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2003年08月06日

続・補助金改革を学ぶ

 会派で千葉県我孫子市に視察に行きました。目的は「補助金の改革」を学ぶため。去年、東京ネットの勉強会でも市の担当者の方をお招きして話を聞きました。けれども去年が改革に着手してから3年目ということで節目の年でした。区切りを過ぎた今年度、どんな取組みをしたのか、改革の成果なども含め、再度、話しを聞く価値があるはず!と思い、今回の訪問となりました。

 多摩市の行財政診断白書を作成するにあたっても、職員が我孫子市まで話しを聞きに行ったそうです。去年の決算特別委員会で、東京ネットの勉強会で学んだ我孫子については参考にして欲しいとを提案した経緯があります。ちょっとは生かされたのかもしれません。我孫子市の改革は全国でも先進的な取組みだったので視察も多いとのことですが、「必ずしも他の自治体で成功しているわけではありませんよ。」という前置きがあったのが印象的でした。

 これで八王子と我孫子と2つの事例を聞いてきたわけですが、両方に共通している点があります。市の単独補助金について、全てゼロベースで、第三者機関による厳しい見直しをしたということです。補助金の既得権化はよく言われることですが、それを会計検査院OBの市民も交えた委員会を設置し審議をしたという点です。そして仕組みとしては、新たに公募制を導入しています。公募制の導入については両自治体でも新たな市民活動、NPOなどへも平等に補助金取得の道を開こうとするのがねらいです。八王子では活動の立ち上げ資金としての補助も認めていますが、我孫子市はあくまでも、活動の一部を補助するのが‘補助金’である…との整理をし、活動基盤がきちんと整備されていることは要件になっています。

 さらに我孫子市では市の施策的補助金までも交付は最長3年間までとしています。公募については毎年募集しますが、見直し時期にくれば全て一旦白紙に戻る仕組みです。(初年度応募は3年間、2年目応募は2年間、3年目応募は1年間というふうになり、一斉見直し時期には全てがゼロリセットになるのです。)もちろん市の単独補助金についてのみで、改革の成果としては、全体の財政規模に比して微々たる金額とも言えるかもしれません。けれども補助金を出す側(市)も受け取る側(市民)にも考えてもらいたいというねらいにおいては効果を発揮しているようです。前例通りに仕事をしていていいわけでないという職員の意識改革、特に次の削減は自分たちの給与に及ぶかもしれないという危機意識は芽生えているということです。そして市民側も自立した活動を模索していく必要性があるわけで、市民活動全体が活性化していけるとの期待があります。
 
 今年度は第2期目の3年間をスタートしています。昨年度は「第一期の終了とともに継続して補助すべきかどうか」という審査観点を付け加え第三者機関による評価を行いました。このメンバー5名は「これほど大変な委員会は経験したことがないよ。」ともらすほどに真剣に関わってくれている模様です。「メンバーの人選が成功した。」と担当者は語っていました。市の職員では手をつけられない分野にも取組めたと言います。その中には議員の政務調査費についても含まれています。

 何はともあれ、ここまで徹底して補助金の見直しをするのは大変な作業です。これまで交付し続けてきた団体に理解してもらうのも一苦労です。特に我孫子市では医師会、歯科医師会、薬剤師会との関係調整には難しかったといいます。これは我孫子市の話ではありませんが、医師会などへの補助を廃止したとたんに、市の健康センターなどへの協力を拒み、撤退されてしまった…という事例もあります。我孫子市でも当初は補助の必要性ナシと判断されましたが、その後「必要な事務経費」を市が負担する形を取り、今は補助から事務委託へと方式変更をしたそうです。
 …ってことは「補助」がダメなら、「委託」に姿を変えるという技術があるわけ?と思ったわけですが、それはそれできちんとした根拠などが説明できなければならず、そう簡単に変更が認められるわけでないというのが財政担当者の立場でした。

 いずれにしても既得権化しがちな補助金問題に手をつけるのは難しいことですが、八王子も我孫子にも、市長のリーダーシップの発揮ありきで改革が進んでいるのがよくわかります。市長自身も市民にいい顔ばかりしていられないという覚悟がきちんと備わっているような気がしました。多摩市では一体どのようになっていくのでしょうか?

 それにしても、我孫子市の昨年度の実績をみると市単独施策的補助金の交付件数は45件で393,342千円ですが、国や県の制度がらみの施策的補助金は交付件数が25件で総額664,621千円になっているところに私は地方分権への距離を感じてしまいました。(ちなみに公募制による交付は42件で総額19,504千円です。)

投稿者 hisaka : 2003年08月06日

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