「真の子どもの政策とは」

タイトルがとても仰々しい印象もありますが…「地方自治からみる真の子どもの政策とは」を考えるために議員の学校に参加。子どもの権利条約総合研究所の平野裕二さんのお話しを伺うことが目的、世田谷区の「せたホッと子どもサポート」についての事例報告を伺うことが目的、そして、「多摩市子ども・若者の権利を保障し支援と活躍を推進する条例」について担当課長よりこれまでの取組み実践としてどんな内容が報告されるのかしら?…とても楽しみな研修会でした。

期待を裏切らず、平野さんからは「子どもの権利条約」の内容を踏まえた、「子ども基本法」制定に対する評価、今後の課題が示され、思った通り「子どもオンブズパーソン、コミッショナーの設置」が必要との指摘がありました。これは議論の過程でいつしか削除されてしまったものなのですが、「子どもの権利」が守られているかどうかを客観的立場から見守り、時には意見をする機関の設置ってとても大切。

 

これについては、多摩市の条例も同様。「子ども・若者の権利を保障し支援と活躍を推進する条例」(長いな)の制定過程でも2回ほど説明を受けてきましたが、そこで私も真っ先に指摘したことなんですね。「権利侵害」があった時に「救済してほしい」と申し出るところはどこですか?‥‥と。結果的には多摩市の条例でも「今後の課題点」として認識くらいはされていたと思いますが、専門的な見地から第三者的に助言を与えてくれるというのか、監視役をしてくれるような機関の設置は見送られました。ただ、4月の阿部市長の選挙の時には公約として「子どもオンブズパーソン」が並んでいたので、向こう4年間の間には何らかの形で設置されるのではないか…と(何らかの形…というのがすごく怪しいんですけれど)。

研修会で発表をした担当課長は個人的な意見なのかもしれませんが、「せたホッと子どもサポート」の取組みに感銘を受けておられたようで、「ぜひ、学ばせていただきたい」とコメントを述べておられましたので、期待したいと思います。まあ、それなりに伴う予算が必要であって、そうなると問われるのは首長の強い意思ってところですかね。ちなみに、世田谷区では早い時期に「子ども条例」が制定されていましたが、子どもの権利救済のための「せたホッと子どもサポート」の設置については、こうした問題への意識が高い現在の保坂区長が就任して以後のことであって、条例改正して盛り込まれたもの…ここちょっと気にしておきたい。

 

私は多摩市の条例と言うのは「子ども・若者の権利」として一体化したのは全国初で、特徴的だと強調されますが、「だから、わかりにくい」と思っていて、「子ども」だけに絞り込めば、「子どもの権利条約」を意識すれば18歳未満とすればいいですし、日本でも民法改正になりましたので18歳未満…と条例のカバーする対象年齢を絞ることができ、対応しやすい感じがするのですね。ところが、「子ども・若者の権利」となっているところで、若者までが対象で、その年齢はおおむね30歳代となっているところにやりにくさがあるのでは?と思っていますが。

 

「18歳未満」で区切るのはどうなのか…という意見もあるにはありますし、個々の成長のスピードなどもある…ということから、多摩市のようにカバーできる対象年齢を幅広くすることが望ましいと考える立場もあると思います。ただ、できるだけ曖昧さを取り除いておく方が、どう考えても、本来はわかりやすい。行政側に立ってみれば対応しやすい。「18歳未満のところは法律でカバーできるのだから」法律でカバーしてもらい、法律でカバーできないようなところを条例で補っていく…だから、「おおむね30歳代というのはなかなか見識ある考え方だ」とするご意見もあるのかもしれませんが。もし、そうならば、「18歳未満」への対応についてもっともっと国には力を入れてもらわないといけないですね。

 

「せたホッと子どもサポート」については以前、少しだけ調べたことがありましたが、今日の実践報告では、その時によりも活動が活発化しているような印象もあって、「人権擁護」をするための第三者存在はとても重要だと、改めて認識させられました。ちなみに、世田谷区の場合には条例15条に「子どもの人権擁護委員」は区長だけでなく、教育委員会の付属機関として設置されているのがポイント。

子どもの人権を擁護し、子どもの権利の侵害をすみやかに取り除くことを目的として、区長と教育委員会の附属機関として世田谷区子どもの人権擁護委員(以下「擁護委員」といいます。)を設置します。

なるほど、条例上にも工夫が必要なのね…と思いました。いずれにせよ、多摩市はまだこれから「条例を育てていく」というスタンスで、まずは「周知することから」という段階。担当課長のプレゼンはとてもわかりやすく、好評だったようです。さすが、全国各地から地方議員が参加しているだけあって、課長の説明の中にあった「条例制定の過程で議会での勉強会を行った」という点に興味を示された方が多かった模様。「勉強会とはどういう内容ですか?」と詳細つっこんで知りたいという質問が出されましたが、課長の回答はさておき、「勉強会と言うより、進捗状況の報告と説明でしょ…」と思いながら聞いておりました。「勉強会」というとなんだか大層なことが行われている印象ですがそうではないというか。でも、全議員研修で坪井節子さんのお話しを聴いたことはありましたが。

 

私は「せたホッと」のように子どもの人権を守る立場で活躍してくれる機関の設置は必須だと確信できたので‥‥今日一番の収穫。課長も一緒に話しを聴いていたので、ちゃんと持ち帰って、多摩市での議論に活かしてもらいたいですね。活動報告書からも少しはわかることもありますが、やはり、直接話を聴くと、もっとリアル。ものすごく具体的に解決がなされていくという点で…頼りになりそう。そういえば、子どもが相談できる場所と言えば…教育相談…教育センターみたいなところも存在していると思いますが、世田谷区では「せたホッと」の活動状況との兼ね合い等、どうなっているのかしら。これは私のもう一つの関心事項。

さて、「真の子どもの政策とは」…と言う点については、今日一日の研修を通して学んだことを踏まえ、明日、参加者同士でグループディスカッションをする予定になっているのですが、結局大切なことは「誰のための『子どもの政策なのか』」という視点で、改めて捉えなおして見えてくることを確認してみる…と言う点ですね。「子どもの権利条約」への理解をもっと深める必要があることを指摘してくださった講師の平野さんが指摘されていたように「子どもたちって、運動会を本当に楽しんでいるのか?」…とかっていう視点が重要なんですよね。明日の議論も楽しみです。