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2003年06月03日

コーデックス基準って?

 生活クラブ生協の共同購入委員会のスタート集会に出席し、遺伝子組換え食品をめぐる動向について話しを聞いてきました。恥ずかしいことですが、コーデックス基準について初めて知りました。

 コーデックス委員会が決める食品基準のことをコーデックス基準と言います。コーデックス委員会というのは消費者の健康を守り、食品貿易の公正を図ることを目的にFAO(国際連合食糧農業機関)とWHO(世界保健機構)によって設置された機関です。
 コーデックス委員会は二年に1度の総会が行なわれ、各部会ごとに検討されたガイドラインや規格の承認、基準の採択を行います。日本は1966年に加盟しています。

 なんと驚きは、コーデックス基準は世界基準ですが、強制力をもってないことです。ただ、基準に従ってないことを理由にしてWTO(世界貿易機構)に提訴することができます。(これを「紛争パネル」といいます)。つまり基準を守らなくても、何とか上手くやれる・・・すり抜けている現状があるのです。

 さて、コーデックス委員会は30弱の部会がありますが、そのうちバイオテクノロジー応用食品部会は日本が議長国になっています。この部会で遺伝子組換え食品についての議論がされています。アメリカやカナダは推進派ですが、EUは反対派で、部会内での議論は喧喧諤諤だったそうです。

 食品の安全基準については、アメリカとEUは既に「紛争バネル」に持ちこまれる対立をしています。EUが成長ホルモンを使用した牛肉を輸入していることに対して、アメリカが提訴しました。牛肉を輸出できないことを理由にアメリカはEUに対して報復関税をかけたそうです。ところが、EUはこのアメリカの強権的態度についても強気です。EUは未だに成長ホルモン使用の牛肉について輸入解禁していないのです。これはEUが自給率が高いからこそとれる態度です。日本との立場の違いを思い知らされるエピソードです。
 アメリカとEUの食の安全性に対する意識差を感じます。もちろん私はEUの主張を支持します。

 今のところ、部会では①モダンバイオテクノロジー応用食品のリスクアナリシスに関する原則②組換え遺伝子植物由来食品、③組換え遺伝子微生物利用食品の安全性評価の実施に関するガイドラインを作成することで合意しています。今月から来月あたりには、部会での決定がコーデックス委員会の総会で承認される方向です。

 ガイドラインの中でEUが主張しているのが『トレーサビリティ』の考えかたです。これが義務化されれば、食の安全というよりも消費者としては食品に対する安心感が増します。なぜなら選ぶ段階で自分自身の眼でしっかりと良品を選別することが出来るからです。しかし、ここでもアメリカとEUは対立したそうです。アメリカは『トレーサビリティ』自身の必要性を認めないからです。

 仮に日本でトレーサビリティを実施すると、ますます輸入食品との価格差が開いてしまう恐れがあります。なぜなら、価格にその経費分が跳ねかえってくるからです。そのために、日本政府としてはトレーサビリティの義務化に踏み切ることは難しいのが現実です。発展途上国でも同様の悩みを抱えているそうです。

 私たちの食卓で考えてみると、納豆を購入する時でも「遺伝子組換えでない」を選んでも、タレやカラシはどうでしょうか?もしかするとタレの原料の醤油には遺伝子組換え大豆が使用されているかもしれません・・・・という風に、どんどんと原材料をたどっていくのがトレーサビリティです。もし、今、私がトレーサビリティを意識したら、スーパーでの食品購入は躊躇してしまし、外食なんて出来ないでしょう。

 けれどもBSE問題や食品の偽装表示など、最近の食卓の不安を解消するためにはトレーサビリティの精神を生かす必要があると考えています。食品の表示をもっと進める必要はありそうです。そのことによって消費者の意識が高まりを期待したいからです。

 遺伝子組換え食品の動向ですが、昨年、愛知県の試験場で商品化されようとした遺伝子組換えイネ「祭り晴」を阻止したものの、まだまだ続々と研究が続いています。岩手では耐冷性イネのササニシキ、北海道では「きたあけ」(イネ)、茨城では飼料米「日本晴」、企業でも糖尿病の人でもいくらでも食べても大丈夫な米を開発しているそうです。
 もちろん私たちが遺伝子組換えをした食品を食べることの危険性がありますが、それ以上に生態系を人間技術によって操作することをどう考えるのか、倫理観がおおきく問われているように思います。

 いづれにしても消費者の不買運動ほど効果絶大なものはないでしょう。生活クラブ生協では「予防原則」のもと‘疑わしきは使わない’をモットーに安全な食卓づくりをしてきましたが、やはり、一人ひとりが食品の安全と自分の健康、地球環境のことへと関心をつなげていくことで、遺伝子組換え食品の開発を無意味化する道が広がるのだと思います。時間はかかっても一番の早道かもしれません。

 この食の安全安心問題を自治体政策にできないかと考えるわけですが、都市農業もほとんど衰退ぎみの多摩市だけで考えると少し無理がありそうです。ただ、今よりも厳格な食材の安全基準を設け、「安心安全な給食」を実現することは可能です。まずは、子どもの健康づくり面からになりそうです。

投稿者 hisaka : 2003年06月03日

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