「私に会うことで安心出来るみたいです。」ということ、そして何よりも「保護者の気持ちがわかるようになってきました。」という正直な感想を述べてくださいました。
 これこそまさに私は職員の仕事をする励みだし、喜びで、実感だと思いました。それからもう一つ、長野県の知事の方針により「地場製品(もちろん調味料は別)100%」の給食を年3回実施してほしいという指示があるそうで、そのために県から自治体に一食あたりの補助金(確か、数10円でした)を出しているそうです。農業振興とリンクしているということもありますが、何よりも「地産地消」がこんな形で広がっていくことはすばらしい取り組みだなと思いました。
 多摩市でこのような勉強会が開催されたことをとてもうれしく思います。多摩市に期待してもいいのかな~・・・・と感想を持ちましたが・・・。

投稿者 hisaka : 2004年01月30日

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