« 多摩市のバランスシート | メイン | イマドキの小学校の授業見学 »

2003年05月23日

もっと住みよい住環境に~「団地再生」の考え方

 ミニコミ誌に「団地再生」の話しが掲載されていました。日本では団地老朽化を迎えて、住棟の建替えることがあるけれど、ヨーロッパではよほどのことがない限り、20年から30年での建替えはなく、団地を長持ちさせながら使っていくことを考えるそうです。そのかわりに大規模修繕の時に、かなり思いきった改造、改善を加えて素晴らしい住環境を手に入れていると書いてありました。このように建替えに頼らない、団地の環境改善の手法を「団地再生」と呼びます。
 そこではスウェーデンのストックホルムの団地再生のことが紹介されていましたが、団地再生プロジェクトをリードした建築家は「住宅だけ手をつけても良好な住環境はできない」とし、自治体の住宅経営健全化も同時に提案、地域社会で全体で住宅が余り始めている中では団地の住戸数を減らして、生活の質を高めるための機能を付け加え住環境をより良くするリニューアルをしました。もともと1000戸ほどの規模の団地の300戸(もともと空家になっていた)は取り壊し、その跡地は共用スペースとして利用するように変え、住戸も様々なタイプの家族が住めるような住宅に変更(壁の取り扱いや内外装の改善を施す)しました。そのことで健全なコミュニティが生まれたといいます。
 さらには団地は同じような家並みが続くわけですが、外観にも手を加えて今までの面白味のなさを克服させ、冷たい画一的な団地環境を古い町や集落のような人間的な環境に作り変えたそうです。
 このヨーロッパの例は、団地リニューアルという点では事情がとてもよく似ています。でも、コミュニティの在り方が少し日本とは違うのかなという感じがしました。新たに設置した共同利用施設ですが、もともとヨーロッパの団地には共用室が珍しいわけでなく、この場合には更に共同洗濯場を設置して居住者が洗濯をしながらコミュニケーションも図れてしまうと効果まで生み出すことに成功しているのです。
 「共同体」という意識がニュータウンではなかなか醸成されにくく、そこを何とかしないと・・・・と動いているのが現状の多摩ニュータウンではないかと思います。先日のニュータウン学会でも「コミュニティ再生」・・・というよりは「コミュニティづくり」術に重点が置かれていました。コミュニティを創れば、団地の老朽化も何とか乗り越えることが出来るだろうとニュータウン建築をしてきた専門家の方は話していました。その話しと団地再生の話しは、まさに重なり合ったのですが、まずは「みんなで住んでいる」という意識を高め、コミュニティというつながりを創り出しながら、団地再生も並行しなければならないのが多摩ニュータウンで、状況の厳しさはヨーロッパにも増すように感じます。
 いづれにしても、ニュータウンをいいかたちで再生させながら、‘まち’を元気にしていきたいことは確かです。人口減少と住宅供給とのバランスとを調整しながら新しい方針をいち早くうちたてて行かねばなりません。聞くところによると、東京都の都市再生に多摩地区はかなり打撃を受けています。オフィスビルの過剰供給にも見られるように企業は多摩から便利な都心へと足が向いている傾向です。そして都心での住宅にも手が届くようになりました。多摩市にも大規模な住宅建設の予定が動いていたようですが、それも凍結になってしまったみたいです。
 昨日、都心で働いている友人に会いましたが、多摩市の空気がおいしいと言っていました。やっぱり都心に優る‘まち’の魅力は空気と緑だと思うわけです。そこを活かすためにどんなことができるのか?ベッドタウンとして造られた‘まち’だからこそ、「住んでよかった」の付加価値をもっと高めていきたいというのが私の考えです。

投稿者 hisaka : 2003年05月23日

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
/357