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2003年09月22日

「趣旨採択」という逃げ道

 9月議会最終日でした。10月に行われる決算特別委員会の総括質疑から始まり、市長提出議案、請願と陳情の採択などが行われました。私が議員になってから、議員削減提案の時以来の活気ある最終日でした。各会派とも意見討論をしっかりと行ない、立場を明らかにしました。これはとてもいいことだと思います。

 市長提出議案では6月議会で否決された手数料条例、焦点は住民基本台帳カードの発行手数料の新設でしたが、6月議会とそっくりそのまま同じ提案だったものの挙手多数で可決されました。私は会派として総務常任委員会に手数料を1,500円にすべきとの修正案を出していましたが、これは委員会において既に否決されていました。おそらく本会議でも否決されることがわかっていたので、原案(500円)に対しては今回も反対の立場をとりました。

 さて、この議会では「趣旨採択」が非常によろしくない制度であることが表面化したと思います。議員にとっては、諸手を挙げて賛成はできないけど、でも反対というわけでもなく…とグレーにするのが「趣旨採択」。つまり「請願者や陳情者の言わんとすることは理解出来るけれども・…」というニュアンスが趣旨採択の意味です。

 この議会では2つの請願が提出されていました。
 1つ目は「義務教育費国庫負担法の改正に反対する請願」です。これは総務常任委員会で挙手多数で「趣旨採択」でした。この請願は国に対して意見書をあげてもらいたいとの要望でした。
 委員長報告(*下記参照)では「趣旨採択すべきもの」だったので、議長は委員長報告の結果に対して挙手を諮りました。結果は「趣旨採択」は少数で「不採択」になりました。
 実は意見討論の中では、「趣旨採択」に挙手しなかった人は全員「採択すべき」との立場でした。どつらにせよ、議会のきまりとして意見書をあげるのは全員一致が原則です。その意味では趣旨採択ならどちらにせよ意見書を送付することは不可能です。
 つまり、委員長報告にて「趣旨採択」にするという時点で、この請願は「不採択」という結果になっているわけです。

 そしてもう一つは「私立幼稚園児保護者補助金の増額・私立幼稚園児健康管理費補助金請願」。この請願は文教常任委員会で不採択という結論でした(9月16日の活動報告参照)。この請願は具体的に補助金を2,700円から3,500円に増額することと、健康管理費補助金を新たにつけることを要望するものでした。今、行政では財政再建プランを作成中で補助金の在り方など全てに見直しをかけているところであり、補助金増額を議会としてダイレクトに要望することは難しい状況です。
 例えば、同じように子育て支援関係の陳情で保育園への補助の減額を慎重に行って欲しいとか、子育て支援に十分な予算を求める陳情、学童クラブ・公立幼稚園、保育園の見直しは慎重に審議をして欲しいという陳情等は採択されています。これらは全て子育て支援を充実するための予算を確保してくださいとの願いです。
 ところが具体的に金額をどうこうする…となれば、なかなか審査が難しいわけです。そこで多くの議員は「趣旨採択」と結論を出したのでした。もちろん、私たちの会派も「趣旨採択」にしました。
 委員長報告に基づいて「不採択すべき」で諮ったところ、挙手はゼロ。そして原案に戻って「採択すべき」で挙手を求め、結果は挙手少数…よって「不採択」になりました。他の人は全員「趣旨採択」というわけです。
 でも、この請願に対しての「趣旨採択」の結論は半ば「不採択」に近いところに位置します。なぜなら先にも書いたとおり、「補助金増額を具体的金額を明示し、現時点で要求することは難しい」と多くの議員は考えているからです。

 この「趣旨採択」という制度、私はとっても宙ぶらりんに思います。私も趣旨採択の結論をとることもしばしばありますが、やっぱりこれは「逃げ道」だなと感じます。物事には白黒はっきりさせることは難しい場合があるのは当然です。「趣旨採択」というグレーゾーンを設けることで、いくらでも拡大解釈可能です。とても便利な選択肢だと思います。市民にとっては「不採択」になるよりは、「趣旨採択」のほうがいいと思えるかもしれません。でも、本当にそういう結論を議会が下すことがいいものかどうか…再考する必要があるのではないかと思います。
 そして、私は請願や陳情を提出する市民の方々にもぜひ会派ごとの意見討論に耳を傾けてもらいたいと考えます。結果の○×だけを見るのではなく、どのように判断をしているのかの立場を表明する意見討論が重要です。当然に、市長をはじめ行政側も意見討論きちんと受け止めるべきです。結果だけを見るべきではありません。
 その意味で、最終日の意見討論が活発になり、議会全体に活気が出てきた気がしました。


*委員長報告:議案(即決案件は除く)や請願、陳情については通常、各常任委員会に付託されます。その委員会での議論や結果を委員長が報告をします。最終日、本会議場では委員長の報告に対して「賛成」「反対」を諮ります。

投稿者 hisaka : 2003年09月22日

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