« どうして自治基本条例が必要なの? | メイン | 脱!見ざる・聞かざる・言わざる »

2002年12月19日

ワーカーズコレクティブという働き方

 いわゆるワーコレは新しい働き方です。みんなで出資して、みんなで働いて、みんなで運営をします。一種のコミュニティ・ビジネスとは言うものの、ビジネスとは全くかけ離れた実態です。ワーコレはまだまだ認知度も低く、カツカツの状況の中で運営されています。ワーコレに関わるのはほとんど40代以上の女性です。そういう意味では新しい働き方が子育てにひと段落をした女性たちの力によって創られ、模索されているともいえます。
 ワーコレの第一号は20年前にスタートしています。そもそもワーコレというのは自分たちが欲しいものを自分たちで創りだすために、出資も管理もしてしまうといういわば自治の精神から出発しています。これは協同組合の精神なのです。日本には協同組合といえば農協を始め、法律のより認可されていますが、ワーコレについては法律が存在していません。ワーコレをいち早く社会の一員として認知されるためには、やはり法律により裏づけで法人格を備える必要があります。
 ワーコレは家事や介護、育児などのサービスから、食事(弁当)づくり、配送サービス、喫茶店、パン屋さん、体操指導、企画製作などの分野で活躍しています。特に保育サービスの需要や移動サービスへの需要が今後増えることが予想されています。多摩市内でも有名なのはワーカーズコレクティブ風(桜ヶ丘オーパ7階の喫茶経営)があります。ここで働きたい人はみんな一律20万円の出資金を出します。そして共に働くのです。特にワーカーズコレクティブ風はともに働くことをテーマにしているので障がいを持っている人と対等に働ける場所づくりが最大の目標になっています。実際に風では喫茶のほかにも簡単な事務作業請負いや、チラシのポスティング作業なども行なっています。時給もみんな550円くらいで働いているそうです。
 風の実態を見てもそうですが、ワーコレの働き方は儲け主義ではありません。地域社会づくり、地域の居場所づくりに大きく貢献しています。働いている人たちももちろんビジネスライクな面を持ちつつも、掲げた理念の実現に努力を惜しみません。みんなが等しく責任を負っているのです。そこには障がいの有無は存在しません。
 ワーコレはみんなで話し合いをしながら進めていくのが運営方法において外せないことです。これはなかなか大変で、もちろんメンバー同士のぶつかり合いもあり、話し合いの決着をつけるまでの時間もかかります。けれども話し合いによる合意形成がなければ、それは普通の企業や事業所と同じです。代表はいるけれども社長ではありません。メンバー一人ひとりが社長さんの立場にあるとも言えます。みんなが職場に対して自分自身の思いを実現するための意見をぶつけます。これがワーコレなのです。雇われない働きかたです。
 私はワーコレについて大方理解していたつもりでしたが、まだまだ社会的な存在基盤が弱く、まずは法整備が必要だと感じました。そしてワーコレのあり方はまさに自治の実践の場所です。自らが創り出すためには自らも出資しなくてはならない・・・自分たち自身で自分たちの雇用を創出するわけです。そしてそのことが自分自身のやりがいや生き甲斐となり、生み出した仕事そのものがコミュニティに根ざした活動で、地域貢献という充足感をもたらします。その意味では素敵な働きかただと思います。けれども実態は本当に厳しく、採算取るのも大変で、経営は決して楽ではありません。でもコミュニティ関連のベンチャービジネスはほとんど生き残れない中でワーコレの持続性というのはかなり優秀だそうです。でも課題は、せっかくコミュニティの活動としていい雇用の場を創出していたとしても担う人が高齢化していると、やはりここでも世代交替を上手に進めることをです。今は、どこでも言われることですが、若い人を上手く参加して一緒に活動をすすめていかなければ、ワーコレも衰退をしてしまうのです。もちろん新しいワーコレが誕生することでの若返りも考えられますが。とはいえ、ワーコレの置かれている現状などを考えるとまだまだ若い人が積極的に関われるような場所にはなっていません。賃金の問題でも社会保障の面を考えてみても、労働環境として整備をしなくてはならない部分がたくさんあります。
 ワーコレの理念である協同の精神はまさに自治から始まります。これからの時代の働き方として選択肢の一つに入ってくると思います。けれども選択肢の一つに入れた時に、それを魅力のある場所にするためにはまだまだ多くの条件整備をしなくてはなりません。ワーカーズコレクティブ法を制定して、法人格を認め、なかなか増えない行政からの委託業務の請負をしやすくするのも一つです。そして、それ以上に重要なのは地域でワーコレの存在を知ってもらい、ワーカーズコレクティブという働きかたの支援者、賛同者、共感してくれる人が増えることだと思いました。

投稿者 hisaka : 2002年12月19日

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
/209