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2002年10月03日

行政視察1日目・・・大阪府豊中市

 建設環境常任委員会での視察です。「建設」と「環境」に関わる事例を学び、そのことを多摩市に生かすためを目的としています。でも、なかなかピッタリの事例を見つけること自体が大変なことです。有意義な視察をするためには、多摩市と出来る限り似たような境遇を持つような自治体を選ぶ方がいいな・・・と思っています。もちろん先進事例を見に行くこともいいですが、「まちづくり」とはそこに住んでいる人が基本だと考えているので、ただ単に他市へ視察へ行くということだけの有効性には疑問です。

 豊中市はニュータウンのリニューアル、つまり団地建替えの事例を見に行きました。ニュータウン事業の先駆けでもある千里ニュータウンの一部を抱えているのが豊中市です。多摩市と大きく違うのは多摩市は市域の約70%ほどがニュータウン地域ですが、豊中市域のなかでニュータウン区域は一部です。しかしながら、多摩ニュータウンよりも10年先輩の‘まち’の状況は深刻でした。つまりは団地の老朽化と住人の高齢化、過疎化問題は多摩ニュータウンと同様深刻でした。
 建替えに成功した事例とは5階建て5棟の150戸をリニューアルし地上14階地下1階の263戸としたものです。1985年より建替えの検討委員会が発足し、バブル崩壊を経て一時棚上げ状態となり計画がストップしていましたが、再度住民意向を確認しなおし、1997年に建替えについて150世帯の基本合意を成功させ、ようやく工事が始まりました。150戸のうち15戸は建替え事業からは撤退したそうですが、残りの世帯に仮住居のための費用などの自己負担も了解し、工事を実現することが出来ました。新しい住まいについては以前の団地はすべて3LKの1タイプのみでしたが、様々な世代が入居できるような2LDKから4LDKのタイプまであり、面積もそれぞれです。旧住居と変わらない条件のタイプに換える時には等価交換で、少し条件が良くなる場合には上乗せ分を自己負担したそうです。
 この工事はコンペ方式を採用し事業者を決定しました。その事業者に対して住民が一旦すべての権利移譲をし、住宅が完成した後、もう一度所有権を移転するという方式をとっています。もともと大阪府の住宅供給公社の開発した団地だったので建替えパートナーとして府に依頼したそうですが断られました。結果、民間事業者になったといういきさつがあります。それにしてもとても立派な高級マンションに変身していて、その周辺にあった老朽化した団地がこの場所にも立地していたとはとても思えないほどです。オートロック式で中庭やテニスコート、3段式の駐車場、マンション屋上(ここは眺望がとてもいいらしいけれど、時間がなくて見れなかった)などとても素敵なマンションで、団地の面影はどこにもありませんでした。
 市はこの建替えについては「豊中市大規模団地建替助成」制度を2ヵ年適用しました。1年間で助成限度が750万円です。事業者はリクルートコスモスでしたが、国などからの補助金が5億円ほどあったそうです。マンションになり団地時代よりも管理費が相当に値上がりしていると思いますが、住人(建替えに力を注いだ管理組合の中心人物)は満足しているように見受けられました。
 老朽化した団地は丸ごと建替えないまでも、維持補修、大規模修繕を行うにも莫大な費用がかかります。その時に思いきってどちらの選択をするのかが問われます。どちらにせよお金はかかるわけで、当然に住民たちが負担をしなくてはならないからです。多摩市の諏訪、永山そして百草団地を思い浮かべながら、「どんな選択をすることがいいのか?すべきなのか?」を考えました。でもやはり、最終的には住民自身の決断です。個人の所有権が絡んでくる問題でそう簡単な結論は出ません。でも結論を延ばしに延ばすことも出来ません。時が解決する問題なく、時が経てば経つほどに住民の高齢化がますます進み、個々の資産力面でも気力面でもどれだけの力を維持していけるのかを考えると決して明るいとは言えません。
 同時に分譲住宅ではなく賃貸住宅については更に深刻です。公団は住宅建設をしないとすれば、老朽化の進んでいる賃貸住宅はどうなるのでしょうか?もちろん都営団地もです。千里ニュータウンには公営賃貸住宅が多く、分譲団地の建替え以上に行き詰まっているといいます。
 この‘まち’は一体どうなっていくのだろう?諏訪や永山だけの問題ではありません。今後次々と同じ問題を抱える地区が増えてくるわけです。住宅をどんどんと建設しなくてはならなかった時代には考える余裕がなさすぎた・・・そのことを責めるだけでは解決にはなりません。でも「無責任」という言葉がぴったりな気がします。私の母は学生時代に「千里ニュータウン10年目の現状と課題」として、当時に既にニュータウンの未来を見据えていた研究者とともに調査活動をしたと言います。その頃に今のことを予測していた人がいたのです。
 さて、話は変わりますが、シャッター通りの商店街の一角に「街角ひろば」という市民が運営しているスペースがありました。すべて自主運営で近所に住んでいる主婦たちが人件費なしで地域の交流ひろばとしてオープンしている場所でした。100円で飲み物を提供しています。人件費がないから何とかやっていけているということで、「補助金をもらうならやらないほうがまし。」ときっぱり断言する代表を中心に、高齢者の居場所、世代交流の場を創りあげていました。ランドセルをしょった小学生数人がぞろぞろと「氷ちょうだーい!」と寄り道をしていました。小さな犬を連れたおばあさんたち3人が会話を楽しんでいました。なんと毎日来るそうです。「だって缶ジュースは100円で買えないし、会話は生まれないでしょう。でもここは100円だし人とも会えるし楽しいもの。日曜日は閉まっているからつまらないのよ。」ちょうど開店1年目でしたが、当初の立ち上げに180万の助成を受けたのみであとはトントン経営でやっているそうです。
 とっても有意義な視察でした。議員だけではなく多摩市の職員にも見てもらいたいと思いました。多摩市では職員の視察研修を今は経費削減の波の中でやめてしまったとのことです。これは非常に残念です。やはり見ることが必要だと思います。特に私は豊中市の事例については職員や、団地の管理組合の人たちとともに参考にしながら考える題材として有効だと感じました。

投稿者 hisaka : 2002年10月03日

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