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2003年05月25日

走れば走るほど赤字

  NPO法人ハンディキャブゆづり葉の総会に出席しました。高齢者や障害者の移送のお手伝いをしています。総会終了後に利用者から直接話しを聞く懇談会もあり、とてもいい会合だったなと思います。
 移送サービスをめぐっては介護保険のサービスにいれるのかいれないのかとの問題がありました。ちょうど今年は介護保険の見直しの年だったので昨年一年ほどの間、多摩市でも検討がなされました。国の示す介護メニューの中に移送サービスが入れば、市も動きやすくなるのでしょうが、なかなか市単独で移送サービスをメニューに加えるのは財政的にも厳しいと試算しています。
 国の方では厚生労働省と国土交通省との争いです。厚生労働省ではもちろんメニューの中に移送サービスを入れたい方向、でも運輸局がなかなかうなづいてくれないのです。いわゆる「白タク」と関わってくるわけですが、民間事業者(おもにはタクシー会社とか)との調整の面で難しいのです。介護保険制度が始まり、タクシー会社も乗務員がヘルパーの免許を取得したり、大きめの車をそろえるなどの対応をしています。けれども今まで、市民グループがハンディキャブのサービスを地域で担ってきた歴史はとても長いのです。確かに一種の「白タク」には違いないかもしれないけれど、地域でのサービス需要があること、そして供給主体が見当たらないために国の役人も目をつぶってきたのが事実です。
 
 さて、多摩市でも行政が提供する移送サービスがありましたが、その時には必ず利用者が介助人を探す必要もあるのが一つの大きなハードルでした。ゆづり葉のサービスではその心配がないので気軽に利用できます。利用者の話しを聞いてみると、何となくプライヴァシーの問題があり、行き先について秘密にしておきたい場合もあるから、そんな時にはNPOなどのサービスを利用する方が気持ちが楽で安心だと言います。どんなに遅い時間まで残業をしていても、約束の時間に迎えに来てくれたことが、ものすごくうれしかったという話しを聞くと、ゆづり葉が利用者に対して喜ばれるサービスを提供していることを感じました。
 それより何より、ハンディキャブに出会ったことが世界を広げます。都心でのライブがあっても、コンサート会場までちゃんと迎えに来てくれるのが、これまでのようにタクシーを利用しなければならず、どんな乗務員になるかわからないという不安もかき消してくれます。一人で出かけることが出来るのは家族の負担も軽くします。「人に頼んだら申し訳ないな」とか「迷惑かけてしまうな」と思うこともありません。人(家族)に合わせなくて、自分の意思で動けるわけです。ハンディキャブサービスがいかに欠かせないかわかります。
 バリアフリーが進み、電車に乗ったりバスに乗ることも以前と比べれば、車イスの人にとって利用しやすく改善されて来たと言いますが、それでも一人で利用することには不安があるのが実態です。そう言えば昔は駅にもエレベーター、エスカレーターもなく駅員さんたちが数人がかりで車イスなど持ち上げていた光景に出会ったことがあります。これは当事者はとても恐いそうです。今、インターネットで調べれば駅がどんな具合なのか・・という情報もあり、出かけやすくなったとは言え、実際に現場に行かないとわからないこともまだまだ多いという話しを聞く事ができました。

 こんなに重宝されているゆづり葉の移送サービスですが、「走れば走るほどに赤字」です。これまでは10キロ300円でしたが、今年から10キロ500円にしました。利用者にとっては高くなったという感がありますが、それでも赤字が25万円ほど出るという試算をしています。利用者も増えて、順調そうに見え、そして今年からは市の移送サービスも受託していますが、サービスを提供すればするほど苦しい資金繰りを迫られると言うのは、まさにNPOの実態そのものです。それでもやめるわけにはいきません。もう少し利益が出るように事業展開を考えたいのはやまやまですが、まだ時間がかかりそうです。

 「ハンディキャブ」のことを知らない人がまだまだ多いから、もっと効果的に宣伝をしたいなと思っています。利用することでのメリットを知らせれば利用者も増えるはずだとの意見が懇談会でも出されました。利用者のみならずハンディキャブサービスの役割を理解した多くの人が賛助会員になることもサービスの安定供給につながります。考えようによっては、一回の宴会をパスすればいいんだなと思えば、このサービスがもっと地域に根ざすことができるわけです。ハンディキャブサービスのみならず、NPO活動を支えるのは市民だなと改めて感じました。

投稿者 hisaka : 2003年05月25日

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