ないからつくる。「寺子屋」。

多様性を受け入れるということはどういうことなのかなあと考えさせられます。今日は山梨県のとある場所にある「寺子屋」におじゃましてきました。

義務教育…決して、学校に行かせたくないわけではなく、子どもたちも学校には行かなければならないと思っている…。でも、どうしても足が向かない場合もある。馴染めないこともある。そしてまた、今の学校教育の在り方に疑問を感じているご家庭もあり、教育者の中にも現状に葛藤がある方々もいらっしゃる。

いろんな想いが合わさり、集まってできた場所でした。「たまたま、借りることのできた民家があった。」「ご縁があって、農家さんにも協力を得ることができた」…自給自足の暮らしを考えるというのは本物の「自立」かもしれませんね…そこから学び実践を積み重ねることからはじめるというか、もう一度、暮らしを見つめ直し、やり直しながら、自分自身の在り方と向き合う学校なのかなあと思いましたが、週に1回は本格的な畑の授業があるそう。小学生、中学生と年齢はバラバラですが、学習進度はそれぞれで、自分自身にあった勉強をしていくスタイル・・・もちろん、文部科学省の指導要領は無視せずに、一人ひとりの学習が計画されているようでした。

でも、内容はユニーク。今日は見学者がいるということで、「自己紹介」の練習。一人15秒で自分自身の自己紹介をしてみましょう…と言う内容。これは国語の授業。「よむ、かく、きく、はなす」…これが国語の授業の目的であって、今日の国語の時間では「はなす」を学ぶということになります。12人の子どもたちが2つのグループに分かれて、それぞれお互いの自己紹介を聴き合って、最後に感想を発表しあう。先生が「見学者の方が来るときには、『自己紹介』を必ずすることになるので」というのが締めくくり。子どもたちは15秒がとても長い時間であること、でも、いろいろ話そうと思うと短い!とも体感した様子。

あいにくの雨だったので、お庭で遊ぶ様子は見れなかったのですが、アスレチック遊具。大工さんの手仕事だということ…でも、もともとこの一軒家のオーナーさんが設置していたものであって、寺子屋のために造ったわけではないそう…そこにも驚き。

休み時間。子どもたちは、クワガタ対決をしていました。生きているクワガタとレプリカのクワガタ…みんなで囲んで「わあわあ」している姿。何だか新鮮でした。たぶん、普通の小学校だったら「生きているクワガタ」しかいなくって、こうして学校でみんなで机を囲んで…なんてことはないだろうなあ。

自主保育的にやっている学童クラブのような雰囲気もあり。縁側のところにランドセルが並んでいる風景が懐かしい。決して、散らかっているわけではなく。

「何だろう…この雰囲気」と思います。別室には卓球台があり…。中学生と小学生が一緒に卓球をやる姿を見ていると…児童館を思い出したりして。もちろん、ゲームはありません。「家ではゲームはやるけれど」と子どもたちは話していましたが、学校には持ってこない。チャイムはないけれど、時間になると子どもたちはちゃんと集まってきて、授業が始まる。「自由だけれど、自由奔放で、気まま」というわけではないのです。空手や将棋の授業が大事にしなければならないマナーを自然と身に着けさせるのかもしれません。

子どもたちの抱える課題、学校の在り方に対する疑問点などなど…既存の学校でいろいろとやり取りをしていくエネルギー…最終的に「ないなら、つくるほうが早い」と思って、やり始めて、つくってしまったそうです。場所があって、先生も揃えられる見込みとなって、そして口コミだけで子どもたちが集まってきたとのこと。「なるほど」と思いました。

多様性を受け入れられる場所。学校に足が向かない子どもも増えている現状。文部科学省もようやくそうした現状に目を向けながら、対応策を検討しているようですが。結局、文部科学省、教育委員会と言う枠組みは変わらずに、新しいタイプの通える場所をつくるとどうなるんだろう?と考えさせられます。すぐに答えは出ませんが。ネーミングセンスには疑問ですが、多摩市でも学校に足が向かない子どもたちのための「不登校特例校」の設置が模索されているのですが、一旦、設置計画が見送りとなってから、今、どうなっているんだろう?フォローしないと。

いずれにせよ、「寺子屋」のような場所を維持するためには資金が必要。タダではできません。運営している側には「経営」が求められる。要するに、「寺子屋」に魅力を感じたとしても、親の経済力、その有無…関わってくるなあと。多様性を受け止められる、受け入れられる社会にするためには、学校の多様化も今まで以上に認められる必要があって、そしてまた、誰もに開かれていることが求められるだけの話かもしれません。義務教育、学校、社会の在りようなど、いろいろ考えさせられた一日でもありました。

古民家を改装したお店をご案内いただきました。こだわりのランチ。予約制です。もし、山梨方面に行くことがあれば、また行きたい場所。「キッチン オハナ」…おすすめ。