« 行財政診断白書・・・つづき | メイン | 意外にきれいかも?・・・大栗川 »

2003年08月01日

自治基本条例・・・杉並区の場合

杉並区では昨年、自治基本条例が成立し、この5月から施行されています。多摩市の市民ワークショップ形式(多摩市市民自治基本条例を「つくる会」)での市民自治基本条例の策定は何せ、新しい時代に市民と一緒にまちづくりをしていく手法として、全国からとても注目されてきました。一昨年前の秋に開催した「つくる会」が主催の中間報告会にも杉並区の職員の方はいらしたそうです。そのときには、とにかく会場の熱気や、関わっている市民たちの生き活きした様子、さらには職員のプロジェクトチームとの合同で行われたフォーラムという点で「非常にうらやましいなあ…でも杉並ではそこまでは出来ないな…」と思いを持たれたとの話でした。
 杉並区では懇談会形式で公募市民7名を含む全15名によって自治基本条例を策定してきました。行政側が資料を示しながら、メンバーとともに会議を進めたそうですが、「自治基本条例」というテーマはとても難しくて、なかなか議論が出来なかったといいます。杉並区でも懇談会主催で中間報告会を開催しながら、懇談会以外の市民からの意見もとり入れる工夫をしたそうです。だんだんと会を重ねるにつれて、最後の方になって、ようやく懇談会メンバーのまとまりが生まれてきたというような話をしていました。
 
 多摩市の場合は、初めから喧喧諤諤の議論が繰り広げられました。とにかく市民どうしで意見調整をして、途中からは職員のプロジェクトチームと合流し、何とか最終提言案にまでこぎつけたわけですが、その過程は本当に楽しくて、面白い作業でした。
 市民と行政…というと何となく壁がありそうで、行政職員側は「市民に何を言われるかわからない・・・。」と最初は構えもあったかもしれません。今まで、市民は行政に要望をするだけの存在(要望型市民)として捉えられてきました。でも今は、市民の在り方も随分と変化をしています。市民側も行政職員を怪訝な目で見つけてしまう…という部分は、当初はあったのかもしれません。でも行政職員とともに議論をする中で、それぞれ先入観を崩せたように思います。
 市民側は「行政職員と一緒に議論が出来てよかった。」という感想を口々に話しています。行政に話しても「暖簾に腕押し」ではないことがわかったからです。私はこういう経験の積み重ねが、新しい時代をつくる「市民と行政との協働」を前進させていくと考えています。
 
 さて、多摩市では突然の市長交替によって、市民自治基本条例の取組みが少しばかり慎重姿勢に変わってきました。杉並区の職員の方は、秋の中間報告会で出会った担当職員と市長が交替した以後にもう一度話しをした時の担当職員の様子は、同じ人物でないかのような、全くの「仕切り直し」されていたと語っていました。そのことが今回の市民提言案と行政素案の違いとなっているのかもしれません。

 杉並区の自治基本条例が議会でどのように審議されたのか、これに関心がありましたが、議会では2日間特別委員会(全議員参加)によって行政とのやりとりがなされ、議会側から一部修正案を提出し、条例が確定したといいます。
 行政側では「議員の責務」については、なかなか書きこめなかったけれど、議会からの提案で「区議会議員は、区民の信託にこたえ、区議会が前二条(区議会の役割と責務・情報公開や提供など)に規定する機能等を果たせるよう、誠実に職務遂行に努めなければならない。」ということを追加したそうです。また、条例も「自治基本条例」として区の憲法的存在ならば、条例の位置づけに「最高規範」と書きこむべきとされ、最終案には「最高規範」という言葉を加筆しました。
 行政提案だったあまりに、「議会だってやらなくくちゃ!」という雰囲気が高まり、保守系議員がかなり勉強を積み重ねていた…という話しも聞きました。

 自治基本条例を制定して、情報提供の仕方などにも少しずつ変化の兆しが見えてきたといいます。議会側も付帯決議をしていて、条例の周知徹底、最高規範である自治条例と既存条例との整合性を早急に図ること、そして自治基本条例は全く新たな自治立法の試みなので、施行後一定期間の施行状況等を見つつ、改正をするなどを区長に求めています。今後、これを制定した後でどのように進んでいくのかが大切、まさに制定することがスタートだという認識の現われでしょう。
 
 杉並区がお手本のひとつにした多摩市。でも、杉並区は今度は先輩格になります。議会での活発な議論を経て、最終的な条例制定へとつなげていきたいと思いました。

投稿者 hisaka : 2003年08月01日

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
/427