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2003年07月29日

もっと当事者の声を聞いて!

 先日、発表された「都の心身障害教育の在り方について」の中間まとめは障害児を持つ保護者に大きな不安を与える内容でした。私が都庁に出向き説明を受けた後に募集されたパブリックコメントでは、何と1,200通も意見、要望が集まったそうです。都の教育委員会としてこんなに大々的にパブリックコメントを募集したことも初めてで、その反響の大きさにはびっくりしています。
 この中間まとめを受けて、都のほうでも職員を上げて全都、各地域で説明会を開いていますが、このような取組み自体もほぼ初めてのことだそうで、市民との対話なしに物事を進める時代ではないという認識がようやく都レベルにも浸透し始めているのかなと思いました。

 さて、この中間まとめですが、都側は一生懸命に説明会などを開催しているわりには、その存在自体があまり知られていないことが大きな問題です。7月中旬に多摩地域を対象にして開催された説明集会にも多くの保護者が殺到したと聞いたので、ぜひ多摩市で説明会を開こうという話になりました。そして急遽、都政ミニフォーラムとして開催したのが今日でした。

 実は、参加者が少ないかもしれない…という不安が昨日まではあったのですが、何と予想を越えて50人ほどの保護者や教職員など関係者が集まりました。先にも書きましたが、急遽開催をしたので、それほど広く宣伝も出来なかった割に、こんなに人が集まるところを見ても関心の高さを伺い知ることが出来ます。それでも参加した方からは「もっと他の人も聞きたいと思う。」という感想を頂きました。

 さて、説明会には中間まとめを出した「東京都心身障害教育改善検討委員会」の事務局職員が来てくれ、丁寧に説明をしてくれました。そして会場との意見交換をしました。

 この中間まとめは今後の心身障害教育が、国が示した「統合教育」を目指していくに対応するとの方向性をまとめたもので内容が非常にあいまいです。もともとは特殊学校に対するニーズの高まりで、教室不足の解消をしていきたいというのが一番のねらいで、そこにプラスでLDやADHDなどの子どもたちへの教育課題がつけ加わったという印象を受けます。つまり、都も厳しい財政難の中で特殊学校を新設することは無理…それなら知恵を出して今ある資源を活用しながら、今以上の教育環境をつくっていくしかないだろう…というのが根本の根本の本音のようで、「現状をもっと良い方向に変えていこう」を出発点にしていたわけでないことに私は疑問です。

 財政難を契機としていても、そのことで今まで以上に、いい方向が示されるのなら納得ですが、当事者の方の今日の意見を聞いているとどうも「うさんくさい」という感じがしてしまいます。今でも予算がないとして、十分な教員(アシスタントも含めて)が確保されていないのに、それがどのように中間まとめの示す「障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じて適切な教育的支援を行う」ことが出来るのかという疑問を多くの方が持っているようでした。

 不安が生じるのも当然のことです。さらには、この改善検討委員会のメンバーですが、学識経験者6人、団体関係者(障害者協会や連盟など)5人、区市等(教育長会から)3人、都立学校長(養護学校)6人、知事部局(健康局、福祉局、産業労働局)3人、教育庁(都の教育委員会)5名と驚くべき人数で構成されています。これに対しても、もっと保護者の声を聞いてもらいたいとの要望が強かったので、来月からは特殊学級のある小中学校代表として新たに保護者を含む4名を追加しますとのことでした。それにしてもこんな大勢で検討をするとは、一体どんな会議の運営をしているのか?議論がされているのか?と思ってしまいます。

 今日の参加者の多くも、そこに疑問を持っているようでした。専門家のような人ばかりで議論をしても仕方ない。もっともっと保護者の意見や現場の声を聞いてもらいたいという声が上がりました。私も同感でした。ほとんど何も知らされず、突然示された中間まとめに対する動揺の大きさは語り尽くせないといいます。
 私もこれを見て、地域レベルでのきめ細かな支援と言われても、多摩市が対応出来るかを考えると「ちょっと難しいのでは?」と思ってしまいます。体裁だけは整えても、中味がついていかないように感じるからです。都は市に対しても、もっと詳しく説明してもらいたいと考えています。それは財政措置についてもです。都の財政難を市に転嫁しようとしているなら論外だからです。地方分権の一番のほころび(団体同士の責任のおしつけあい)が出てきそうな話です。
 
 ところで今日の参加者の中から明らかにされたことです。東京都としてもLDやADHD児の数を把握するために、全学校の全生徒対象に調査がなされるそうです。担任の先生が一人一人の生徒の状況を調査票に合わせてチェックするみたいです。でも、その調査票「もじもじしている」「目がキョロキョロしている」みたいなことが質問項目であがっているそうで、教員自身がLDやADHDに対しての知識が浅い中で、どうやってこの調査をするのかという声がありました。
 おまけに、それによって担任自身が生徒に何となくLDやADHDかもしれない…みたいな間違った認識のレッテルを貼ることにもつながるし危険。しかも、保護者たちがこの調査の存在を知らないのも問題との意見も出されました。

 「知らず知らずのうちに、色んな事が決まっていくことが不安で怖い・・・もっと知らせてもらいたい。」保護者から出されたこの意見に全てが集約されているように思いました。

投稿者 hisaka : 2003年07月29日

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