全国初「はしうち教室」に行ってきました。


昨年4月に調布市で開設された「はしうち教室」の見学をさせていただきました。一般質問で「不登校対策」を取り上げるので、どうしても議会が始まる前に見ておきたいと無理無理をお願いして、対応していただきました。5月までは新学期が始まったばかりで落ち着かないということで視察の受入れはしていなかったようです。市教委も学校側も何かと忙しいわけなので、できればご遠慮いただきたいという感じだったのかも…とちょっぴり感じたわけですが、少しのj間でも対応していただけたことに感謝しています。

「はしうち教室」というのは、不登校特例校として開設された学び舎。調布市が全国で初めて、調布第7中学校として設置されています。しかし、「学校ではない場所」に設置する条件になっているらしく、第7中学校からも程よい距離にある大町スポーツ施設の一角にありました。とても静かで落ち着いた佇まいのある住宅街が子どもたちの居場所になっていました。ちょうど、私が伺った時間は子どもたちが下校するころでしたが、入り口ではとても明るく挨拶をしてくれる子どもたちばかり。本当は授業の様子なども見れるとよいなあと考えていましたが、繊細な子どもたちが多いということもあり、そこは今回はナシ…としたのですが、子どもたちにすれ違うことができ、ラッキーでした。

今日の視察の目的は、「どんな場所に不登校特例校があり」「どんな勉強スタイルになっているのか」そしてまた、「設置するまでにどんな経緯があったのか」を知るということでしたので、そこは十分に目的は達せられたと思います。不登校特例校にすると、東京都から正規職員(先生)が配置されることになり、そのことが一番のメリットと話をされていました。

確かに、多摩市でも学校とは疎遠になった子どもたちが通うことのできる「適応指導教室ゆうかり教室」がありますが、ここを指導している先生は、一度、ご引退されたというのか、定年退職を迎えられた方ばかりで、言ってみれば第2の就職をされた方が中心、そこにプラスしてフォローするピアティチャーなどが入っている感じ。ですので、正規の先生がしっかりと子どもたちの学習面をサポートできる点はプラスになるでしょうね。

クラスは学年別と言うのではなく、みなで一緒に学ぶ形ですが、でも教室は2つありました。特徴は子どもたちが向かい合って席に座ること。そしてまた、席は決まっているのではなく、毎日くじ引きで決まるのだそう。また、教育課程についてはいわゆる文科省の定めによるところの授業時間数の80%以上あれば良いと伺っていましたが、105時間程度少なくなっており、授業科目についても「表現科」やコミュニケーションスキルを高めるためのソーシャルスキルトレーニングなども取り入れており、工夫がされているようでした。個別学習の時間ももともと時間割の中に入っています。ちなみに、「表現科」を充実するために、東京都から配置される4名の正規職員のうち1名は「美術」の先生だと伺いました。

さて、調布市が「はしうち教室」を設置することとなった経過…やはりここが大事ですよね。全国で初めての取組みになるわけですから、それ相当の理由があったのではないか?と考えていました。想像通りのことでして、「はしうち教室」はその前身が調布第七中学校に合った「相談学級」だったと言います。相談学級と言うのは通級指導を行う学級であり、そしてまた、調布市には適応指導教室が存在しない…ということも伺いました。相談学級は昭和61年から設置されていたそうですから…って、1986年ですから、すごく歴史がありますね。ちょっとだけしか説明を伺うことができませんでしたが、不登校気味の子どもたちが通う場所として、地域でも定着する学級として存在し、認知されていたように感じました。

要するに、相談学級をバージョンアップさせての「はしうち教室」であって、新しい取組みであり全国で初めての取組みとは言え、不登校特例校としてスタートさせるために文科省や東京都との協議はかなりハードだったようですが、しかし、下地は十分に持っていたというわけですね。「調布市だから取組めた!」って正直、それが私の感想です。特に開設するまでのプロセスについての話し…サラッと聞いているだけではわからない苦労があったに違いないと思われます。しかし、関係者への説明など非常に丁寧に重ねられていることがわかりました。

 

ところで、「はしうち教室」…「はしうち」というのは、説明に寄れば「卵から雛がかえるときに、雛が殻の内側をつきやぶろうとする状況に、親鳥が外側から援護して殻を壊す行為」を表す言葉なのですが、子どもたちで決めた名称だと伺いました。もともと設置されていた相談学級で作成していた文集のタイトルが「はしうち」という名前だったので、子どもたちにとっては難しいものではなく、親しんで使うことのできる名前だと。個人的には…一番最初に文集のタイトルを「はしうち」と考えた人物に会いたくなりました。

パソコンのできるお部屋もありました。保健室がないのがちょっと心配…ということ。また災害時などの危機管理のことも少し課題があると伺いました。なぜなら、学校の管理職は日常的に「はしうち教室」にいるわけではないので。ただ、校長先生は「はしうち教室」にも気を配りながら、日々の学校運営をしている様子。子どもたちと一緒に課外学習というのか高尾山にも登ったようです。子どもたちうれしかっただろうなあって思いました。

校長先生です。今年の4月から異動されてきたばかりとのことです。でも、すごく前向きというか、お話しをしていて楽しく親しみのもてる先生でした。時間を経てから、もう一度お話しを聴きに来ようと思いました。

「はしうち教室」は各学年と言うか、中学生が対象になっていて、1年生から3年生まで各学年定員は15名です。でも、15名いっぱいいっぱいになることはなく、4月の始まりは余裕をもってスタートをしていると伺いました。これは多摩市の適応指導教室も同様ですね。学期が進むにつれて、転校する子どもたちが増えていくとの話です。ただし、中学校3年生については進路指導があるため3年生の1学期で転学受付は終わると伺いました。不登校の状況にある子どもですので、家から外出し、「はしうち教室」に登校するというのもとってもハードルが高いこと。まずは4週間ほど体験期間があり、その様子を見ながら、教室に入れるかどうかについても市教委含めて判定をするとのこと。ニーズが増えているようですが、先にも書いた通り定員もありますし、「はしうち教室」を不登校になってしまわぬよう、子どもたちの心の状態も見極めていくそうです。

まだ、昨年度開設されてから、第1期の卒業生を送り出したばかり。まだまだ取組みとしてはこれからこれから・・・という段階であることも垣間見えたような気がします。ただ、やっぱり不登校の問題については心を痛めている方がたくさんおられますし、調布市でも「はしうち教室」にも通えない子どもたちへの対応のことも課題と話しておられました。ただ、私が感じるのは…「はしうち教室」の存在により、不登校にある子どもたちへの対応について、長い目で取組んでいくことの必要、あるいは「学校に復活、復帰させること」を目的とした不登校の指導をしないことが何となく共有化されているかなと。そんな気がしました。これから多摩市でも不登校対策に取り組むときの大事な視点だと考えています。

しかし、やっぱり全国初めての取組み!着実に発展してほしいですし応援したいなと思います。注目されているだけに…。鹿児島などからも問い合わせがあると聞きました。不登校の子どもをお持ちのご家庭にとっては、こうした場所があるのなら…という気持ちにもなりますし、他地域からでも通えるのならば…とも思いますよね。残念ながら、今のところはもちろん調布市民が対象。

これが入口です。とても短時間のヒアリングとなりましたが、やっぱり現地に足を運ぶことは大切だと思った次第です。いただいた資料など、もう一度読み込んでおこうと思います。調布市教委の皆さんと、調布第七中学校の校長先生に心から感謝しています。ありがとうございました!