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2002年11月07日

老人施設見学・街並み見学

 午前中は稲田堤(川崎市多摩区)のベネッセくららの見学、午後は国分寺の街並み検証をしました。こんなに寒い日の見学会は、本当に億劫ですが、そんな甘っちょろいことを言ってはなりませぬ・・・・と言い聞かせながら出かけました。特に午後は散策をしながらなので、お天気が良ければ最高なのですが、期待外れの寂しさ漂う灰色の空には全く気持ちがのりません。
 さて、私は老人施設の見学は初めてです。ただ昨日、映画「ホーム・スイートホーム」にも痴呆症の老人を抱えた家族が施設を探し歩く場面があったのですが、家族が安心して「預けたい」「預けられる」施設に出会うことの困難さを感じていました。特にお金の面は問題です。
 今日は川崎市多摩区にあるベネッセホームくらら稲田堤を見学しました。ここはベネッセグループの高齢者介護事業を専門に行う㈱ベネッセケアが運営しているところです。
 もともと大手企業の男子独身寮だった建物を高齢者施設用にリニューアルしています。ベネッセケアは介護保険制度施行と同時にスタートした会社ですが、有料老人ホームは全国で20ヵ所、グループホーム2ヵ所、ベネッセ介護支援センターは15ヵ所もあります。高齢化社会をにらんだ事業展開で、当初はグループホームを中心にする方針だったそうですが、グループホームは採算を取るのが大変だということもあり、有料の老人ホームの設置に力を入れるようになったそうです。そしてちょうどバブル崩壊で企業が独身寮を手放すようになったので、それを有効活用する形で事業をスタートしました。
 ところが、これが後々にはやはり不便をきたしているようで、訪問した稲田堤の施設では、使い勝手などを考えた修繕改修工事をわりと頻繁に行ってきて、かなり設備投資をしているとの話でした。新築するよりも経費節減できるメリットの一方でロスも多いようです。場所についてですが、稲田堤の場合にはオーナーがあるようで賃貸しているそうです。
 ホームではスタッフは9名体制です。日中は7名、夜間は1、2階で各1名ずつです。入居者は平均年齢女性が85歳、男性84歳です。男性は6名だけで女性の入居が多いとのことです。入居者は介護度によって3グループに分かれています。グループ毎には自分たちで勝手に行き来することはできません。階段は使用不可で、エレベーターを使用しますが、これは暗証番号が必要で、必ずスタッフ付です。厨房は外注で「くらら」の栄養士と連携をとりながらメニュー調整をしているそうです。
 とにもかくにも限られたスタッフの中で様々な企画を立てていくことが辛いといいます。人件費がもちろん莫大です。正社員は4名、契約社員10名、あとは非常勤のスタッフで総勢22名です。経営状態については非公開でしたが、「こういう事業は赤字は覚悟。これからだんだんと黒字にしていくしかない。」という施設長さんの話でした。館内を見学しましたが、ケアはものすごく行き届いているようで、心地よさそうに思いました。部屋は広めで、ベッド、棚、洗面台、トイレ(もちろんバリアフリー構造)です。食事はみんなでランチルームに集まりますが、これも介護度でわかれた3グループが基本です。
 面白いのは部屋の名前です。病室ではない、生活感を大切にしたいということで「かえで町113」「つつじ町207」「ふよう町220」のように表札風です。この番地の下に個人名があります。
 そしてさらには利用者の家族に対しては、毎月一度状況報告をするレターを送付しているそうです。頻繁に訪問しにくる家族もいれば、全く施設に預けっぱなしという場合もあります。施設のほうからは「会いに来てください」という風には言えないので、せめて状況を最低限は知っておいてもらいたいと記録を送ります。
 また、立地条件がよく、稲田堤の土地柄は昔ながらの地域のつながりが残っているそうです。地域からもボランティアが加わってくれたり、自治会の催しに参加させてもらったりしながら、施設と地域住民との交流を深めています。施設としては少しでも地域に還元できるものを生み出したいとして、今年は夏祭りに施設でみんなで作ったクッキーを10円で販売したそうです。
 しかしながら入居者の負担は重いです。「くらら」ではスタッフが利用者2人にたいして1名つきます。これが費用の上乗せ分になります。「くらら」稲田堤の場合は自己負担額は月額約32万円から37万円(介護度による)です。入居保証金は1,000,000円です。素晴らしい施設を見たところでこの金額・・・納得がいくような、でも厳しい現実を見せつけられたようで心苦しいというか・・・。お金のある人はいいのだけれど。 
 でも「くらら」は当初グループホームを目指していたこともあり、老人ホームとは言え、雰囲気はとてもアットホームでした。一緒に見学に行った仲間も「いいなあ」と洩らすほどでした。それにしても介護とはとてもお金がかかることです。本当に深刻だと思いました。ここのホームに入居できるのは幸せなことだとも感じました。とは言え、やはり自宅で「死ぬまで元気!」を目指すのが一番です。介護予防策を地域で実現することしかないんだという思いも一段と強くしました。

 そんな気持ちをあっさり切換えて、午後は街並み探検。都市計画ってなんだろう?を約3時間ほど散策をしながら考えてきました。国分寺は遺跡がたくさんあります。歴史の街並み、湧水保全と開発の関係、今、行政、市民、事業者の3者での協議会が発足したそうです。これからのまちづくりを考える上で、この取組みは非常に注目されるところです。
 住民エゴだけでは説得力がありません。そこを理解して、自分たちの要望や要求をどれだけ他の人たちにも共有化していくのか?これが大切なことです。国分寺市の動きは多摩にとっても参考になりそうです。
 「おなかいっぱい、消化不良」・・・これが今日の感想です。 

投稿者 hisaka : 2002年11月07日

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